宿主様とバクラが二心二体です。
 あと、宿主様が優しくもかわいくもありません。バクラの立場が大変弱いです。
 それでも大丈夫な方だけどうぞ。












 最近、ずいぶんと肌寒くなってきた。
 毛布をもう一枚出すにはちょっと暑いし、かといって深夜にもぐりこむふとん
は冷たいし、朝方はふとんから思わず出たくなくなるくらい寒い。
 厚着してふとんに入ればっと思うけれど、それはそれで結構寝苦しかったりし
て不便だ。
 そんなとき、ふと見たテレビで、ふとんに猫をいれるというのを見た。
 猫、動物は体温があったかいからさぞ気持ちいいだろう。
 あっそういえばうちに似たようなのが一匹いるじゃないか。
 あれがふとんに入っていれば、冷たいふとんを味合わなくてすむし、朝もふと
んから出たくなかったら、先に起こして部屋をあっためてもらえばいい。すごい
、名案だ。



「というわけで、おいで、バクラ」

 ぱんぱんっと、彼がふとんをたたくと、そんな彼にそっくりな少年はその表情
を引きつらせる。
 意味がわからない。そんな思いを隠しもしない少年は、なぜっと問う。
 それを、少年は当然という顔で答えた。

「だから、これから僕はお風呂に入って体をあっためてくるから、僕が湯ざめし
ないようにふとんを温めておいて」
「宿主様、俺様、豊臣秀吉じゃねーし」
「そんなよくわからないボケしなくてもいいから」

 某有名なエピソードを口にする少年に、彼はもう一度ふとんをたたく。

「猿だって猫だってふとんを温められるんだ。お前だってできるだろ?」
「うわー、俺様、猿はともかく猫と同列?」
「そんなもんでしょ?
 あっそれともうさぎなの、白いしうさみみあるし」
「うさみみじゃねえ!!」

 実は気にしていたのだろう、頭にぴょこんっと立ったくせ毛を抑えて怒鳴る。
 しかし、少年は気にした風もなく、自分の意見を強引に進めた。

「ほら、入ってて待ってて」

 しばらく少年は考え、この頑固な彼がこうまで意見を主張するとなると、曲げ
たり訂正することはない。それをよーく、手の痛みとともに知っていた。
 溜息とともに、少年はうなだれる。
 諦めのしぐさに、彼はにっこりと満足そうに笑って立ち上がった。

「じゃあ、よろしく」

 そんな言葉一つで横を通り、部屋を出た。
 それと入れ替わるように、少年はベッドの前にたつ。
 何の変哲もないベッド。
 ふとんをめくって、体をすべりこませる。


「ひゃあ」


 夜の冷気で、布団はよく冷えていた。



「ただいま」

 髪から水分をふきとり、ほこほこと白い頬を少しピンクにした彼は、パジャマ
姿でベッドの前に戻ってきた。
 そして、声をかけただけでは反応しないふとんの盛り上がりを軽くゆるす。
 すると、ふとんの盛り上がりが、もぞっと動いたかと思うと、白い頭が現れた


「ん……」

 とろんっとした目つきに、無防備な表情。
 温かいふとんにくるまれているうちに浅く眠っていたのだろう、目をこする。
(同じ顔とはいえ、ちょっとかわいいなぁ……)
 そして、ぼんやりと彼を見つけると、得心がいったように起き上がる。

「布団、暖めといたぜ」

 少しかすれた声で嫌味のように言い、ふとんを抜け出そうとするところを彼は
捕まえた。
 これ以上なにか用かと不機嫌そうな顔をする少年を、もう一度布団におしこめ
る。

「なっなんだ宿主様?」
「奥に詰めて」

 よくわかっていない少年を、彼はベッドの隅に追いやる。
 そして、さっきまで少年が寝ていた位置に足を潜り込ませた。
 人の体温で暖まった布団は、心地いい。
 思わず笑みを浮かべてふとんを体にかける彼を、少年は頭に疑問符をつけなが
ら見つめるしかなかった。

「ほら、お前も寝て」
「え?」
「寒い空気が入るから、はやく寝て」
「俺様、ソファで……」
「今日は一緒に寝ていいから。朝起こしてね」

 かなり自分勝手な意見だったが、少年は眠気と、また冷たいふとんに独りもぐ
りこむ事実に抵抗する気も奪われ、ふとんにもう一度もぐりこんだ。
 自分が温めたふとんではあったが、今は、彼も温めている。
 他人の体温をこんなに近くに感じたことが滅多にない少年は、居心地が悪いよ
うな、恥ずかしそうなそぶりを一瞬見せた。
 いつもならばそう考えても絶対に表に出さないだろうが、眠いためについ思い
が出る。
 それをしっかりと見ていた彼は、珍しいと同時に、普段とは間逆の印象をかわ
いいと思ってしまった。
 思わず、手を伸ばし、抱きしめる。
 腕の中、驚きと小さな抵抗が起こった。

「暴れないでよ、眠れない」
「いきなりなにしやがる!!」

 困惑した声に、彼は腕の力を強くした。
 強くしたところで、彼の腕力などたかがしれており、少年ならば無理矢理抜け
出すこともできたが、しない。
 戸惑っているのだろうと判断し、彼は目を閉じる。
 自分以外の体温、呼吸、動く感触。
 それは、彼にとっても久しぶりの感覚だった。
 猫をふとんにいれるというのは、こんな感じなのだろうか。

「今は、お前、ねこだから」

 体をぎゅっと密着させ、髪を撫でる。
 ふわふわの手触りが気持ちいい。長毛種ってこんな感じだろうかともふもふし
ながら手がいつの間にか熱い首筋に触れていた。
 ぴくっと、体が震える。
 ほんのり汗をかいているのか、吸い付くような感触。
 そこから、頬を触る。
 ちょっと柔らかい。

「ねえ」

 布団を少しめくると、目があった。
 気まずそうにそらされるのを見ながら、彼も頭から布団をかぶる。
 真っ暗な闇の中、相手の息遣いが聞こえた。
 指で頬を探りながら、彼は目を閉じた。
 より濃い闇の中で、顔を動かす。

「?」

 最初、少年は何をされたかわかっていないようだった。
 なんだか、ゴソゴソしているかと思えば、頬に感触。
 最初は突っつかれたかのかと思ったが、違う。
 指よりももっと柔らかく、少し湿った――そこまで考えて、少年は思わずばっと彼から体を離した。
 隙間から明かりが入り、少年の白い肌が赤く染まっているのがうっすらと見える。
 
「なっ……!」

 思わず頬を抑えて言葉を失う少年に、彼はもう一度手を伸ばす。

「寒いから、隙間あけないで」

 少年の抵抗を抑えてもう一度抱きしめる。
 その胸中で、彼は幾度もつぶやいた。

(さっきのあれは、猫にしたんだ。猫にしたんだ)

 彼の頬も赤くなっていたことを、少年は見れなかった。



 だらだらだらぶらぶなのか。
 とりあえず、添い寝、抱きしめる、バードキスはクリアさせていただきました……。
 こっこんなのでよろしいでしょうか……宿主さまはもっと優しいほうがよかったでしょうか……。
 でも、うちでは転生じゃない場合、宿主さまはちょっとバクラに対して口が悪いです。あと、態度もでかい。
 そして、バクラは立場が弱いです。

 飼ってるぺっとにちゅーしますよね。
 でも、赤面はしませんよね。 
 うん、そこがらぶらぶってことで!!
 短いのに、時間かかって大変失礼しました!! 



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