※女体化した夫婦の子どもの話です。
 捏造でもOKな方だけどうぞ!!
結&終(双子)=社長とエルナの子ども
セツ=ノアとモクバの子ども












































 朝は晴れていたはずの空が、昼頃には崩れ、ついには雨が降り出した。
 天気予報が晴れと伝えていたせいか、傘を忘れたものは多く、雨が降り出した瞬間、学生たちはの中には悲鳴をあげたものも多い。
 そして、そのまま雨は放課後まで降り続いた。

「雨」

 どしゃ降りというほどではないが、一番近いコンビニまで走ってもずぶ濡れになってしまいそうな雨。
 それを、ぼんやりと見つめる影が、学校の玄関に立っていた。
 傘を忘れたのか、薄暗い中、人工的な明かりに照らされた手にも周囲にもカバンだけで傘の姿は見えない。
 しかし、ぼんやりした表情には困ったというところが見えず、むしろ、ただ雨が降っているのを見るのが好きだとでもいうような雰囲気が漂っている。
 その横を傘のあるものは通り過ぎ、ない者は誰かを待つように携帯を覗き込んだり友人たちと話をしながら、男女問わず、ちらちらとそちらを見ていた。
 理由は簡単で、佇む影が、ひどく目を引く、中性的な美少年だったからだ。
 華奢な体に、繊細で美しい顔に涼しげな少しつりあがった目、肌は雨のせいで少し冷えていることもあるが、抜けるように白い。ぼんやりとした表情のせいか多少幼い印象を受けるが、すらりと伸びた背が年相応に見せていた。
 誰もが一目を引く少年は、しばらく動かなかったが、ふと、口を開く。

「終は」
(終は、いない)

 呟いた名は、少年の兄の名であった。
 そっくりの顔を持つが、性格の違う兄。
 セット扱いされるほどいつも一緒で、かなりこの少年を溺愛しているのだが、今日はどこにも姿が見えない。
 それもそのはずで、クラスの違う兄は今日は授業が終わる前に飛び出すようにいなくなってしまっていた。
(「ごめん、結。今日はちーっと遊戯と用があるから、先に帰るぜ。セツと帰ってくれ」)
 言われた言葉を思い出し、微かに少年は無表情を崩した。
 苛立ったように眉根を寄せる。微かな変化ではあったが、少年の微妙な感情の機微がわかる人間には少年が不機嫌だとわかっただろう。
 兄に溺愛されている少年だが、少年もまた、兄が好きなのだ。いつも自分に向いている対象が他に行くと嫉妬を覚える。あえて口には出さないが、できればずっと傍にいてほしい。生まれる前から、ずっと、一緒だったのだから。
 しかし、少年が不機嫌なのはそれだけではなかった。
 雨にそっと、指を伸ばす。
 白い指を冷たい雫が濡らした。

「セツも、いない」

 うつむく。
 次に呟いたのは、兄が一緒に帰れといっていた幼馴染だった。
 兄が生まれる前から一緒であったとすれば、幼馴染は生まれてきた時から一緒だったと言える。
 兄と同じか、それ以上に少年を愛する幼馴染とはすでに幼い頃から恋人同士で、それこそ兄が邪魔をしなければ、邪魔しても四六時中一緒だった。
 だが、実を言うと、こちらもこちらで、兄が帰ってしばらくしてすぐにメールが来ていた。
(「すまん、今日は一緒に帰れない」)
 ただそれだけの短い文面。
 少年は、忙しいのだろうと考えた。こういうことはたまにあることで、忙しいのだとわかっている。けれど、わかっているからといって、納得したりできるわけではない。
 いつもならば兄がいるおかげでそれほど感じないが、今日はいないせいで不満がこみあげていた。
 一人。
 それは、少年にとってあまりないことだった。
 疎外感を感じることはあれど、必ず兄か幼馴染、あるいは両親がいる。
 だからこそ、逆にこうして滅多にない一人という時間は、孤独を感じずにはいられない。
 指を、伸ばした。
 雨に触れる面積が部分がどんどん増えていく。
 いつもならば、ここで過保護すぎる兄や、幼馴染が止めるのだが、今は見るものはいても、止めるものはいない。
 徒歩で帰ろうとすれば、必ず濡れる。
 それ以外の手段も、ないわけではなかったが。

「まあ、いいか」

 軽く、なんの躊躇いもなく、少年は雨の中、歩き出した。
 走るのではなく、ゆったりとした、散歩のような歩調で、髪が濡れるのも服が濡れるのもカバンが濡れることすら厭わずに。
 少年を見ていた数人が驚くが、やはり、声はかけない。かけられない。
 後姿を見送るしかなかった。
 だから、少年は止まらない。
 雨の中、まるで映画の中にいるかのように歩いていく。
 ふわふわとした髪が水を含んで重くなっても、肌を、涙のように雫が伝っても、その表情はどこかぼんやりしたまま変わらない。
 だからこそ、少年には雨が似合っていた。
 ずぶ濡れで、それでも何一つ変わらない姿こそ、しっくりくる。白い肌は更に白く、儚げな雰囲気は更に幻想的に、少年を飾る。
 そこで立ち止まり、空を見上げれば、それこそ、一枚の絵のように美しかっただろう。
 しかし、そこに付けられる題名は、決して明るいものではない。

「……」

 濡れた服とカバンが重いと、少年は思った。
 それでも、歩みは止めない。
 雨足が強くなり、多少、傘をさしてすれ違っていた人影がほとんど見えなくなった。
 一人だった。
 横を見れば、明かりのついた家や、店があるが、少年は入る気はなかった。入ろうとしても、たいがいの店がずぶ濡れでは断っていただろう。
 まるで、世界に一人きりのようだと、少年は思った。
 兄と、幼馴染と一緒でもふと、過ぎる感覚。
 少年の、ある一点、普通とは違う箇所。それが、いつだって少年に疎外感を感じさせる。
 思わず、立ち止まってしまった。
 雨が、容赦なく体を叩き、冷やしていく。耳には、雨音しか届かない。

「……終……」
(セツ……)

 無意識に呼んだ名前。
 誰もいない。
 いつもならば、すぐさま声が返ってくるというのに。
 答える声は、ない。



「そこは、俺を呼べ」



 一瞬、幻聴かと思った。
 ゆっくりと、いつの間にかうつむいていた顔をあげる。
 いた。
 少年は、思わず瞬きを繰り返す。
 いるはずのない相手、聞こえるはずのない声。
 そこに、傘をさしているというのに濡れている一人の少年が、息を切らせて立っていた。

「セツ……?」
「他の誰に見える」

 怒ったような口調で近づき、すでに役にたたないというのに、傘に少年を無理矢理引き込んだ。
 ぽたぽたと、雫が落ちる。
 少年は、目を見開いて、幼馴染を見ていた。

「ずぶ濡れで、なにをしている」
「家に、帰ろうと思って」

 カバンの中から、濡れていないタオルを相手は取り出し、乱暴に髪をかき混ぜ始めた。
 いきなりのことだったが、少年は幼馴染が現れたことに驚いていたおかげで動じない。
 どうしているのだろうと。
 何も言っていないのに。
 さっき、少し名前を呼んだだけなのに。

「傘は?」
「朝、晴れって言ってたから忘れた」
「なぜ、終がいない」
「終は、先帰っちゃったから」
「バカが……っ。結をおいてどこに行くというんだ」

 声を荒げて、今はいない兄への文句を並べる。
 その間にも、髪を拭き、首や肩を順番に拭かれて行く。しかし、一枚では足りず、ただ、多少雫が垂れない程度にしかならなかった。 
 少年は抵抗することもなく、大人しく拭かれるままになりながら、聞く。

「なんできた?」

 幼馴染は、なんだかバツの悪そうな顔をして、上着を脱ぎ、自然な動きで少年にかけた。

「セツ、濡れてる」
「かまわん。そんな透けた服で外を歩くな」

 ちらっと、見れば、確かに白いカッターシャツは濡れて透けているが、たいしたことはない。

「セツが寒いだろ?」
「寒くない」

 それより、濡れるからと体を引き寄せられる。

「セツ、濡れる」
「もう濡れている」

 そうかっと、少年は納得し、相手にくっついた。
 幼馴染の体温を感じて、思わずほっとする。

「セツ、なんできた?」

 そして、もう一度問う。
 忙しいはずなのに、今日は一緒に帰れないと言ったのに。
 なぜ、きたのか。
 ひどく、ひどく不機嫌そうな顔を幼馴染はした。
 言いたくないという顔だったが、少年の視線が逃がさない。

「お前が」

 視線を外す。
 言い辛そうに、微かに頬が赤い気がした。

「雨にぬれているような気がした」
「それだけ?」
「それだけだ」

 帰るぞっと、手を握られた。
 少年が冷えているせいか、手はじんわりと温かい。
 強くて手を引かれ、少年は歩き出す。
 ふと、自分は肩も濡れていないのに、隣の幼馴染の肩が濡れていることに気づいた。

「セツ、肩が濡れてる」
「うるさい」

 もう、黙れっと、言われ、少年は口を閉じた。
 手を引かれ、歩く。
 傘にあたって、雨が跳ねる音がする。
 先ほどと変わったことといえば、傘と上着と、幼馴染だけだというのに、全てが変わっているように思えた。
 黙ったまま、歩いていく。
 なぜかおかしくなって、少年は口元に笑みを浮かべた。

「セツ」
「なんだ?」

 振り返り、目が合った。
 笑っている少年に少し驚き、足を止める。

「セツ」

 嬉しそうな呼びかけに、不意に、愛しさがこみ上げた。
 手を握ったまま、見つめ合う。
 雨が、傘の中だけ、世界を切り取ったかのような錯覚。
 世界に、二人っきりのようで。

「ゆ、」

 少年の名を呼ぶ。
 愛しい名だった。
 その響きは、少年にとって、心地よい。

「ゆい」

 抱きしめたいと、思った。
 傘の雨音と混じり、現実と幻想の境を曖昧にしていく。
 本来ならば、こんな外で抱きしめようなどとは思わなかっただろう。
 しかし、今は、抱きしめたいと思った。
 抱きしめようと、手を伸ばす。
 少年も、もう濡れるなどと言う事はなかった。
 大人しく、受け入れ



「あっ終」



 ようとしたが、雰囲気は一瞬で崩れた。
 少年は、相手が現れた何倍も嬉しそうな顔で、相手の背後を見ていた。
 慌てて振り返ると、そこには傘をさした少年そっくりな兄が、じとっとした目で二人を見ている。それは、あまりにも複雑な感情を混ぜすぎていまいち思惑が読み取れない。
 ただ、固まる兄と、相手に対して、少年だけが動く。
 嬉しそうに、傘から飛び出し、兄の下へ。
 止める暇も、なかった。

「終」

 傘の中に少年が入ってくると、兄は嬉しそうな顔をしたものの、妙にきまずい顔をしていた。
 相手は、崩れ落ちそうなほど、腑に落ちない、悔しそうな顔を一瞬見せ、兄を睨みつけた。
 今この瞬間、兄>幼馴染の公式ができあがった。

「終、遊戯との約束は?」
「あー、うー、なんか、結が心配になって……早めに、切り上げてきた」

 幼馴染と同じ理由。
 少年は、顔を輝かせる。
 兄が、自分をとってくれたことが、嬉しくてたまらないと。
 自分の時と違うと、幼馴染は思った。
 しかし、口には出さず、抑える。
 もう、慣れたとばかりに、諦めのような表情を浮かべて。

「帰るか……」
「うん」

 兄の言葉に少年は頷き、ふり返って幼馴染を手招きする。

「セツも、帰ろう」
「ああ……」

 まだ釈然としていなかったが、少年を追って幼馴染も歩き出す。
 これからは、いくら嫌でもお互いに連絡をとろう。
 兄と幼馴染はそう思った。




 遅くなって申し訳ございませんでした!!
 結とセツと終で、雨の日の話。
 結はもう少しクールなイメージもあるのですが、書き易いように少し変えさせていただきました。申し訳ないです。
 後、セツももうちょっと、こう、大人っぽくさせようと思ったのですが……ムニャムニャ。
 いくつくらいかは、できるだけスルーの方向で。
 ちなみに、小さい子どもは、少女でも少年と言ったりもするそうです。そういうことで一つ!!
 こんな感じかなっと、恐る恐るかかせていただき、ありがとうございます!!
 変な点、違うと思った点があればご遠慮なくどうぞ!!
 題名は誰がなにを選ぶかという感じです。恋人とか、仕事とか、兄弟とか。



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