男は、手袋の上からその手に口付けた。
 目の前には長い銀髪。
 さらりさらりと流れる髪の指を伸ばせば簡単に捕まった。
 その髪を引けば、先にいる相手は痛いと睨み付ける。
 それを無視して、男はそのまま髪のを引く。
 かなり強い力で引いているのだろう、相手は顔を歪めた。
 抜けるだろうという声を何度も声をあげるがそれすらも無視される。
 当然痛みを和らげる為に相手は男の近くまで顔を引き寄せた。
 男の瞳の銀の瞳が合わさった瞬間、男は告げる。

「俺のモノになれ」

 相手は、一瞬、目を見開いた。
 ぽかんっとまったく予想外だと言うように。
 男を見ていた。
 じっと、銀の瞳が、見つめる。
 その先には、真剣な瞳。
 本気かと、口にすれば。
 どう見えると返される。
 冗談でもなんでもないことを、その瞳が語る。
 ため息。

「わかってんのかあ?」

 相手は軽く、左手を離せと振るった。
 そして、左手を離したのを見るとそっと交わる視線の先にぶらりっとたれ下げさせてみせた。
 皮手袋に阻まれて見えない手。
 その皮手袋をゆっくりと剥いていく。
 見えたのは、白い肌ではない、鋼色。
 するりとそのまま皮手袋を外せば、そこには手はない。
 ただ、冷たい鋼の機械があるだけ。
 男は、じっと、食い入るようにその手を見ていた。
 笑う。

「残念ながら、俺の旦那は独占欲が強くてよお」



































 もう、他の男の婚約指輪をはめる指はねえんだ。




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