※遊バクです。
 闇遊戯とかぼかさず、表の遊戯です。
 幸せなパラレルで、らぶらぶです。
 闇バクラ=獏良の弟で、終(シュウ)です。
 王様いきなり失恋してます。
 管理人の独断と偏見を含みまくってます。










































      恋をしました。





「あのさ、アテム」

 それは、静かな放課後のこと。
 誰も居ない教室で、机と、カードを挟んで向かい合い、彼は切り出した。
 一枚引き、手札に加える。

「なんだ、相棒」

 一枚、場に伏せる。

「君に言いたいことがあるんだ」

 少し考えて、ターンエンド。

「相棒の話なら、なんでも聞くぜ」
「うん、君には、言っておこうと思うんだ」
 
 手札を見つめ、口を開く。

「君にだけは、秘密を作りたくないから」

 顔をあげて、真剣な瞳で彼は相手を見る。
 一切の曇りのない瞳に、相手もまた、まっすぐに答えた。
 少しだけの沈黙。
 それで、伝わるなにかがあった。

「相棒……」
「あのね、僕」

 一枚、引く。
 躊躇うように、震える唇で告げた。

「恋人ができたんだ」

 相手の目が、見開いた。
 見つめ合ったまま、時が止まるような錯覚。
 けれど、それはやはり錯覚でしかなく、瞬きの間に崩れた。

「それは」

 相手の表情が、喜びに染まった。
 まるで自分のことのように嬉しそうに笑う。

「おめでとう……!!」

 心の底から出た言葉だった。
 その言葉に、彼は照れたようにうつむく。

「いったい誰なんだ!! 俺の知ってる子か?」
「うん……」

 子どものようにはしゃぐ相手に、ますます照れたように頬をかく。
 その様が本当に幸せそうで、相手はよりいっそう顔をほころばせた。
 まさに、相手の幸せは自分の幸せと言いたげである。

「もしかして、杏子か?」
「ちっちがうよ、杏子は幼馴染!!」

 顔を真っ赤にして否定する。
 ばたばたと慌てる様がおもしろかったのか、相手は少しいじわるな顔で問う。

「じゃあ、レベッカか?」
「なっなんでレベッカが出てくるのさ!」
「ふーん、まさか、城ノ内くんの妹とか……?」
「ちっ違うよ!!」
「だとすると……舞か……?」
「ちょっと待って!! 舞さんには城ノ内くんがいるでしょ? もう!!」

 身近な女性を幾人かあげて、その誰でもないことに、相手は不思議になってきた。
 自分が知っている相手と言われたかぎりは、知らない名前が飛び出すわけがない。
 まさか、紹介されたのに忘れたクラスメイトの女子とかだろうか。
 少し強引に問い詰めると、ちょっと待って、っと止められる。

「ちょと待って、言うから」

 一呼吸。 

「いったい、誰なんだ?」

 少し冷静になって、立ち上がっている自分に気づき座りなおす。
 彼は、なんとか落ち着いた相手に安堵の溜息をついた。
 そして、はにかみながら、嬉しそうにその名を紡いだ。




「バクラくん、なんだ」




 今度こそ、時が止まった。
 正確には、彼の時間は止まらなかったが、相手の時間が凍りついた。
 驚愕の表情すら浮かべられず、びしっと、音すらしそうな見事な硬直。
 彼は、そんな反応に照れて気づかない。

「本当はね、もっと前に話そうと思ったんだけど、バクラくんが照れちゃって」

 手から、ばらばらっと、カードが落ちる。

「でも、君には秘密を作りたくなかったから……って、アテム?」

 ぶるぶると、それをきっかけに相手が震える。
 寒いわけでも、恐怖というわけでもなく、無意識に震えが止まらない。
 椅子と机ががたがた揺れる。

「あ、あてむ……?」

 少し体を引いて、彼が呼ぶ。
 相手はひどい眩暈を覚えながらも、口を開いた。

「バクラくんって……了くんの、方……?」

 相手は、いつも穏やかに笑っている少年を思い浮かべた。
 クラスメイトで、友達。彼ともかなり仲がいいと傍目からでもわかっていた。
 なんとなく、彼と少年が並んでいるのは容易に想像がつき、幸せな気分になる。
(ああ、獏良くんなら相棒を任せられるぜ)
 そう考えることで精神を保つ。 
 だが、すぐに彼は首を横に振った。

「ううん、終くんの方」

 目の前が、真っ暗になりかけた。
 浮かぶのは、穏やかに笑う少年とよく似た、けれど正反対の少年。
 少年の弟で、口が悪くて性格も悪い、かわいげのない、よく喧嘩をする相手で、本当は。
(バクラ……の、方なのか……)
 幻聴だと信じたかった。
 だが、幻聴ではない。
 倒れそうになる体を必死で保つ。

「いっいつか、ら……?」 
「結構、前かな……はっきりと告白したのは二週間くらい前」
「にっ……」

 二週間という言葉が重くのしかかる。
 二週間前の記憶を辿った。
 そう、そういえば、あの日、彼とあの少年が、グループから欠けていた。
 けれど、それはよくあることで。
 いや、よくあって、しまったことで。
 よくあることなんて、おかしいはずなのに。
 崩れそうになる体を椅子の背もたれで支える。

「あー、なんだか、バクラくん……ううん、終くんにも君にもきちんと言ったら、肩の荷が下りた気分」

 笑う彼の顔が、直視できない。
 幸せそうで、幸せそうで、そこに、少しも曇りがなくて。

「おめでとう……」

 そう、搾り出すだけで精一杯だった。










(口が悪くて性格も悪い、かわいげのない、よく喧嘩をする相手で、本当は――スキだったのに)











「王様と、何、話してたんだ」

 少しふてくされたように見える少年が、玄関で待っていた。
 白い髪も、白い仇も、夕日に染まって赤い。
 それを、彼は素直にきれいだと思った。

「待ってて、くれたんだ」
「待ってちゃ、悪かったか」
「ううん、全然」

 嬉しそうな笑顔に、ふいっと、顔をそらされた。
 それが、怒ってではなく照れての行動だと彼は知っている。

「ありがとう、待っててくれて」
「別に……つーか、王様と、一緒に帰らねえのか?」
「ううん、なんか、少し一人にしてほしいってさ。
 一緒に、帰ってほしかったの?」
「別に……」

 靴箱から靴をとり、はく。
 その間、じっと、少年は彼を見ていた。

「なあ」
「アテムにね」

 再び問われる前に、彼は口を開く。

「付き合ってるって、言っちゃった」
「は……!?」

 ぱくぱくと口を動かす。
 何か怒鳴りたそうだが、言葉がでない。
 怒っているような、恥ずかしがっているような、ない交ぜの表情。

「いっ言うなって! 言っただろ!!」
「アテムに、秘密作るのいやだったんだよ」

 夕日より赤く染まった顔を見て、彼もまた照れたように笑う。

「それに、どうせ、バクラくんも、秘密にできないでしょ」
「終……」
「ああ、そうだ、終くんも、獏良くんにいつまでも秘密にできないでしょ」
「……」

 反論できないのか、不機嫌そうに眉根を寄せるだけで、何も言わない。
  
「薄々気づいてるみたいだから、もう言っちゃおうよ。さすがに城ノ内くんとか、杏子とか、本田くんとかにはまだ言えないけど」 

 ね?
 っと、顔を覗き込み、首を傾げる。
 その仕草にしぶしぶ、少年は頷いた。

「でも、なんていやいいんだよ……」
「なんなら、一緒に言ってあげようか」
「それは、絶対やだ」
「じゃあ、がんばって」

 笑いながら、不意に手を握った。
 少しだけ級だったが、妙に自然な動きだった。
 まるで、当たり前であるかのように。

「ゆう、ぎ」

 暖かく、柔らかい手。
 しかし、微かに震えていた。

「僕もね、怖かったよ」

 彼は、前を見ていた。
 まっすぐと、前を、20センチは身長の違う彼の顔は、そうされるとわざわざ覗き込まないと見えない。


「アテムに打ち明けるとき、怖かった」


 軽蔑、されるのではないかと。
 祝福しては、もらえないのかと。
 恐ろしかった。
 一番仲がよく、見知った相手。その相手に、拒絶されるかもしれない恐怖。
 けれど、彼は言った。
 はっきりと、迷うことなく、自分から。

「でも、アテムにだけは隠したくなかった、認めてほしかった。
 ううん、アテムだけじゃない。本当は誰にも隠したくない。胸を張って言いたいんだ」


 君がすきだって。


 ぎゅっと、少年は胸が締め付けられたように顔を歪める。
 それは、憧れだとか、尊敬に似ていた。
 しかし、それ以上に、切なくて、嬉しくて、愛しくてたまらないような、そんな表情。
 20センチ背が低くて、子どものようにかわいい彼。
 けれど、そんな風にまっすぐに言葉を紡ぐとき、いつも少年は彼をかっこよく思ってしまう。
 口には決して出さないが、思わず、顔が紅潮してしまう。

「俺様も……がんばる」
「うん」

 いつでも離せる様に、お互いの手を握る力は弱い。
 でも、それでも、繋いでいた。
 少しだけ、お互い何も離さない時間が続く。
 それは、気まずいものではない、むしろ、心地よいもの。
 思わず、歩く足が遅くなるほど、長く、長く続けばよいという種類のもので。

「なあ、遊戯」
「なあに、バ……じゃなくて、終くん」

 少し、悪戯っこのように、少年が笑った。

「キス、しねえ?」

 きょとんっと、丸い目がよりまん丸に広がった。
 そして、一瞬おいてから顔がかあっと赤くなる。
 ばたばたと慌てて手を振り、首を振った。

「ちょっちょっと待って、ここ、外だから、道の真ん中だから!!」
「別にすぐじゃなくていいぜ。そうだな、そこの裏とか」
「それは、すぐって言うんだよ!!」
「だって、俺様」

 ぎゅっと、握る手に力をいれる。
 そのままひっぱられるともう彼には体格差から抵抗のしようがない。
 半分引きずられるようにつれていかれてしまう。
 その上、

「いますぐしたい」

 こう言われてしまっては、お手上げだった。
(終くんって、どうしてこう、かわいいんだろう……)
 そんな惚気じみたことを考えながら、ひきずられる。
 手を繋いだまま向かい合わせになった。
 少し暗がりで目があうと、少年の白い肌が少し赤い。
 それが妙にかわいくてみとれてしまっていると、少年はさっさと膝を折る。

「まっ待って」

 びしっと、手のひらを顔の前に突きつける。
 不機嫌そうな少年に、彼は断固として主張した。

「僕が背伸びするから、かがんじゃだめ」
「別にいいだろ」
「だめ!!」

 男のプライドなんだ!!
 そう叫ぶが、少年はいまいち理解してないように首を傾げる。

「俺様も男だぜ」
「いいから!!」

 めんどくさそうに折った膝を戻す少年は、それでも少しうつむいて目を閉じる。
 見上げたその顔は、目つきの悪さが目立たないせいか、幼く、整った顔立ちも合わせて見惚れるほど美しい。
 背伸びするごとに近づく繊細な睫と、柔らかな髪が妙にくすぐったく思えた。
 鼓動が早い。目を閉じて、熱くなった頬を見られなくてよかったっと彼はぐいっと、首を伸ばす。
 触れるのは一瞬。
 他人の柔らかさと暖かさを感じて、すぐ離れていく。
 目を開いた先で、癖なのだろうが、少年が唇を舐めると、どきっとしてしまう。

「かっかえろうか!」
「おう」

 今度は彼が少年をひっぱる形で歩き始める。
 まだ繋いだままの手が、微かに震えていることに彼は気づいていた。

「今日、言う」
「うん」

 そうして、結局は帰り道が別れる場所まで手を繋いでいた。


 ついにフィーバーして書いてしまった遊バク。
 王様の失恋から始まるという斬新すぎて帰れといわれてしまいそうなノリになりました。
 ちなみに、勿論勘は鋭いのににぶにぶコンビたる遊バクは王様の気持ちなんてまったく気づいてません。
 気づいて言ってたらAIBOが闇AIBOになってしまう……(怖)
 とりあえず、AIBOはかっこいいのに、かっこいいのに私が書くと玉砕します。
 後、バクラが素直すぎてなんだかどっかおかしい方向に走った気がします。
 でも、AIBOの前ではバクラだろうが社長だろうが素直になってしまうって信じてます!!
 まあ、デレじゃない素直なバクラもかわいくないですか? 私はかわいいって信じてます。
 問題は、私の文才ではそれが現せないことかな……。
 ああ、しかし、宿主様はどうなるのか。最強のシスブラコンも、やはり、AIBOの前では不戦敗なのか……!!
 やっぱり、遊戯王最強で、最高にかっこよくて男前はAIBOだなっと、管理人はしみじみ思いました。
 うう、まだ遊バクフィーバー続いてる、書きたい。カミングアウト後も付き合う前も書きたい……(止まれ)
 後、闇AIBOでも、エロもかきt(撲殺)

 AIBOの唇はきっと柔らかくて気持ちいいんだぜ! だから、バクラはAIBOとキスするの好きなんだぜ!
 とか考えてました(懺悔)
 ちなみに、終は、宿主様の了と同じ意味です。
 終わりが転じて始められるように、何事も終えられるように、そして、双子で了終になることで、終わりを始まりにできるようにとか、そういう意味にしました。
 終わりにはツイという読み方、つまり対もあるので、結構気に入ってます。



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