「俺は」
王は震えながら盗賊の足に縋りつく。
小さく華奢な体をなんとなマントで隠して体裁を整えた愛らしい王。
その瞳に写るのは、月を背後にした盗賊だけだ。
「俺は、お前が好きなのに」
静かな夜に、王の声だけが響く。
盗賊は何も言わない。
ただ、そこに座って笑っていた。
「俺はこんなにも、お前が好きなのに、なんで」
そこで、言葉を切る。
王は、自分で自分の体を抱きしめる。
その仕草は、決して過信の前では見せない幼いもの。
いつだって、王はこの盗賊の前では王ではなかった。ただの、幼い少年だった。
だから、いつだって、縋って言葉を待つしかない。
静かな、静かな夜だった。
世界に二人しかいない錯覚を催させるほど、静かな。
だからこそ、声はよく届く。
「ばかだな、王様は」
ぽつりっと、盗賊は呟く。
そして、そのごつごつとした男の手で、王の輪郭に触れる。優しいというよりも、無理矢理上を向かせるような、荒々しい手つき。
だが、王は盗賊に触れられることこそ、至上というようなうっとりした表情を浮かべた。
それを見下ろして、盗賊はいっそう笑みを深くする。
輪郭を辿る指が、首へと降りた。
王の体が、びくりと跳ねる。
どくどくと血の流れる動脈に盗賊の手が触れた。盗賊の大きな手にかかれば、微かに力をこめただけで折れてしまいそうな細い首。
その首を、手ですっぽりと包むと、指に力が入る。
王は抵抗しない。ただ、盗賊を見ていた。
恐らく、そのまま絞め殺されても、王は抵抗しなかっただろう。
だが、盗賊は不意に手の力を緩めた。
まるで、獲物を弄ぶように喉笛を何度も撫でると、いきなり肩を乱暴に掴み引き寄せる。
盗賊のぎらぎらした瞳が目の前に来たとき、王は目を閉じた。まるで、食べられることを受け入れた小動物のように。
くすくすと、盗賊は笑って王の首に口付ける。
「ばかだな、王様は」
繰り返される、嘲笑交じりの言葉。
獣の笑みで、喉を舐め上げる。
ひくりとした反応を舌に感じ、楽しげに声を漏らした。
そうして、自分の手の内に転がり込んだ獲物をいたぶる為に愛を嘯く。
「おれさまも、あいしてるにきまってるだろ?」
うっとりと、王もまた、微笑んだ。
(うそつき)
口の端から、そんな言葉はなんとか零れなかった。
ヒギイイイイイイイイイイイ。
書いててなんか気持ち悪くなってきたああああああああ。
せめて、凝れなかったお礼にと書いたバク王気味の何かがぐぬおおおおおおおおお!!
読むのは平気だけど、書くのは拒絶反応でるわああああああああ!!
誰か、誰か助けて!!(楽にしてほしい的な意味で)