王はいまだ首を刎ねるのを保留にしているヨナカーンに向かって問いかけられました。
 あの愛しいサロメはどうしたら笑ってくれるだろうと。
 ヨナカーンはしばらく考え、首を傾げます。
「アレが笑顔以外の表情をするのですか?」
 王にとってひどくむかつく斬首ものの言葉です。
 本気で首を刎ねてやろうかという雰囲気を咄嗟にヨナカーンは悟ったのでしょう、真面目に考え始めました。
 ヨナカーンはいつだって真面目でしたが、比喩ではなく首がかかっているので更に真面目でした。
 そうして、これもまた王を激怒させる事実である幼馴染という観点からサロメの性格を考え、一つの答えを導き出しました。


「たぶん、王がこう言えば、アレは笑うと思います」


 王は、ヨナカーンの呟いた言葉に、大きな溜息とともに肩を落とした。

「ああ、それならばあいつは笑うだろうな。満面の笑みで」





「実は、俺は不治の病にかかって死ぬらしい」

 サロメは、花が開くように笑いました。
 嬉しくて嬉しくてたまらない、期待に満ちた笑みは今まで王が見たことのないほどの美しさと無邪気な笑顔。
 恐らく、これほどの笑顔を引き出すことは、ある意味で王以外ありえないでしょう。

「マジで!! いついつ!? 一年以内? 半年? 3ヶ月?」

 今にも飛び跳ねてバンザイをしそうなサロメに、王は、違う、違うんだとしか思えません。
 意気消沈する王とは反比例にサロメのテンションはあがっていきます。
 しかし、報われない王は自分の死を喜ぶ様ですら、妙にかわいく愛しく見えてしまうから手遅れです。
 ある意味、不治の病というのも間違いではないでしょう。
 なんと言っても、恋という不治の病にかかっているのですから。恐らく、その恋により、王は死ぬのですから。

「お前しだいだな……」

 そう寂しげに呟くと、サロメは訳がわからないと首を傾げます。
 とりあえず、王は八つ当たりにヨナカーンをいじめようと心に決めました。
 今受けた心の傷に比べれば、それくらい許されると思ったからです。

「おい、なんだよー、嘘かよつまんね!」
「……もしも」
「ん?」
「俺じゃなくて、セトが不治の病だったらどうする?」
「はあ?」
「お前の衝撃を和らげようと、俺だと言ってみたんだがな……」
「まっさかー、嘘だろ?」
「……………………」
「おっ王様?」
「…………嘘だと思うなら、その方がいいな」
「……………………せっセトー!!」

 混乱して走り出してしまったサロメの背中を見ながら、王はちょっと刃物の手入れを考えました。



 今日も、王宮は平和でした。



「王」
「なんだ?」
「バクラがひっついて離れないのですが」
「なぜだろうな」
「そして、王、たぶん貴方が原因なのに睨むのはやめてください」
「せ、せと、死んじゃやだ……」
「勝手に殺すな」
「だっだって……!!」
「王、睨むのはやめてください。そして、離れろ」
「斬首……晒し首……生首……」
「王、恐ろしい言葉を呟くのはやめてください!!」



 王とサロメとヨナカーン書いてくださいっとふっと言われたので。
 せとバクブームだったので、せとバクよりになりました。
 バクラはセト様が好きすぎると思います。



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