※社長と天音ちゃんが新婚ほやほやです。
 ギャグテイストしつつラブラブシリアスも。
 やりたいようにやってるダメな管理人。
 











































1.スウィートな日々のはじまりはじまり



「おはよう、社長」

 目を開けると、白い髪に青い瞳の少女がいた。
 鮮烈なピンクの制服に、白いエプロン、少し甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
 いまいち状況が理解できず、ぼんやりと見つめて、少女の名を呟く。

「あまね……?」

 呼べば嬉しそうに微笑んで答えた。

「おはよう」

 繰り返される言葉と同時に、前髪の隙間に唇が軽く落とされた。
 柔らかな唇の感触が、それが夢ではないと伝えてくる。
 少女は、現実で、確かにそこにいた。
 それに気づくと、彼は少女の腕を掴みベッドに引き摺りこむ。

「しゃっしゃっちょう!?」

 腕の中で閉じ込め、丸みを帯びた柔らかな輪郭に口付ける。
 しっかりと、腕の中華奢だが温かい存在があった。なくならない、少女がいる。
 驚きながらも、頬を赤らめ唇を受け入れて、少女は彼を見た。
 そうして、本当に、本当に幸せそうに、優しく笑うと、その頭を抱きかかえ、囁くように言葉を紡ぐのだ。


「大丈夫、せと、俺様いなくなったりしない。
 だって、もう全部、あんたのものだぜ」


 少しだけ少女の胸に顔を埋め、目を閉じる。
 ああ、やっと手に入れたと安心するように。

「社長、社長、また寝たら朝飯冷めるし、今日会議だろ」
「ああ、今起きる」

 少女を抱きかかえたまま起き上がり、青い瞳と青い瞳を合わせた。
 同じ青でも少し違う青。



「おはよう、天音」



 そう返し、彼もまた微笑んだ。



 新婚3日目の海馬さんちの起床。
 奥さんがかわいくてかわいくてしかたありません。

 


2.二人の愛の巣



 モクバは、いつだってその扉を開けるときはそっとだ。
 あくまでそっと。
 勢いよく開けてはいけない。
 そうっと、本当に、扉の軋む音すらしないほどそっとだ。
 そして、そっと開けると、そこにはやっと見慣れた光景となった二人がいる。

 兄のネクタイを結ぶ少女。

 二人は、もう新婚ですという雰囲気ををこれでもかというふりまくほど顔を近づけて、幸せそうな顔をしている。
 モクバは、それを見るのが好きだった。
 けれど、少々他人に見栄や意地を張りたがる兄と少女は、誰かが見ている前では決して俗に言ういちゃついたりするような姿は見せない。
 だから、モクバは二人の世界を壊さないようにそうっと扉を開けて覗くのだ。
 ネクタイを結び終えて、少女が顔を突き出して目を閉じる。
 兄の顔が引きつった。
 迷っている。迷っている。顔を強張らせて、汗をかきながら、じっと少女を見つめて。
 その様は、あまりにもいつもの兄からは考えられず、モクバはいけないと思いつつ笑ってしまう。
 しばらく迷っても、結局兄は負けて、唇を重ねた。
 うっとりするほど、柔らかい口付けだ。
 そして、唇が離れたとき、モクバはやっと、扉をノックする。
 びくっと体をばっと不自然に離す兄と少女を見て、扉の影から顔を出す。

「おはよう、兄様、義姉様」 

 そうすれば、二人はかなり動揺しながら、それでもモクバに向かって笑いかけた。

「おはよう、モクバ」



 二人の愛の巣を見る時は、弟も気を使います。
 でも、見られてる><




3.いってらっしゃい(はぁと)



 玄関を出るとき、少女は一歩立ち止まる。
 同じ時間に出る彼の背を見て、そうしてごく自然に言う。

「いってらっしゃい」
「いってくる」

 その言葉のやりとりが終われば、すぐさまその背中を追って、同じ車に乗り込んだ。
 一見無意味な行為だが、それでも、二人の間にはなにか意味があるのか、一度も欠かされたことはない。
 車に乗り込み、少女は彼の腕に頭を預ける。
 離れているのが、一秒でも惜しいというように。 

「つーか、社長、また学校休み?」
「ああ、しばらくわな」
「いい加減でねえと、出席日数やべえだろ?」
「計算している」
「それならいいけどよ……俺様だけ、卒業とか嫌だぜ?」
「ふぅん、それはない」

 車が止まり、少女は彼から頭を残念そうに離すと、外にでた。
 振り返り、笑う。

「いってきます」
「いってこい」

 なんでもないやりとりだった。
 ごくありふれた、どこにでもある会話。
 それを少女は愛しげに噛み締めた。
 些細なことが、大切だと、知っているかのように。

「あっ今日は帰れる?」
「……ああ」
「じゃあ、待ってる」

 遠くでチャイムが聞こえる。
 少女は慌ててスカートを翻し、校門へと飛び込んだ。
 その背中をしばらく見つめ運転手に車を出すように声をかけた。


 

4.二人で決めた役割分担



 結婚したら、一緒の部屋で寝よう。
 寝る前は「おやすみなさい」って言うこと。 
 俺様は先に起きてご飯作って、起すから、ちゃんと「おはよう」って言うこと。
 できるだけ朝ごはんは一緒に食べよう。
 モクバもいたらいいな。
 昼ごはんは、ちょっと無理だけど、晩御飯もそうすること。
 俺様ちゃんと作るから、残さず食べろよ。
 でもって、スーツのネクタイは俺様が結ぶから勝手に結んじゃだめだぜ。
 出かけるときは、絶対「いってらっしゃい」言うから、ちゃんと「いってきます」って言うこと。
 勿論、帰ってきたら「おかえりなさい」って言うから「ただいま」って言うこと。
 キスもいっぱいしようぜ。
 子どももいっぱいほしいな。
 えーっと、後は……後で決めよう。


 とにかく、それが俺様と社長の役割分担な。
 なあ、幸せな家庭にしよう。
 当たり前の、あったかい家庭にしよう。
 どこにでもある、ありふれた、普通の家庭。
 俺様と社長がもらえなかったもの、全部詰め込もう。 

 それが、結婚する上での条件。
 幸せになろうぜ。



 4とあわせて。
 幸せにするから、幸せにして。
 そんな役割分担。




5.ふりふりえぷろん



「ここで、意外なことに社長が!!」
「黙れ」
「すげーぜ兄様!! さすがだぜ!!」
「お見せできないのがすごく残念だな!!」
「まったくだぜ!!」
「もう、家ではそれで過ごそうぜ社長!!
 俺様も着てペアルックだ!! モクバも着りゃトリプルルック!!」
「あ、俺似合うかな!!」
「絶対似合う、大丈夫大丈夫!!」



「……バクラ、モクバ、とりあえず、そこに座れ」


「「はい……」」



 勢いで押し通そうとして失敗した。
 モクバとバクラのコンビって、すごいかわいいんじゃ……。




6.夢の台詞を口にして



「子どもはいっぱい、ほしいな」

 いつか少女はそう言った。
 幸せそうな顔をして。
 彼はそのあまりにもストレートな言葉に辟易し、答えることはできなかった。
 


 時折、少女は遠い目をしてそう呟く。
 じっと、自分の華奢な腹部を見下ろし、そうっとさすった。
 そのさする手に、彼は自分の手を重ね、後ろから抱きしめる。
 大丈夫だと、安心させるように。

「母さん、ずっと不妊気味だったんだってよ」

 ずっとずっと不妊治療して、諦めかけて、やっとできたのが、自分と兄だったと。
 本当は、できないこともあったのだと。

「俺様も、そうだって」

 できないかもしれないと、医者に告げられたと。
 視線が、地面に落ちる。
 虚ろな、怯えるような瞳。
 

「子どもは、いっぱいほしいな、瀬人との、子ども」


 いっぱい、ほしいな。
 ぽろりと、青い瞳から涙が零れる。
 一粒落ちれば止まらない。
 ぽろぽろとぽろぽろと溢れて止まらない。
  

「いっぱいじゃなくても、いい。
 瀬人との子どもがほしい。産みたい、産めないのはやだ……やだぁ……」


 ぎゅうっと強く、手を握る。
 彼は何も言わなかった。
 何も言わない代わりに、その強さで、体温で全てを伝えるように。
 少女はしゃくりあげながら、何度も何度も、繰り返す。 

「やだ……やだ……やだ……」

 産めないなんて、のやだ。
 少女は彼の腕にしがみつき、震えながら嗚咽を漏らした。
 いつか夢見たセリフが、突き刺さる。
 彼はただ、少女が泣く夜が早く明けるように願いながら、強く強く抱きしめた。



 不妊気味で不安になる天音ちゃん。
 基本的に、妄想と捏造。



7.休日は二人でお買い物



 覗き込んだショーウィンド。
 笑って「これいいな」って呟けば、いきなり店に引きずりこまれた。

「アレを、全部、カードで」

 店ごと買う気ですか。



 かわいい奥さんを溺愛しすぎ。
 社長ならやりかねない。




8.あまい、よる



「おやすみ、兄様、義姉様」

 その声で一日が終わる。
 どちらからともかく体を寄せて、確かめるように唇を重ねた。
 やんわりと舌を絡めて、少女は強く強く袖を握り締める。
 ゆっくりと唇から体温を馴染ませた。
 お互いの体温の境がなくなれば、彼は少女を抱き上げて、髪を掻き分け白く華奢な首筋に小さく吸い付く。
 くすぐったそうに肩をすくめ、髪に口付けを返した。

「瀬人」

 呼べば、青い瞳と青い瞳がかちあった。
 少女が笑えば、彼も応えるように笑う。
 他人の前では、絶対に見せないだろう優しい笑み。
 くすりと声を漏らして、もう一度唇を重ねた。 

「ベッド、いく?」

 微かに、白い頬が赤く染まる。
 彼は口では答えなかった。
 変わりとでも言うようにすたすたと寝室へと繋がる部屋へと歩みを進める。
 ふと、少女は視線を、「こちら」へ向けた。



「こっから先は、夫婦の時間だから、おやすみ」


 バタン。
 扉が閉まった。 



 残念ながら、この続きを見るにはわっふるわっふ(略)
 嘘です。




9.お願いが一つ



「そういえば、もうすぐモクバ誕生日だよな」
「あっそういえば……」
「モクバ、なんか欲しいものあるか?」
「うーん……」
「俺がやれるものなら、やるぜ」
「ほんと?」
「おう」
「一つだけ、あるぜ」
「へえ、なんだよ」
「すごく簡単なものだぜ、」


「……なぜ、貴様がここにいる」
「義兄に向かってその口の利き方はひどいよ?」
「うるさい。貴様、何十回俺に嫌がらせの電話をしたかを数えてから口を開け」
「そんな……たった666回だよ」
「不吉な回数を……」
「呪いとか、発動しないかなって……」
「……よし、出て行け」
「それよりも、海馬くん、僕、君の義兄として、一つほしいものがあるんだ」
「……なんだ」
「うん、すごく簡単なことなんだけど、」



「甥っ子か、姪っ子がほしい」


「……」
「……」
「甥っ子か、姪っ子」
「……社長!! 社長、かわいい弟の頼みだぜ!! がんばろう!!」
「いきなりなんだ貴様らは!! よくわからんがよるな!!」
「さすが義姉様! さっそく!!」
「わあ、頼まなくても大丈夫だったみたいだね!」



 義兄と義弟よりお願い。
 早く叶えてもらえるといいね。



10.一月過ぎて



「で、いつ離婚するの」
「不吉な!?」



 義兄でしめるとは、誰も思ってなかったでしょう。
 そんな無意味な奇のてらい方。



お借りした場所 http://pick.xxxxxxxx.jp/


inserted by FC2 system