遠い蝉の声と、クーラーから響く低い音が聞こえる。
部屋の主である少年は、涼しい空気に浸るようにソファに座っていた。その膝には、うとうとと今にも眠りそうな弟の頭を乗せ、本を読んでいる。
ページをめくる音が続く。
「アイスを食べたいか?」
その、ページをまくる音の延長のような声が弟の耳に響いた。
あまりにも抑揚のない平坦な声だったため、寝ぼけた弟は聞き逃しかける。
だが、気づけば少年の赤い瞳が自分に向いていることに気づき、目を開けた。
少年は、二度問いはしない。
だから、弟はどう答えるか迷っているうちに、頭を持ち上げられた。
「何が食べたい」
「……」
少年はいつも唐突である。
その秀麗な顔は感情というものを全て削いでしまったかのように変わらないため、意図はひどく読み辛いのだ。
とりあえず、見かけによらず甘党である少年が、アイスを食べることは決定したようだった。
特に抵抗する理由がなく、そして理由があったとしても手足もなく、喋るのも苦手な弟にはどうしようもない。
ソファに転がったまま、少し考える。
「なんでも……」
そう答えると、少年は弟の下にしいていた毛布を引きずり出し、弟の上にかける。
クーラーのききすぎた部屋では、ちょうどいい温度になった。
「買ってくる」
くるりと背を向け、少年はそのままスタスタと歩いていく。
その背中を見ていると、また、瞼が下りていく。
心地よい温度が、いつしか弟を眠りに落とした。
「六の弟」
その声で、弟は目を開けた。
目の前には、顔をのぞきこんでくる少年の整った顔。
その手には、コンビニらしい袋が握られている。なぜか、その庶民的な姿は外見と不釣合いで滑稽だった。
「起きるか」
2,3度瞬きして上半身を起した。
それを起きるという合図にとったのだろう、少年は手近な机の上にコンビニの袋を置き、中からいくつかのアイスを取り出す。
バニラ、クッキー、チョコ、ストロベリー、プリン、ティラミス、オーソドックスなものから少し偏ったものまで並べ、順番に差していく。
「どれがいい」
「……では……バニラを」
なんでも、っと言いかけたが、一番目についたバニラを選ぶ。
少年は他のアイスを袋に戻し、小さなスプーンを一つ取り出すと冷凍庫に入れると戻ってきた。
そして、弟の体を、ソファにもたれかかるように移動させると、机の上のアイスを手に取った。蓋を開けると、少し溶けたバニラをスプーンですくう。
「六の弟、口を開けろ」
ぱくっと、ひな鳥のように自然に、弟は口を開く。赤い口内に、白いスプーンとバニラが消えた。
手のない弟は、そうして少年に与えられないと物を食べることすらできない。
スープンを引き抜き、少年はまた、バニラをすくうと、今度は自分の口に運んだ。
当たり前のようにそれを見て、弟は少年がバニラをすくうのを待ち、また口を開く。
交互にアイスを食べるのを繰り返し、そのやりとりは作業のように単調になっていった。
ぽたり。
「ぁ」
少しだけタイミングがズレ、弟の唇からバニラが滑る。
それは、あごで止まることなく首の傷を横断し、褐色の肌に白い線を描きながら、鎖骨のすぐ下、服の襟で止まった。
じわりっと、溶ける冷たさが、弟に身震いを覚えさせる。
だが、拭うことはできない。
いつもならば多少首をすくめれば服にこすりつけることはできるが、たまたま襟の開いた服だったためそれもできなかった。
少年は、それを見つつ、バニラを一すくいし、自分の口にいれる。
「兄上様……」
声に反応して、少年が動く。
バニラを机に置き、服の襟を掴んで引き寄せた。首の後ろに痛みを感じ、バランスをくずしたところで、肌に下の感触を感じる。
さっきまでバニラを食べていたせいか舌は冷たい。
「っ……」
褐色の上、白い線を消すように舌がなぞる。
ぴくっと、冷たい舌とその感触に逃げる体を腰を両手で抑えて引き寄せる。その姿勢と動きは、まるで前戯れのようで、ひくりと感じてしまう。
鎖骨を、首を伝い、唇の端まできれいに舐め取ると、今度は自分の上に倒れるように強く引いた。頭を持ち、膝の上に仰向けになるように置く。
少年と弟の目が合い、すぐにそらされる。そして、またバニラに手を伸ばした。
もしや、食べさせにくいから溶けたアイスを流し込まれるのでは?
弟がそんな予想をたてるが、少年はバニラを自分の口に運び続ける。
(もう、くれないの、かな?)
恐らく、飽きたのか。別にアイスをそれほど食べたかったわけではない弟はそれでもいいかとあきらめた。
だが、その考えは、どちらも半分だけ当っていたと言える。
ぼうっと見ていると、いきなりあごを掴まれ、口をこじあけられた。
見開いた視界の中で、少年が唇を落とす。
冷たい唇の感触。
それは、妙に感情のない少年に合っている気がした。
しかし、次の瞬間、甘いバニラの味が口の中に染みこんでいく。
冷たい舌が注ぐように唇を割り、舌を撫でた。いつまでも口の中にバニラをとどめていくわけにも行かず、弟は答えるように喉と舌を動かして飲み込む。
口の中が冷え、またぬるい温度に戻り、甘さが消えるまで稚拙な口移しは続いた。
最後に、きっちり唇から零れた分まで舐めとり、唇が離れていく。
甘さと息苦しさにボーっとしながら少年がバニラを机の上に置くのを見届けた。
不意に、抱き上げられる。膝の上に座らされ、あごを持ち上げられる。
「あに、う」
言い終わる前に唇が重なり、舌が入ってきた。
少し驚いたが、すぐに受け入れた。
ほんのりと甘い舌は、体温を取り戻して口の中をかき回す。
その間にも、シャツを持ち上げ尻から腰のラインを撫で上げた。跳ねる体を抑え付け、そのまま腕の付け根や肩を撫でる。
服の中でもぞもぞ動く手が気になってしょうがないが、やはりどうしようもない。
アイスはもういいのだろうかとぼんやり考えているうちに、唇が離れ、包帯の上から存在しない右目へと軽い口付けが何度も落とされる。
肩と腰を撫でていた手が、胸へと移った。
くすぐるように指が柔らかく膨らんだ胸を円を描くように撫でる。それだけで、これからくる刺激の予感にに、体が勝手にざわざわと反応した。
アイスで冷えた体温が徐々にあがり、胸の突起が膨らみ、ずり上がったシャツから、勃ちあがったものが覗く。
荒く熱い息を吐けば、少年は顔を首筋に埋め、さっきアイスを拭い去った場所を同じように舐める。特に皮膚の引きつった首の傷跡を執拗に舌でなぞり続ける。
「ぁ、ぅ、ん……ぃっ……!」
下から、寄せるように胸を揉み上げ、痛いほど掴んだかと思うと、ゆるやかに胸と胸の間を指でくすぐる。
その間にも、傷跡を軽く噛み、反応をうかがうように吸った。
「っ、ぃぁ……ぁぁ……」
弟の瞳が潤み、もどかしい感覚に背筋をそらす、ひくつく喉を唇で感じながら、腰を掴んだまま持ち上げ、ソファに寝転ばせた。
見上げた少年の顔は、やはり無表情で、熱さはそこに存在しない。
包帯の上から、もう一度だけ右目に口付けを落とすと、シャツを一気にまくりあげた。
首元までなんの抵抗もなくずりあがり、子どもらしいが、少しだけふっくらした胸を含めた全身があらわになる。
クーラーの冷気に撫でられ、身震いした。
同時に、ふと、少年が机の上のアイスに手を伸ばす。すっかり溶けて液体となったバニラは、カップの中で静かに揺れた。
「?」
見ているうちに、不意にカップが傾けられた。
重力に従って、液体となったアイスは、とろみを持って落ちていく。
ぴしゃっと、褐色の肌の上、白がぶつかり、広がった。
「ひっ!」
冷たさに、体を暴れさせる。
そうすれば、当然のことながら、更にアイスは広がり、胸や脇、足の間へと流れていく。そのどろどろとした感触が、冷たさが更に思考を混乱させる。
しかし、少年はそれを見ていた。
腕の中、転げ落ちない程度に抑え、見るだけでなにもしない。
冷たさが馴染み、ぬるい温度になり始めた頃、少年は顔を落とす。
まずは、溶けたバニラのたまったヘソの辺りに舌を這わせる。拭い取られる感触が、ついでのように舌の先端がヘソを責め、もどかしさが体を走る。
「ん……あっ……」
舐めても舐めても、少しくぼんだヘソへと、周囲のアイスはとろとろと落ちるため、また溜まる。
ぴりぴりと弱い刺激が続いた。
もどかしいと腰が無意識に揺れる。
そして、ヘソの周りのアイスが無くなった時、舌をつけたまま、ヘソから胸と胸の間まで一気に舐め上げる。
ぞくぞくぞくっと、背筋に痺れが走った。
胸の上に飛び散ったアイスも舐め取られ、膨らんだ突起を転がされる。ぴくっと少し強い刺激に声に甘さが混じるが、すぐに舌は胸の下や、脇、腹部へと降りていく。
上半身のアイスがなくなった時、弟は目尻に涙を溜め、少年を見ていた。
その瞳には、熱と、かすかな期待が混じっている。
足の間にもべったりとついたアイスが気持ち悪い。しかし、それ以上に弱い刺激しか与えられなかった下肢は疼いていた。
もじもじと体を揺らすものの、中々手も舌もこない。
変わりに、一番上、唇に口付けられる。
甘い味がまた口に広がった。唾液まで甘いのかと勘違いするような甘さに浸る。
そうして、唇が離れたとき、やっと欲しい場所に手が伸びた。
ぬるりと、勃ちあがったソコを掴む。
アイスだらけの手は滑りがよく、一気に快楽が背筋を走る。
「ふぁ……ぁぁぁぁっ……」
目尻に溜まった涙が零れ、体が強張る。
ソコを弄ばれながら、舌が足の付け根を舐める。
ちろちろと、中心には決して触れず、アイスを拭い取り、短い足の周囲まで吸う。
「はぁ……ん、ふぁあ……っ」
親指で裏筋をいじりながら、アイスをキレイに拭うと、やっと中心に唇を近づける。
勃ちあがっているソコの付け根を舌の先端が舐める。
ひくりっと、入口が濡れた。
中にも、刺激が欲しいと短い足が少しだけ動く。
それに気づいてか、気づかずか、人差し指が入口に触れた。
濡れて熱い場所を指が伝う。
指の動きに合わせて体が跳ねるが、肝心の中にまで入ってはこない。
「はぅ……ぃ……いれ、ない……?」
問えば、指が入口に浅く侵入した。
「ん、はぁ……」
浅い、ざらりとした場所を何度もこすり、同時に前をこすられれば、快楽が強く湧き上がる。
けれど、足りない、もっと、奥に欲しい。
内臓がぎゅっと締まる。
「お、くは……?」
少し、考えるような顔をして、少年は指を進めた。
奥へと入るごとに、きゅうきゅうと中は締め付け、熱くなっていく。
「っ、あ、あ、っひゃぁん」
二本目を挿入し、中を広げるように指を曲げる。
先ほどよりも激しい反応で体が跳ねた。
「はぁああぁぁぁ!!」
中で指を曲げ、伸ばし、また曲げる。
そうして今度はバラバラに動かしながらかき混ぜた。
「んあ! いぁ、あぅ!! あ!!」
閉じられない唇から断続的に声が漏れる。
絶頂の予感に、目を強くつぶった。
「ぃっく、あああ!! うんぁあ!! ひっ!!」
しかし、その前に中から指を抜かれる。
「ぇ……?」
戸惑ったのも一瞬のこと、すぐに指よりも太く、硬いものがあてがわれる。
「ひぁんっ」
入口を広げながら、ソレは侵入する。
熱くて熱くてたまらないが、圧迫感が、粘膜同士のこすれる感覚が快楽を生み出し、絶頂を高めていく。
奥へ奥へと突き進むソレに、狭くねっとりと絡みつき、腰が揺れる。
(も、すこしで、いく……)
腰を、強く抑えられた。
そして、すぐに強く中へと突き込まれた。
ずんっと、子宮が叩かれる感覚に、喉が大きく反った。
「ぃっく、あああ!! うんぁあ!! ひっ!!」
どくりっと、腹の上に白い液体が広がる。
アイスのときのようにどろどろと気持ち悪いが、それよりも、中にあるものの方が問題だった。
達したばかりの敏感な内部は、あるというだけでも苦痛に近い感覚を与えてくる。
まだ、動かないでほしい。
そう思うのに、腰を持ったまま、少年は軽く揺さぶった。
「ふぁああ!! ぁ、ま、ぁ……まっぇ……」
しかし、言葉を聞かず、腰が引かれる。
「っあぁぁぁぁ……!!」
中を荒らされる中、ふと、汗をかいていることに気づく。
このまま冷えたら風邪をひくだろう。
そう思いながら、次の絶頂を感じた。
「どれを食べる」
さすがにそのままでいるわけでもなく、風呂に言った後、少年はそういった。
机の上には、バニラ以外のアイスがまた並べられている。
弟は、少し考えた。
正直、別に食べたくは無い。
しているうちに夜も更けてしまったので、体を冷やすのは困る。さて、どうしたものか。
悩んでいると、少年は適当にクッキーをとり、後のアイスを冷凍庫に片付けた。
スプーンで一すくいし、口に運ぶ。
そして、もう一すくいし、弟に差し出しかけて、やめた。
変わりに自分の口にいれて飲み込むと、すっと、唇を重ねる。
甘く、冷たい唇。ただし、クッキーの分、少し苦い。
「バニラとどっちがいい?」
珍しい問いに、少し考える。
「クッキー……?」
冷凍庫が空になった頃、クッキーのカップが補充された。
アイスだけに、少し甘めにしてみました!!(全然上手くねえよ)
口移しや、アイスプレイはロマンです、ロマン。
ちょっとブラコン優しめに三男をカスタマイズすると、とてつもなくエセくさくなります。
やっぱり、もっと自分勝手俺様な三男に次から戻しておきますね!!
でも、六男の世話をしてるのは三男なんですよ! まあ、兄たちの真似なんですが。ああ、優しいと思ったら、それは全部兄の真似です。
なんだか、やっと甘党らしさを出せた気がしました。
時期外れなのはすみません、溶けたアイスが重要だったんです。
ああ、ついに三作目。
隔離しないと。