骸vsザンザスな話。
一言で言えば、なんだこりゃな話。
※現在二本(恐らく増えない)
子どももマフィアも一緒
なぜか、これでもかというほど沢田綱吉の霧の守護者と遠縁の男はとても仲が悪かった。
隙あれば霧の守護者は皮肉や嫌味を言って遠縁の親戚を超春するし、遠縁の親戚はといえば、隙があろうがなかろうが不快に思った瞬間、霧の守護者に殴りかかっていた。
恐らく、うまがあわないのだろう。
二人を見ていればそんなこと超直感がなくてもわかる。
ただ、霧の守護者と遠縁の親戚が喧嘩になるくらいはよかった。
そんなの日常茶飯事だ。
しかし、この、数多の比喩ではない地獄と比喩である地獄を見てきた二人は、喧嘩をあっという間に殺し合いに発展する。
殺し合いはいけない。
沢田綱吉はそれが敵同士であったとしても好まない。
だから、殺し合いに発展した瞬間、怒鳴るのだ。
「何度も言ってるけど、お前ら俺に負けたから俺のモノなんだよ!!
いいか、俺のモノだったらまず勝手に死ぬな! 次に簡単に殺すな! そして、生き延びろ!!
これが守れないならぶっ飛ばす!!」
そう言われた二人はぴたりと動きを止めて気まずそうに目をそらす。
子どもや動物と一緒で、二人は強い者に従う。
その二人に今はどうかはわからないが過去に勝った沢田綱吉に逆らえない。
でも、沢田綱吉は少しだけ最近知ったことがある。
二人は、俺に怒鳴られて嬉しいということだ。
一度も叱られたことのない、関心も何ももたれなかった孤独な子どもは、叱ってもらえるのが、気にしてもらえるのが、かまってもらえるのが嬉しいのだ。
沢田綱吉はため息をついて「もう喧嘩しないでくださいね?」という。
二人は決して返事はしない。
常々、沢田綱吉は思っていた。
マフィアのボスって、保育士みたいだ。
(ツナザン、ツナ骸っぽい
けど、違うと信じたい)
来世で首を洗って待っていろ。
「ゆっゆるしませんからね、ゆるしませんからねXUNXAS。
僕は現世で一番さわだつなよしが大嫌いで許せませんが、XUNXAS、貴方も許せません。
覚えててくださいね。いえ、忘れても結構。忘れさった頃に、眼にもの見せてやりますから!!
クフフ、そんなに睨んでも、許しませんよ。
僕を怒らせたこと、後悔させてやります。いいですか、今すぐ謝ったって許しません。
苦渋を舐めさせてやるっぶっ!」
そんな呪詛を呟く青年に、男は拳を振り上げた。
とにかくむかつくその顔に拳を叩き込めば、遠くてドン・ボンゴレの声がする。
「壊さないでくださいね」
(壊さなければ何してもいいです)
その言葉の裏まできっちり読み取って、男は青年を蹴り飛ばした。
ボールのように吹っ飛んだ体は宙を舞い、血を飛び散らせて落ちていく。
「ああ、呪ってやる」
吐き出された言葉と同時に、紅蓮の輝きをまとった炎が噴出した。
「お前をさ、親に紹介したいんだ」
白い指に黒の指輪を光らせた女が長い髪の中で呟いた。
表情はうかがい知れないが、その銀の髪の間から、真っ赤になった耳が見える。
それを見ながら、男は目の前のすっかり中身のなくなったグラスを一度持ち上げ、下ろした。
表情には出ていないが、動揺しているらしい。
その反応を見ず、ただただ俯く女は、その美しい銀の髪に反した口調で言葉続ける。
「いや、お前がいいならいいんだぜえ……別にさ、ちょっと、ちょっと紹介するだけだしよ。深い意味はないんだけどよお……。
ほら、一応な。俺ら、あの、別に付き合ってる訳じゃねえけど、一緒に暮らしてるしな。
指輪もよ、もらっただろ? あっこれ高いんだってな。ちょっと分かる奴に聞いただけだあ。うん、別に値段がどうとかじゃなくて――」
答えない男に、女は口を閉じた。
相変わらず、視線は合いはしない。
沈黙が二人の間に流れた。
男は何も言わず、女は怖いのか、顔をあげようともしない。
女の前におかれたグラスの氷がどろどろ溶ける。
「っ」
きっかけは、男の手が、机に意味もなくおかれた女の手に重なったときだった。
女はがばっと顔をあげ、その髪と同じ色の瞳で男を見る。
男は、静かに、静かに、それでも世界の全てをこめたような声で呟いた。
「なら、俺の親父にも会いに来い」
女は、泣きそうな顔で何度もうなづいた。
重なり合った手が、ぎゅうっと結ばれる。
グラスの氷は、完全に消えていた。
男が車から降りると、女は携帯を切る。
視線で男が問いかければ、女は笑って答えた。
「んなに嫉妬すんな。妹だあ。
親父と一緒に紹介するけどよ、かわいいぜえ」
別に嫉妬なんてしていないと睨みつければ、女は男の隣でしゃべる。
妹の名前や、年、どれほどかわいいかや最近のこと、一日一回はメールをしないと拗ねることなどをシスコン丸出しで語り始める。
その蕩けるような笑顔に男は微かに機嫌を損ねながら歩く。
目的地に近づくごとに、女は少しづつ静かになった。
最後には、少しだけ恥ずかしそうに俯いてただただ歩く。
そして、目的地の前で顔をあげ、そういえば言い忘れていたという表情で呟いた。
「俺の親父、骸って言うんだ」
「くふふ、よくぞきましたね。さあ、僕は結婚に反対です」
(復讐という名の料理は冷めれば冷めるほどおいしい)
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