※王様とにょた盗賊王こと、エルナたんです。
 諸事情で年齢が19歳前後です(結婚年齢のため)
 二人とも、一応大学生。
 エルナたんと宿主様は姉弟、王様と相棒は従兄弟です。
 甘いような、ギャグのような、そんな色々。基本エルナたんの暴力です。

















































1.スウィートな日々のはじまりはじまり



 3ヶ月、生理がこなかった。
 風邪でもないのに吐き気がきた。
 医者に「おめでとうございます」と言われた。



Q.さあ、この3つをあわせると、なにができるでしょう?



A.「ガキができた」



 ばんっと口に出したエルナに、数秒、アテムは考える。
 いまいち脳まで到達していないのだろう。
 いつものエルナであればそこで殴るなり罵声を浴びせるなりしていたが、エルナもまた混乱していた。
 頭の中をぐるぐると、医者に告げられた言葉が巡る。
 夢なら覚めてほしいし、嘘ならばいますぐ嘘だと言ってほしい。
 目頭が熱くなってきた。
 ぎゅうっと握ったスカートにシワがよる。
 どうすればいいのか、わからない。

「ああ」

 やっと、考えがまとまったのだろう、アテムがカバンを開いた。
 エルナはそれを見ている。
 中から、紙切れ数枚と、小さな箱がを出し、目の前に置いた。
 やっぱり、エルナは見ている。
 一番上の紙には婚姻届と書いてあった。書く欄の半分は、アテムの筆跡で名前が書かれている。
 だが、それよりも気になるのは、「その他」と書かれた欄に、エルナの親の印鑑と署名があることだ。そして、住所欄にはアテムのでもエルナの家でもない住所が書いてある。
 箱には手を伸ばす気になれない。
 アテムは、笑っている。
 とりあえず、エルナは目を強く閉じて、開けた。
 アテムが、ぐっと親指をたてる。


「そろそろだと思ってたぜ★」
「てんめええええええぇぇぇぇ!! 計画犯かあああああああ!!」


 襟首を締め上げると、その顔に拳を振り下ろす。
 抑えた涙腺が溢れ出す。
 殴ってもニヤニヤ笑いの止まらないアテムは、その涙を拭い、呟く。

「結婚しよう」

 へにゃりと、締め上げる手から力が抜けた。
 俯き、ぽろぽろと涙を流しながら、弱弱しい声が苦しそうに吐き出す。

「………おろせって、言うかと思った」
「………お前の中で俺はどうなってるんだ」
「いきなり人を強姦する変態」
「………………………」
「うぅー……」

 しゃくりあげ、何度も何度も必死に涙を止めようとするが、止まることなく零れ続ける。
 その白い髪を撫で、頬を片手で包んだ。
 青い瞳がしっかりと、アテムの目を見据える。
 いまだ流れる涙は、ひどく美しかった。

「結婚しよう、エルナ。幸せにしてやる」

 数回、エルナは瞬きをする。
 白い睫に大粒の涙が縁取られ、どことなく愛らしいと思った。
 数秒の、見つめあい。
 不意に、エルナが動いた。
 がっと小さい箱に掴むと乱暴に開ける。箱の中、赤い宝石のちりばめられた指輪が収まっていた。
 それを躊躇い無く左手の薬指にはめ。ぴったりとまるでそこにはまる為に生まれたような指を数秒見つめ、拳を2,3度握った

 ゴスッ。

 と思った瞬間、その拳をアテムの顔に再びめりこませる。
 利き腕で無かった分ダメージは小さいと思いきや、指輪とそこに収められた宝石の分刺す様な痛みが加わった上に、歯と指輪が頬越しにぐりりと肉を抉った。
 ぐっと、エルナは立ち上がった。痛みに悶えるアテムを見下ろし、叫ぶ。



「幸せにしないと……ブチ殺す!!」 



 堂々とした、プロポーズへの返事だった。 



 はじまり、はじまりー。
 なんという諸葛孔明な王様。
 これで相手が天音ちゃんだったら、宿主様に殺されているところでした。
 とりあえず、婚姻届以外の紙は必要書類と、宿主様の血文字での結婚承諾書だと思います。怖! 
 指輪は、あの指輪と同じデザインと言う噂ですが、さあどうでしょう。








2.二人の愛の巣



 全てが真新しい部屋。
 そこに住む二人にまだ馴染まぬ空気はまるでモデルルームのようだった。
 そんな部屋の寝室で、はれぼったい目をこすり、エルナはベッドから這いずってでるときょとんっとまだ半分しか開いていない眼で周囲を見回す。
 ここがどこかわかっていないようで、しばらくぼうっと首をかしげた。
 少しづつ、昨日の記憶が競りあがる。
 同時にかああっと体温が上がり、褐色の肌のせいでわかりにくいが顔が朱に染まった。
 見下ろせば、自分はシーツ以外にまとうものは何一つなく、横には同じようなアテムが寝ている。
 慌てて手をじたばたと動かせば、薬指に外し忘れた。否、アテムが外させなかった指輪がある。
 それが更にエルナの羞恥を加速させた。
 八つ当たり気味にシーツの上でばたばたと暴れ、それでも起きないアテムを睨みつける。
 無理矢理、今日からここで一緒に暮らすのだと言われた。
 親の許可も、一番味方してくれるだろう弟や、アテムの従兄弟にもなぜか涙目で送り出されまた泣いたことまで思い出す。
 思わず、眠る頬を軽くつまんだ。
 起きないので、更に強く、ぎりぎりーっとどこまで伸びるが試せばさすがに慌てて起き上がった。

「?」

 エルナと同じように、ここがどこだかわからずきょろきょろと見回し、そしてエルナを見た。
 昨日のことを思い出したのだろう、にやっと笑う。
 そして、エルナの左手を握ると、頬から離す。
 しばらく、じっと嬉しそうにそこに光る指輪を見つめ、口付けた。 

「おはよう、我が妻」

 冷めたはずの体温が跳ね上がる。
 それと同時に、腕を強くひっぱられる。
 驚きのままアテムの上に倒れこむと、その褐色の肌を抱きしめた。

「お、おうさ! なにすんだよ!!」
「もう少し、浸っておこうと思ってな」

 抱きしめた背を撫で、髪に指を絡める。
 触れ合った素肌同士が温もっていく。

「もう、誰にも邪魔させない。お前は俺のものだ」

 わけもわからず、エルナもしがみついた。
 涙腺が緩む。
 昨日、あれほど泣いたのに。

「俺の、ものだ」

 なぜ、その言葉が嬉しくて嬉しくてたまらないのか、わからなかった。



 これでやっとあんたのものなんだって。
 裸でなにをしたんですか? ナニです。すみません、管理人死ねばいいのに。
 いちゃいちゃです。






 

3.いってらっしゃい(はぁと)



「いってらっしゃい(はぁと)」
「いってくるー……て、てめえ、学校サボル気か!?」
「サボるんじゃなくて、今日は午前中休みなんだZE★」
「それでいいのかよ!! 大学生!!」
「早く行かないと、遅刻するぜ」
「……いってくる」
「いってらっしゃい……ああ、エルナ」
「?」
「いってらっしゃいのキs」
 ドゴスッ。


 拳とキス。



 まさかの、王様が言う方。
 二人は別々の大学かよってます。
 王様は決めてませんが、エルナたんは考古学とかやってます。








4.二人で決めた役割分担



「お前は作る人、俺は食う人」
「てめえも作れ」
「俺の手料理を、エルナが食いたいって言うなら、作るぜ?」
「……(変なもん入ってそうだ……)俺様が作る」
「ちょうど、いいくすr……調味料が手に入ってな……」
「俺様が作る!! ちょうつくりたい!! ちょう!!」
「そうか、なら待つぜ★」
(あれ……俺様、なんかのせられてない?)



 王様策士。
 王様は別にヘタじゃないけど、うまくもないと思います。









5.ふりふりえぷろん



「と言えば男のロマンだぜ!!」
「着せるなー!!」

 両腕を縛られたエルナに、これでもかというほどフリルのついたエプロンをつけさせる。
 エプロンが少し大きめのせいか、薄着のエルナは上半身はともかく、下半身は何一つつけていないように見え、まるで裸エプロンのようだった。

「じゃあ、脱がすか」

 がっと、エプロンの隙間に手をつっこみ、短いズボンをずり下ろす。

「そっちじゃねえええ!!」

 ビタンビタンと釣上げられたマグロのごとく暴れるが、慣れた仕草でするりと奪われた。
 これ以上奪われてなるものかと更に足をばたつかせるものの、それはフリルを翻ししなやかな肉付きのよい足と下着を晒す。

「黒!」
「ガッツポーズすんな!!」

 ばきっと、振り上げた足がアテムの顎を正確に蹴飛ばした。
 それはもう、見事に、「クリティカルヒット」という文字をつけたいほどに。
 脳が揺れ、支えのない体が床へとたたきつけられる。しかも、頭から。
 ひどく鈍い音にエルナが足の動きを止めても、アテムは動かなかった。
 冷や汗が背筋を伝う。

「王様……?」

 呼ぶ。

「おうさまぁ……?」

 返事も、反応もない。

「王様、王様、王様、アテム!! アテム!?」

 なんとか体を起き上がらせるが、両腕が不自由なので思うように動けない。 
 足で体をそっと2,3回揺すってもみたが、呻き声も聞こえなかった。
 呼吸をしてはしていたが、意識が無い。

「アテム!! ちょっ!! せめて腕外してから気絶しろよ!! おい!
 俺様はこんな格好で発見されるの嫌だぞ!!」


 その後、暴れまくったらなんとか腕が抜け、フリルのエプロンに下半身下着だけで縛られている姿を発見さるずには済んだという。



 お題なので、全体的に自重かつ生殺し。
 エルナたんは激しく口より足が出るタイプ。








6.夢の台詞を口にして



 夜、王を責めるのは盗賊の恨み言だった。
 愛しい妻の体に宿る愛しい盗賊の呪詛。
 それは、睦言より甘く王を縛るのだ。

「許さない」

 一生、あんたを許すものか。
 何度転生しようが、何度変わろうが、何度逃げようが。
 この魂が壊れきっても狂いきっても消えてなくなるまで。
 地の果てでも冥界の向こうでも未来の先であっても、追いかけて追い詰めてやる。
 憎い、憎い、憎い、憎らしい王。
 今すぐ殺してやりたい。

「許さない」
「ああ、お前に許されたいなんて、思ったこともない」

 ずうっと、俺を憎めばいいさ。
 そうして、ずうっと俺を追いかけろ。
 お前を探すのは大変なんだ。
  
「もっと俺を許すな」



 実は、転生仕様でした。
 王様のみ覚えてる。
 夢だよ、全部、夢だよ。





 


7.休日は二人でお買い物



 ふと、ある棚の前でアテムは立ち止まる。
 エルナが別の棚を物色しているその背に、声をかけた。

「エルナ」
「んだよ」
「イチゴとメロン、どっちが好きだ?」
「?」
「イチゴとメロン」
「アイスか?」
「いや、コンd」



 エルナの華麗な回し蹴りが、アテムの顔に突き刺さった。



「キャラメルもあるぜ!」
「死ね!! 死ね!!」



 わからない人は、一生わからなくていいと思います。
 色々味があるらしいですね。アレは








8.あまい、よる



「というわけで、キャラメル味……」
「離婚届もらってくる」



 買ったんですか、結局。
 えーっと、甘かったそうです(なにがさ!!)








9.お願いが一つ



「あのよ、アテム」
「ん?」
「お願いがあるんだけど……」
「お願い……?」

 珍しいエルナの言葉に、アテムは首をかしげた。
 しばらく迷うように視線をめぐらせたが、真剣な顔で、告げる。


「しばらく、おあずけな」


「え?」
「おあずけ」
「なっなにを……?」
「そっその……よっよるのいとなみ……」
「なっなんで!?」
「腹にガキいるからに決まってんだろ!!」
「そっそれはどれくらい待てばいいんだ!!」
「……生まれてから、2ヶ月くらいまで……?」
「!?!?!?!?!?!?、俺に死ねと!!」
「どんだけ我慢きかねえんだよ、あんた!!」
「俺の辞書に不可能と我慢と自粛と自重はないぜ!!」
「そりゃとんだ落丁だ!! 取り替えてもらってこい!!
 後、浮気したら即離婚な!!」
「ちょっと待ってほしいぜ!! じゃあ、口と手ならいいn」

 素晴らしい正拳突きが鳩尾に決まった。



 妊娠中は、しちゃだめです。
 王様の悲劇。








10.一月過ぎて



 扉を開けるときは、ノック、あるいはチャイムを押すべきだと彼は思った。
 いくら親しき仲にも礼儀があると、肌で学べた。
 しかし、ここで彼を責めるのは少し待って欲しい。
 彼にとって、その扉の向こうにいるのは、姉と義兄だった。
 姉と義兄の普段見ている様子で、まさかその先であんなことが行われているとは思ってもみないだろう。
 確かに彼は間違いを犯したが、それは決して彼だけの責任ではない。
 まさか、扉を開けた先、自分の姉と義兄が「あーん」の途中などと、誰が思うというのだ。
 そして、激しく動揺した姉が、口に持っていくはずの箸を義兄の眼に突き刺すなど、本当に、想像の外であった。
 悲鳴をあげて椅子から転がり落ちる義兄。
 悲鳴を上げて誤魔化そうとする姉。
 衝撃で散乱する机の上の料理たち。
 騒音。
 彼は、扉を閉めた。
 とりあえず、救急車を呼ぶべきだろうか。



 義弟は見た。
 エルナたんは照れると凶器。





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