ありえない過去捏造




「ねー、二代目ー」
「なんだ」
「仕事サボっていい?」
「寝言は死んでから言え、カス」
「ボスに向かってカスはないよ、カスはー」
「うるせえ、お前がサボりまくるせいで仕事は山のようにあるんだ、とっとと働け」
「……二代目、新しい技の実験に付き合ってくれない? 付き合ってくれたらさー、ちょっとはマジメにがんばるから」
「……ちょっとだけだぞ」
「よし、じゃあ、二代目、炎出して」
「こうか?」(炎噴出)
「そうそう」(構え)
「どんな技なんだ」
「こんな技」

[死ぬ気の零地点突破]

「ドカスウウウウ!! てめえ凍ったじゃねえかどうしてくれんだ!!」
「二代目、実はね」(机の下からトランクケース持ち出す)
「おい、ちょっと待て、なんだその荷物は」
「俺、ボスやめようと思ってんだ」
「いや、待て、なんで窓を開けやがるドカス」
「アッディーオ二代目、アッディーオ、後は任せた」
「待て!! 待ちやがれ!!」
「指輪はお前の守護者に渡してあるから、氷は溶かしてもらって、アッディーオ、ボンゴレも部下も、仕事もお前のものだ、アッディーオ、二代目」
「待てっつってんだろ!! てめえぶっ殺す!! 呪い殺す!!」
「アッディーオー」

(不真面目に死ぬ気の零地点突破を)


 青年の目の前で、炎が地面と電柱を焼いた。
 アスファルトが溶ける匂いと、電柱がひしゃげていく音をバックに、その少女は目にもとまらぬスピードで動き、その拳に宿った炎を、黒服に叩き込む。
 悲鳴と共に、いくら炎をまとっていたとはいえ、少女の細腕だというのに、男がありえない勢いで吹っ飛ばされた。
 それを見ていた別の黒服が慌てて駆け寄る。
 青年は、少女の背に庇われながら、美しいと思った。
 燃え盛る炎が、それを纏う少女が、そして、炎以上の熱さを秘めたその瞳が。 そう、この炎を知っていた。
 強く優しい、炎。
 しかし、青年の知りうる炎は、もっと、そう、もっと、これに比べれば小さく弱い。
 ごうっと、炎が空気を飲み込みながら咆哮をあげた。
 黒服たちが、焦った声で撤退を告げる。
 少女はそれを黙って見逃した。
 いや、黙ってはいなかった、ひどく、ひどく悲しげな目で呟いたのだ。

「早く、病院連れて行ってあげてね?」

 そう呟いた瞬間に、彼女のまとっていた炎は消え去り、そこにはただの小さな、華奢な少女だけがいた。
 青年を背に庇えるような、そんな逞しさも、強さも感じない、むしろ、たおやかな愛らしさを持っている。
 だが、青年は見抜いた。
 その瞳だけは、その瞳だけは先ほどと変わらぬ熱さを、強さを持っていることを。
 少女は青年に振り向くと、まるで花のような笑顔を浮かべ聞く。

「大丈夫?」

 怯えも恐れも疑いもない、純粋な笑み。
 何か言おうとした男は毒気が抜け、ただ頷いた。
 それを少女は本当に、まるでわがことのように喜びながら、少しだけ腰を折って手を差し出した。

「私、奈々、よろしくね?」

 そこで、青年はやっと、自分が道路に座り込んでいることに気づいた。



「だって、あそこで助けないと、死んでも後悔すると思ったの」

(奈々ママン最強説プッシュ!)


 俺の目の前で、初代様が泣いていた。
 すごい泣き方だ。恥も外聞もないとはまさにこのこと、大声をあげてしゃくりあげて零れた涙をかろうじで拭ってはいるが止まらない。
 というか、この人いくつなんだろう。俺と同い年か、少し年上に見えるけど、うちは結構童顔の家系(例えば母さんとか)だから、もしかしたらもっと年上なのかもしれない。
 よく考えればボンゴレの創始者なのだ。この外見で途方もない年齢かもしれない。化け物か。
 最初会ったときは萎縮してしまったが、今はぶっちゃけ萎縮とかなんとか通り越して呆れる。
 だって、威厳も尊厳もへったくれもない。ランボと同じだ。
 でも、なぜかランボみたいに慰める気も起きずにぼうっと見ている。
 ふと、初代様が俺を見上げた。
 そして、心底、心底安堵した顔で呟く。

「俺そっくりの怖くない顔でよかったあ……」

 はい?

「もっもう、2代目からさ。皆怖い、怖いよ。しかめっつらだし、ほんとに怖い顔してるし。あいつらマフィアかよ」

 マフィアだよ。しかもボスだよ。あんたも。

「あんな怖い顔と始終顔合わせてみ? もう、夜も眠れないしご飯も喉を通らないし胃に穴空きそうだよ!!」

 いや、あんた死んでるのに夜寝たり、ご飯食べたり、胃があったりするんですか。

「ああ、よかった!! 俺、安心したら涙止まらなくてさ!! あっそういえば前に指輪したやつ? 2代目そっくりで超怖かったよな!! あいつがならなくてよかったー!!」

 ……この場にあの人がいたら、初代様は殺されてそうな言葉を呟く。
 だけど、あの人がいないので、代わりにちょっと色々むかついたので、殴ってやろうかと思った。
 ぎゅっと拳を握った瞬間、がつんっとなぜか俺が殴られる。

「え、いや、だって、殴られる前に殴らなきゃ痛いだろ?」

 しまった、初代様は俺と同じ超直感の持ち主だった。

(過去であり、現在)




 未来のドン・ボンゴレのご無体

「好きな子ほどいじめるっていうけどさ、骸」

 火が、火が、火が舞う。
 燃えるものが何も無いというのに溢れる火は不自然ながら、ちやちりと肌を焼く。
 熱い。
 そう思っても、声はでなかった。
 喉が、圧迫されているからだ。

「あれ、嘘だよな」

 炎に照らされた顔が笑う。
 白い、弱弱しい少年の顔。
 彼は彼にふさわしい小さな手で、喉を圧迫し、息を止める。

「お前が憎いよ、骸、いじめてやりたいくらい」

 その手には、炎が絡みつき、彼の肌を傷一つつけず喉を焼く。
 ただ、それを見ていることしかできなかった。


 違うんです、誤解なんです。
 そう言って、血まみれで倒れている男を見下ろした。

「この人は何も悪いことなんかしていんです。俺がこの人に恨みがあるとかじゃなくて、他の誰かがこの人に恨みがあるわけじゃなくて、この人には殺されるだけの理由があるわけじゃなくて、そんな、おおよそ人を殺傷しうる理由なんて、一つもなかったんです。
 俺の方も特別人なんか殺す理由があった訳じゃないです。
 だって俺だって昨日まで人を殺すことなんて夢にも見たことがなく、むしろこの人を殺す前まで自分が殺されるということすら頭にありませんでした」

 だから、誤解なんです、違うんです。
 そう言っていつもの笑みで、少年は

「そう、だってこいつまだ死んでませんから、誤解なんです、ほら、骸、早く起きないと俺が誤解される」

(途中で意味がわからなくなった)


 綱吉が常々思うことは、本当に人が人を大事にするのは難しいということだ。
 それこそ、数年前ならば思いもしないことは、こうして大人になってしまえば実感する。
 ずるりとその黒髪をひっつかんで持ち上げてその横っ面を殴り飛ばした。

「むくろ、なんで俺に逆らうかな?」

 できるだけ、できるだけ優しく聞いたつもりだった。
 殴っておいて優しく話しかけるなんて滑稽だけど、一応。
 いつまでも答えないので、もう一発。

「ねえ、お前のせいで獄寺くんが傷ついたんだ」

 平手を左右に。

「山本も、ね」

 許さないよっとそのきれいな顔を徹底的にへこませた。

「ねえ、かまってほしいならもっとマシなことしてよ」

 そう言えば、歪んだ顔が笑った気がして、もう一発殴った。

(躾けられない)


「クフフフフ、綱吉くん、一周年ですよ!!」
「正確には1日過ぎね」
「なにを言ってるんですか、管理人は今日フリー小説をアップしたんですよ?
 今日がそうじゃなければなぜフリー小説を?」
「管理人いじめるのやめてやれよ。間に合わなかったんだから」
「クハハハハ!! まさか、まさか本館がリボなのに別ジャンルにうつつを抜かして遅れるわけないじゃないですか、綱吉くん、常識を考えてください」
「…………眠かったんだよ」

(色々すいません)




 なんだったか覚えていない

 どうせ死ぬならば。
 貴方の唇で窒息死希望。

(なんだっけ?)


 さて、ゲームをしよう。
 簡単なゲームだ、殺し合うか、それとも愛し合うか。
 それだけのシンプルなゲーム。
 され、君の賭け金を教えておくれ。
 唇かそれともナイフか。

(恐らく上の類似)


 痛いと貴方がつぶやけば。
 いつでも私は世界を滅ぼしたのです。

(でも、最後まで言わなかったね)


 痛いかと聞けば痛くないといった。
 それは強がりでもなんでもなく、本当に痛くないのだ。
 そう、だって、この男はこんな傷よりももっと痛い思いをしたことがあるのだから。

(過去の傷が、一番痛い)




 CPになりきれなかった

「わお、君がそんな顔するなんてね」
「…………」
「珍しいものを見たけど、全然得した気分になれないよ」
「……」
「何も言えないの? いつもみたいにバカみらいに笑わないの?
 そんなものだよ、結局人を殺すなんて、簡単で、たいしたこともない」
「俺は」
「ああ、言い訳なんていらないよ。
 結局、僕と君は同じ生き物だからね。
 この道を選んだ時点で、君が銃ではなく得物にソレを選んだときから。で、どうだった、人の直接殺す感触」
「………っ」
「ほんとに、いつまでそんな顔してるの?
 そんな顔してるとあの子が心配するよ。あの子は君にかなりご執心のようだからね。
 僕のせいにされてとばっちりはごめんだよ」
「雲雀」
「なに? いつまでそこに立ってるつもり。僕は早くハヤトのところ、帰りたいんだけど、もしも余韻に浸ってるなら置いてくよ、」



「笹川」



「ああ、今、行く」

(山りょになりきれなかった)


 おかしいよな。
 十代目の優しいお言葉より。
 野球野郎の馴れ馴れしい声より。
 姉の年上ぶった態度よりも。

 なんでか、こいつに殴られて、妙に優しく抱きしめられるときが一番落ち着いて、一番嬉しいだなんて、俺はいつの間にこんなに壊れてしまったのだろう。
 それとも、最初から壊れていたのだろうか。

(ヒバ獄に見えたらよかったのに)




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