不思議だよねっと少年は言った。

「最近、あのときのことが夢のように思えてくるんだ。
 なんだか、全部、本当になかったことみたいにぼんやりして、ねえ、君はちゃんと覚えてるよね」
「うん」
「そうだよね。忘れるはずないよね。忘れられるはず、ないよね」
「獏良くん?」
「過去は修正されたんだよね」
「?」
「でも、君たちの話を聞いてるとね、僕は本当にそうかなって思うんだ。
 なにかがひっかかる、おかしいと思うんだ。ねえ、もしかして、君たちは」


(過去を修正したのではなく、改変したんじゃないのかな)


「改変?」
「そう、だって、本当の、僕たちに繋がる歴史は、もう一人の遊戯君、ああ、アテムくんだっけ?
 彼がゾークを封印して、死んで、パズルを砕いたというものだよね」
「うん」
「でも、パズルは砕かれずその、えっと、海馬くんの前世に渡された。
 勿論、アテムくんはその中にいない。だって、冥界に帰っちゃったから、そうすると矛盾ができるよね。
 だって、君はパズルを組み立てることができないのに、パズルを組み立ててアテムくんとであってしまっているんだから」
「え、ちょっと待って」
「それは、僕もそうだ。アイツは消えて、ゾークを倒して、千年リングに、アイツは宿らない。なら、そもそも僕はアイツどころか、千年リングにすら会える訳が、ない。
 なのに、その事実だけは僕たちの記憶の中にある。おかしいよね」
「ねえ、それって……獏良くん……」
「最近、あのときのことが夢のように思えてくるんだ。
 なんだか、全部、本当になかったことみたいにぼんやりして、ねえ、君はちゃんと覚えてるよね」

 少年は悲しい、悲しい顔をした。
 今にも泣きそうに、寂しげに、羨ましそうに。



「ねえ、怖いよ遊戯君、僕はいつか全部、全部忘れてしまう気がするんだ。過去の辻褄あわせがやってくるような気がするんだ。
 そして、僕はアイツもアテムくんも忘れてしまって、それでも、それがこんなに苦しいと思うことすら忘れて、怖いことすら忘れて、笑ってしまう。そんな気がするんだよ」



 怖い、怖いよ遊戯君。
 震えながら少年は、それでも、どこかおぼろげに、虚空を見ていた。



 過去を変えるに至ってよくあるパラドックス。
 説明がわかりづらくてすみません、まあ、簡単に言うと、「過去に戻って自分を殺したら、未来の自分はどうなるのか」という感じです。
 色々なはじまりのはじまり。
 現代転生パラレルの前フリ。書きたいです。



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