※捏造闇セト(3000年前の神官様)が出てきます。
 しかも、なんか妙に美化が激しい上、歌とか歌ってます。
 デレバクラ気味です。
 時間軸? なにそれ食べれるの?
 どこにも、続きません。
















































 静かな部屋の扉の隙間から、心地のよい低音が漏れる。
 恐らく、遠い異国の、遠い昔の歌だろう。聞き覚えのない響きは不思議と静かな部屋を一切乱すことなく紡がれ続けた。
 夜の闇に馴染みそうな旋律は、意味を理解できないものにも、なぜだかそれは子守唄なのだろうと理解させる。
 途切れることなく続く歌の中、小さく、足音が混じった。
 微かな、足音をたてないようにしつつも、響く足音に、歌い手は視線を動かし、歌を止めた。

「誰だ」

 扉の隙間が広がり、困ったように笑う少年がそこにいた。

「ごめん、海馬くん」
「………」

 一瞬、彼は何かを考えるように目を細め、そして口を開く。

「遊戯か」

 そして、特に怒っているようにも、慌てているようにも見えないまま、少年、遊戯の名を呼ぶ。
 どころか、驚いたのは遊戯の方だった。
 なぜなら、彼の膝の上に、一人の見覚えのある少年が寝ていたからだ。
 あまりにも穏やかに、安らかに、母親に抱かれて眠る子どものように体を小さく丸め、彼の座るソファをベッドに、彼の膝をマクラに寝ているのだ。
 それを、彼は特別なんでもないかのように受け入れ、そして、髪に自然に指を伸ばしては撫で、絡める。
 視線すら向けず、それが当たり前でもあるかのように。

「何か用か」

 思わず目をそらせないでいると、彼は問う。
 その声になんとか遊戯は目をそらした。

「う、うーん……別に、歌が聞こえたからきただけで、特に用事はないんだけど……」
「なら、出て行け」
「まっ待って!! えっと……さっきの歌、知らない国の歌みたいだけど、どこの国の?」
「エジプトだ」

 エジプトという単語に、遊戯は少し驚く。
 それは、なぜか遊戯とその周辺に深く強く関わっている場所だった。
 特に何も思っているようには見えない無表情のまま、その青い瞳が遠くを見る。
 遠い、遠い、悠久の、砂漠の果てを見るような目だった。

「海馬くん」
「どうした」
「なんで、海馬くんはエジプトの歌なんて知ってるの?」
「………」
「どうして、エジプトの歌なんて歌ったの?」
「………気まぐれだ」

 すっと、視線を膝の上の少年に向ける。
 その白い頬には、涙の痕がうっすらと浮かび、もぞりと顔をこすりつけ、コートの裾を掴む。
 まるで、もうどこにも行かないでとでも言うように。


「ねえ、君は誰?」


 遊戯は、思い切って口にする。
 ずっと、遊戯が言いたくて、しかたのなかった言葉。
 あの日、ある出来事から、時折、遊戯は彼が彼なのかわからなくなっていた。本当に、それは些細で、彼をずっと見ているわけではなかったので錯覚だと思った。
 だが、やはり、彼は違うのだ。
 何が違うのか明確に答えることは今までできることはなかった。だから、気のせいだと思っていたのに。 
 日を追うごとに感じていたズレの、いや、既視感の正体を掴んだ。
 彼は、誰か。

「誰、とはどういう意味だ」

 いつもの、どこか傲慢な言葉。
 けれど、それすら違うと思って聞いてみれば、違和感を覚える。

「そのままの意味だよ」

 きっぱりと、遊戯は言った。
 いつもの弱弱しさも、臆病さもそこにはない。
 問い詰めるような、しっかりとした芯がある。

「その、エジプトの歌は、いつの歌なの」
「今、関係ないだろ」
「あるよ……ねえ、その歌、3000年前のエジプトの歌じゃないの?」
「……………」
「ねえ、なんで僕を見たとき、言いよどんだの? 君は、最初誰を呼ぼうとしたの?」

 彼にしては、あまりにも、静かすぎた。
 不審でも、怒りでも、微かに表情を動かせば、あるいは、いつものように「オカルトはやめと」とでも口から飛び出せば、遊戯とて気のせいだと思うところだった。
 けれど、動かない。
 そこには、冷たいとまではいかぬ、穏やかな不動だけがある。
 
「君は、海馬くんじゃない。
 エジプトの歌を歌えて、もう一人のバクラくんを膝の上で泣かせられる、誰かだ」

 沈黙。
 彼は、少年の頬を撫でる。
 そして、小さな、溜息。

「君は、誰?」

 繰り返される言葉に、彼は口を開いた。



「俺は、亡霊だ」



 淡々とした口調だった。
 何の感情もないかのように、なにもかもを諦めたような、乾いた声。

「遠い、遠い過去、何も選べず、選ばず、なにもかも失って生き残った男の、亡霊。でなければ妄執、未練だ」

 遠い、遠い瞳。
 既視感の正体は、その瞳だった。
 そう、もう一人の遊戯が、あるいはバクラと呼ばれる誰かが、時折するような、寂しくも悲しい色。
 過去に引き摺られ、過去を見、過去に生きる、置いてけぼりにされた人間の瞳だった。

「……そんな顔をするな。俺はこいつのように宿主の体をのっとってなにかしようとも、勝手に動き回ろうなどとも、思っていない。
 俺は、今の俺を尊重している」

 ただ、少しだけ、今のように過去に依存してしまうだけだ。
 そう呟く瞬間だけ、どこか愛しそうに、自嘲のように笑う。
 あの日、ただ些細な出来事で、彼が千年杖と呼ばれる道具に触れた時、目覚めた3000年前の彼。
 何もかもの終わりが近づく中で、現れ、しかし、無力になにもできない存在。

「俺は、とっくに死んだ人間だ……千年宝物もない今、放って置いても、こいつや、王のように留まらず、すぐに消える」

 だから、見逃してくれと、言った。
 静かな、どこか透明な彼は、とても柔らかく、少年の背を撫でた。
 その様があまりにも儚げで、嘘がないことを表しているようにも見える。

「セ、ト……」

 少年の薄い唇が名を呼ぶ。
 答えるように彼は、目を細め、また唇を開いた。
 遠い、遠い異国の、遠い、遠い頃の歌。いつか歌われた子守唄。
 それは、遠い過去の少年を落ち着けるために紡がれたのだろう。
 遊戯は、しばらく黙ったままその歌に耳を傾け、そして、背を向けた。
 何も見なかったかのように。


「感謝する」


 決して、本来の彼であれば口にしなかっただろう言葉。
 それすら聞かないフリをして、遊戯は歌が遠のくのを聞いていた。



 つつつつつついに闇セト未遂をやらかしてしまいました。
 某神のマンガを見て、つい。
 えっと、闇セトとは、3000年前の神官様の魂が、社長の体を借りて現代に居座ってる状態です。
 闇バクラ、闇遊戯と同じ状態と思っていただいてかまいません。
 今回は、どこにも誰にも続かないので、杖なしで、いつか消えていく亡霊ということで、一つ!
 続きません、続きません。
 そして、セト様の美化が激しすぎて訳がわからなくなりました。セト様は、社長よりもテンションが低く、穏やかで、まっすぐな正義の味方です。
 後、亡霊で未練とか、その辺りなので色々薄いということで、一つ!(おい)
 まあ、セト様と社長の大きな違いというと、セト様は自然にバクラを甘やかせて、それを恥ずかしいと思っていないのと、社長は若いからバクラにいやらしいことしたくて(おい)かつ、他人に甘やかしてるところを見られるのを屈辱だと思っているとことです。
 ゆえに、あのときセト様が恥ずかしがったり動揺しなかったので、遊戯は確信したよーっという裏話も。
 俺、マジキモい><
 ちなみに、バクラはセト様だって、気づいて、縋って「もうどこにもいかないで」っと泣きつかれて寝てしまいました。



 こんなオチもいれておきますね↓
「というか、さっきからもう一人の僕、うるさい!! 男の嫉妬は醜いよ!!」



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