※ゾーク擬人化です。
 鬼畜な上に、セト様が基本に、黒髪赤目です。
 変なブツの捏造ゾークをまず見て、大丈夫な一だけどうぞ。












































 彼の邪神の名は、ゾークといった。
 本来は闇そのものであり、形も感情もなにもない、滅びにまどろむ深淵でしかない。
 けれど、一度深淵を覗き込めば、あるは触れれば、闇は戯れにその身を変える。
 美しく、あるいは醜く、黒き体に赤い瞳という姿で現れ、人を惑わすという。
 人の悲鳴、絶望、血と死、そして負の感情を好み、全てを闇に沈めることを望む者である。



 闇から浮かび上がった邪神は、自らの僕である少年の体を、軽く蹴り飛ばした。
 邪神にとって、それはあくまでも軽く、壊れない程度の力であったが、少年の体は簡単に吹っ飛び、壁にたたきつけられる。
 それを無感情に見下ろしながら、すたすたと近づくと、痛みで動けない少年の白い髪を手荒に掴み、持ち上げた。

「お前は、まだ生きていた頃の痛みに捕まっているのか」

 つまらなそうな声。

「何度も言っているが、痛みなど、苦しみなど。お前はとうの昔に失っているのだぞ。
 いや、本来ならば、お前は死んだ時点で全てから弾き飛ばされたのだぞ」

 別に、問うているのではない。どちらかといえば、言い聞かせているような声だった。
 邪神は形よい指で、歪んだ頬を撫でると、おもむろにぱんっと甲高い音をたてて叩く。
 ひっと、少年が悲鳴を零すのと同時に、反対の頬も叩く。

「いつまでも、記憶に縋りついておもしろいか」

 口を開く前に、頬を叩く。
 何度も、何度も、何度も。
 別に、楽しくもなさそうにその美麗な顔を歪めることなく続ける。

「まったく、余は人間の考えは、わからん」

 手が、止まった。
 少年の怯える瞳が、邪神をうかがうようにびくびくと動く。
 邪神の表情は変わらない。

「なあ、なぜ余にこうされているかわかるか?」

 それだけは、問うような声だった。
 じっと、少年の答えを待つように動きが止まる。
 少年はわからないというような表情で泣きそうになりながら口を開いた。

「それは……」
「誰が、口を開いていいと言った」

 あまりにも、理不尽で、傍若無人な言葉。
 少年の頭が、ごづっと、ひどく嫌な音をたてて床に、頭をたたきつけられる。
 ふっと、黒く染まる視界。
 意識を飛ばしかけて、無理矢理引き摺り戻される感覚が体を這いずりまわる。

「誰が、気絶していいと言った」

 頭を再び持ち上げられ、またたたきつけられる。
 赤い血が床を汚し、少年は吐き気を覚えながらも邪神を再び見た。
 やはり、邪神の表情は変わらない。
 何を考えているかわからない、混沌のままだった。

「バクラ」

 邪神が、少年の名を呼ぶ。
 返事をしていいものか迷えば、次の瞬間には背中を壁に無理矢理たたきつけられた。

「返事はどうした?」

 そこで、やっと少年、バクラは理解する。
 理由など、ないのだと。
 恐らく、邪神に、理由などないのだと。
 こうして、自分を痛めつけることも、話しかけることも、ここにいることも、何一つ、理由などないのだと。
 そう考えれば、髪から手を離され、解放されたかと思えば、今度は鳩尾に邪神の一切の防護にない素足が突き刺さる。

「っ!!」
「人の分際で、余を理解したように、思うな」

 息ができず喘ぎ、手足をじたばたと反射的に動かせば、べぎりっと足に衝撃が走った。
 見れば、邪神はなにげなくバクラの足を踏み折っている。
 喉が引きつった。
 悲鳴をあげたかったが、呼吸すらうまくできないというのにでるわけもなく、空気を吐き出すだけに終る。
 痛みに悶えて暴れれば、次は腕を踏み折られた。

「バクラ、別に余はお前を痛めつけ、苦しめたいわけではないんだぞ?」

 するりと、傍らに屈んだ邪神は、その手をまだ血の流れ続けるバクラの頭の傷口に触れた。
 びくりっと恐怖に身を硬くする。

「それだけなら、もっと簡単にお前を苦しめることができる」

 激痛。
 などという生優しい言葉では表せなかった。
 恐らく、この世にあるどの言葉を使ってもその感覚を表す言葉は見つからないだろう。
 たたきつけられた体も血を流す傷も折られた足も腕も超越し、直接、蹂躙された。
 白眼を剥いて悲鳴をあげ、折れた手足を無理矢理ばたつかせる。
 滝のように汗が噴出し、終らない悪夢に放り込まれたような嫌悪感が全身をぞぞぞっと巡った

「お前など、全て余のものなのだから」

 言葉と同時に、やっと感覚から開放される。
 気絶したくともできない倦怠感がどっと溢れ、呼吸が途切れた。

「なあ、バクラ、余から解放されたいか」
 
 答えない、というよりは答えることができなかった。
 またなにかされるかと思えば、意外なことに邪神は動かない。
 バクラを見下ろして微笑むだけ。

「解放されたいならば、早く余を、余の本体を目覚めさせるがいい」

 邪神が目覚め、世界が闇に包まれるとき。
 全てが闇へと変わるとき。
 すなわち、世界の破滅のとき。

「そのときだけが、お前に安寧を、解放を約束するのだ」

 優しい手が、頭に触れた。
 さらりさらりと子供を宥めるように血でまだらに染まった髪を撫で、邪神は歌うように囁く。

「余の手足となって千年宝物を集めろ。
 一刻でも早く、余を目覚めさせよ。
 王に死を、世界に闇を」

 それが、自分に触れた代償なのだと、楽しそうに。やっと、楽しそうに。

「余の役にたたないならば……捨てるぞ?」

 この顔に、また捨てられたいか?
 最後の言葉に、バクラは激しく反応する。
 目を見開き、噛み付きそうな勢いで叫んだ。

「いっ……! いやだ!! す、すて、すてないで……」

 それは、喪失の恐怖。
 痛みよりも苦しみよりも強く魂を締め付けた。
 異常なほど震えながらもがくように縋るように伸ばされた手を邪神は、一転して振り払わず、受け入れた。
 邪神の笑みが人のように歪む。
 肩を掴む白い手に褐色の手を重ね、引き寄せた。自分で作った頭の傷を血ごと舐め上げ、額に口付ける。
 柔らかな唇の感触に、うっとりとバクラは目を細めた。

「余の役にたて、その間は、捨てないでおいてやる」

 褐色の肌を撫で、夢見るような瞳が、その黒い髪と赤い瞳を見据える。

(ああ、そうか、今日は)
「そう、今日の余は、機嫌がいいんだ」

 邪神は、機嫌がよかった。
 バクラを散々痛めつけようと苦しめようと、機嫌は、よかった。
 理不尽な暴力など、バクラを無体に扱うことなど、全ては邪神の戯れでしかないのだから。
 歩けば、足の下の虫が潰れてしまうのと同じようなものなのだ。
 邪神は足を投げ出すと、バクラの頭を乗せ、ゆるやかに撫でる。

「お前の好きな顔で、いてやっているのだから」

 その、バクラにとって、この世で一番愛しくて、美しい姿。
 闇に触れた時、最も望んだ姿。
 だが、その姿であることが、機嫌のいい証ではない。
 バクラが求める姿であるからこそ、その姿が与える衝撃は、時として憎い姿よりもなによりも、心を抉り壊す。
 喪失の恐ろしさをその魂に刻むバクラには、それが怖くてたまらない。
 けれど、やはり、その姿で優しくされれば、その姿に触れることを許されれば、なによりも嬉しくてたまらない。
 堕ちずには、いられない。
 バクラは、目を閉じた。
 体中は痛いし、心もずきずきと血を流している。

「バクラ」

 それでも、その顔を見れば、その声を聞けば、バクラは溺れてしまう。
 きゅうっと、邪神の服の端を握り締めた。
 甘えるような仕草に、くすくすと声が漏れる。 

「本当に、お前は愚かで哀れで、可愛らしい」

 そんなこと、少し思っていない声。
 だが、その笑みに呼応するようにバクラも笑った。
 痛みも、なにもかも、どうでもいいというように。

「眠れ、許可する」

 邪神の一撫でで、頭の傷が消え、髪についていた血も、床にあったはずの血もそこにはもうない。
 あるのは、どろりとした闇と、寝息をたてるバクラと、それを見下ろす邪神だけ。
 全てが偽りの部屋の中、寝息すら、すぐさま闇へと飲まれた。



 最初なので、抑え目、機嫌の良いゾーク様でした!!
 ぬるい、きついは皆様のご判断でどうぞ!
 とりあえず、血が微量ですし、触手も、最低な行為もしてないので、セーフ! セーフの方向で!(無理)
 まあ、いつも通り、書いてる私だけ楽しいシステムです。
 
 鬼畜ショタ!



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