「なんで、いつも黒い服ばっかきてんの?」
「はあ?」
それは、ほんの些細な、何気ないことだった。
特別意識した訳でもなく、他愛もない話の延長線上。
悪意も意図もなく吐き出された言葉に、顔をしかめる。
それは、あまりにも不快そうで、不機嫌そうで。
「だってさ、黒ばっかじゃん」
だから、ますます気になった。
どうでもいいことが一瞬で興味に変わる。
ソファに預けていた体をひょいっと起こして更に問い詰める。
「制服が黒だからだろお?」
「違うって、だって私服も黒じゃん」
「黒が好きなんだよ」
「ほんとにー?」
「今日はやけに絡むな……」
「だってさ、スクアーロのくせにいつも黒ばっかだし、服もきっちり着てるだろ?
気になるじゃん」
「そりゃどういう意味だ」
「まんまだよ、うしし」
そう笑ってやると、ため息。
スクアーロのくせに何ため息ついてるの?、と聞いてやると変な顔をした。
「白とかも似合いそうじゃん」
何気ない、それこそ一瞬後には忘れてしまいそうな言葉。
それに、何よりも反応した。
びくりと、怯えるように。
それでいて、何か、懐かしむように。
一瞬だけ、笑う。
自嘲の笑みのようだった。
「じゃあ、教えてやるよ」
「ん?」
「こいつはなあ、たった一人の男に捧げた――」
喪服だあ。
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