騒音の響くゲームセンター内。
 ガチャガチャと、白熱した戦いを目の前に、二人の少年は溜息をついた。 

「うげ!! てめ!! その技は反則だろ!!」
「冗談はやめとけよ。この技は、この、キャラの得意技だぜ!」
「だとっ!!」
「かっ角でハメるのは反則だぜ!!」

 向かい合う対戦用格闘ゲームを挟み、身内が罵りあう光景。
 あまりにも見慣れた姿に、少年たちはただただ呆れることしかできなかった。
 ゲームの画面の中のキャラの攻防はひどく高レベルで、まさに一進一退、ギリギリの勝負を繰り広げ、どちらが勝つかわからない。
 どっちが勝ってもいいので、早く終らないものか、二人がそう思い始めた頃、ふっと、片方の少年が思い出したように口を開く。

「そう言えば、獏良くんたち、さ来週の日曜日空いてる」
「ん、うん?」

 なんで来週ではなく、再来週なのだろうかと首を傾げ、そして思いつく。

「ああ、天音の」
「うん、前日」

 納得したような表情で片方の少年は頷いた。 
 そして、次の瞬間、苦笑いを浮かべる。

「天音をデートにでも誘ってくれるの?」
「そう思う?」
「全然」

 少年は苦笑いのまま首を横に振って、聞いた。

「もしかして、映画だとか、遊園地とかの、ペアご招待券があるとか?」
「ちょうどね、うん、その日、指定席でパレード見れる券、あるんだ……」
「……また、渡せなかったんだ」
「うん、また。ちょうどあるから、いこうって」
「うわ……普通、あのパレードは男同士で指定席行こうと思わないよね……」
「今年こそ、渡してくれるかとちょっと期待したんだけどなー」
「無駄だったね……」

 二人の哀れみの視線が、ゲームを挟んでいる相手に向けられた。
 当の本人は気づかず機体を壊すのではないかというほど激しい手さばきを見せている。

「前は、プラネタリウムだっけ?」
「うん、キレイだったけど、男二人で普通は行こうなんて思わないよね」
「それも、4人で行ったね……」
「本当に、他の人には無駄なくらい素直なのに、天音ちゃんにだけはダメなのかなー?」
「天音だから、だめなんだろうね……まあ、天音も人のこと言えないけど」

 溜息とともに、少年は制服の裾をまくった。
 その白い腕に、少々不釣合いな銀色のチェーンが二つ巻かれている。
 しゃらんっと揺れるチェーンはその少年が身に着けるよりも、隣の少年の方が似合っている気がした。ひいては、その少年に似た、もう一人の少年に、っということでもある。 

「コレ、3つに、増えなきゃいいんだけど……僕に似合わないしさ……」
「そうだね……」
「遊戯くん、いる? 遊戯君の方が似合うし」
「ううん、いいや」
「……天音にもらえるのは嬉しいけど、他人の為に買ったものだと思うと……ね」

 少年が今度は哀れみの目を自分の妹である少女に向けた。
 しかし、やはり当の本人は気づかず機体を壊すのではないかというほど激しい手さばきを駆使している。

「本当に、似たもの、ってやつだよね」
「そうそう、周りから見れば、素直になればいいのに、って思うところも」
「来年も、4人一緒に映画とかだったら、どうする?」
「それは、避けてほしいなー……でも、2人だけで行かれるのも、むかつくよね」
「だねー」
 
 二人は、もう一度同時に溜息をつくと、立ち上がってガッツポーズする相手を見た。
 悔しそうに地団太を踏む少女を見て、片方は慰めるために、片方は早く帰ろうと促すために壁から離れる。
 そして、同時にこう口にするのだ。

「ああ、そうそう、さっき獏良くんを誘ったんだけどね」
「ああ、そうそう、さっき遊戯くんから誘われたんだけどね」

 二人は、まるで予定調和のように気まずい顔をして、

「相棒がそう言うなら……」
「兄貴がそういうなら……」

 っと不機嫌そうに呟く。
 そして、少年たちが顔をそらした瞬間、ひどく、ひどく嬉しそうな顔をする。
 心のどこかで、期待していた通り。
 あまりにも、当たり前の、予定通り。
 それに気づく少年たちは、それを呆れながらも、どこか安心する。



 願わくば、来年こそはと思いつつ、来年もそうであれと、寝返ってしまうのだ。




 ツンデレ×ツンデレ。
 どうしても素直になれない二人。
 送るはずだった誕生日プレゼントはたまるばかりです。
 とりあえず、王様は、天音と二人でどこかに行こうと、天音は、王様にシルバーをプレゼントしようとしています。
 しかし、できずに結局相棒誘ったり、宿主様にあげたり。
 そんな繰り返しが嫌だけど、心地いいような。
 説明しないとダメな小説しかかけません!!



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