「あい、してる」
サロメ様は王の嘘つきな舌を噛み千切ってやろうかとお思いになったのです。
がちん
からぶった白い歯がかち合って音をたてる。
王は唇から柔らかな舌を少しだし、驚いたような少しマヌケな表情で盗賊を見た。いまだ相手唇の感触も残る唇を噛み千切られかけた舌で舐め、少し呆れたように溜息。
盗賊はその表情を見られると、不機嫌そうに舌打ちをする。
「なにをするんだ」
「てめえがうるせえから、少し静かにさせてやろうと思っただけだぜ?」
「うるさいとは心外だぜ、ちょっとした睦言だろ?」
「それがうるせえっつーの」
盗賊は汗に塗れた裸身を起し、王を睨んだ。
情事の痕を濃く残す様はそれは美しく艶かしいため盗賊の睨みはまったく怖くない。
どころか、それは王の嗜虐心をくすぐるだけでしかなかった。
王は盗賊をもう一度寝台に押し倒すと、アゴを掴み唇を奪う。次は噛まれないように強く頬を抑え、舌でアゴの裏を舐め、舌を絡めた。
ぞくりとくるような舌使いに翻弄されないよう盗賊は王の目を睨みながら舌を絡め返した。
ただ艶っぽいものではなく、どちらかといえば勝負のような雰囲気を漂わせながら長い口付けは続く。
触れ合う肌と肌は汗のせいかしっとりと触れあい、
不意に、王の手が盗賊の腰をなぞり、足へと伸びた。
盗賊は責めるように軽くその肩を叩いたが、王はむしろ口内を激しく荒らし、誤魔化そうとする。
しかし、もうその誤魔化し方にはなれているのだろう、盗賊は肩を掴んで爪をたてた。
「いたい」
「痛くしてんだよ」
遠ざかる唇から唾液を滴らせながら王は不満そうな顔をするが、盗賊の方が更に不満そうだった。体を突き放すように腕に力を込める盗賊に、王は触れ合う肌を申し訳程度に離し、代わりとばかりに額に口付けを降らせる。
身を捩ってよけようとするが、それはただ口付けの場所を変えるだけでしかない。
「今日は、無駄にしつこいぜ、王様」
「たまにはな」
クスクス笑いながら、再び肌を合わせ、足へと伸ばした腕を軽く付け根を撫でるように動かした。
びくりと口付けの余韻の残る体が反応する。
快楽に慣れた体はすぐさま熱を上げ、中心は頭をもたげた。
「やめろ、俺様は帰る」
慌てて強く突き飛ばすものの、王は止まらない。
顔の角度を変えて盗賊の耳を甘く食んだ。
「まだ、太陽は昇ってない」
「ん、ヤってたら、昇るだろ」
「だったら、さっさと終らせるか」
「おい、やめろって……ひゃっ」
王は指を付け根から下にズラし、指で濡れたそこをこじ開ける。
盗賊は身を強張らせ足を閉じようとしたが少しだけ遅かった。
するとどろりとまだ王の名残が残るそこは簡単に指を飲み込み、水音をたてる。
ゆるやかに指を抜き差しし、指を馴染ませながら舌は徐々に耳から輪郭を伝い鎖骨を舐めていく。
「あっ、待て、く、くちでする」
これ以上されてはたまらないと掠れた声で盗賊は訴えたが、王が許すはずもない。胸の突起に歯をたて、舌で愛撫し続ける。
盗賊の内の一番敏感な部分をこすり、無意識に足を開かせた。
いつもとは違う柔らかな快楽に、盗賊は声を殺しながら身悶える。
すっかり激しい行為に慣れきった体にはあまりにも物足りない。けれどそれを口に出すわけにもいかず腕を噛む。
「やめやがれ……明日、たてなくな……はぁ……」
「気絶するまでヤっても大丈夫だっただろ?」
「それとは違、う」
盗賊の体から口を離し、王は片足を持ち上げ、肩にかける。
「てめ、人のはな、し、きいて」
「ない」
きっぱりと即答され、盗賊はなにもかも嫌になるようなだるい感覚を覚えた。
指が一度弧を描くようにかき混ぜられ、内部をひっかくと引き抜かれる。
「いれるぜ」
さきほどまで自分の中に入っていた指を嫌がらせのようにアゴにすりつけられ盗賊は顔をしかめた。その指に絡む白は王の名残だろうとわかってしまう自分に盗賊は泣きたくなる。
王のモノがあてがわれ、体が強張った。
けれど、どこか期待している。貫かれる熱さを、揺さぶられる激しさを。
先ほどまでのゆっくりした快楽ではなく、苛烈なまでの刺激を。
「やっ」
それでも、必死に抵抗する。
抑えられた足をバタつかせ身を捻ることで逃げてもみたが、間接を本来曲がらない方へ捻られ無駄に終った。
そして、先端が入口を押し広げた。
眩暈がしそうな痛みと、無意識に受け入れようと痙攣する体に涙が零れる。無理矢理息を整え、唾液を飲み干す様は躾けられたとしか言いようが無い。
「あ……う、ち、く……しょ……!」
喘ぎながらもシーツに爪を立てて悪態をついた。
いつもならば強く突き上げてくるはずの腰が、今日は本当に小さく、丁寧に推し進めていくのが妙に気に入らない。
目を閉じて零れる涙を好きにさせながら王の熱さや質量をまざまざと感じた。
「ひっく……あ、な、ん、で」
いつもならばとっくに揺さぶられてもおかしくないというのに、まだ追うのモノは根元まで到達してもいない。
じんわりと王の形に広げられた内部がひくりひくりと蠢いた。
「なにがだ?」
「なぁ、んで……う、とっと、と……やんね……んだ」
「ああ、お前が明日立てなくなると言ったから、優しくしてやろうと思ってな」
「よ、けー、なっ世話だはぁん……」
じりじりとやっと、お互いの足の付け根は触れる。
盗賊は大きく溜息をつき、強く王を締め付けた。
どくどくと他人が中で存在を主張する。
「さっさ、と、終らせっ!」
ろ、っと言う前に腰が引かれた。
今度は、少し早い。
ただ、いつもと比べるとやはりまだまだゆっくりと言わざるをえない。
熱の行き場のない感覚は胸の奥でわだかまって不快だった。
「よ、よが、」
空気を強く吸い込みながら盗賊は訴える。
「よが、あけるから」
それは、文句のようでありながら、どこか言い訳のようだった。
「あけるから、はやく」
もっと、はやく、もっと、はげしく。
そう、盗賊は求めた。
焦らすなとばかりに肩にかけられた足に力をこめ、腰を動かす。
それは、十分な誘いとなって王には届いた。
「そうだな」
王は笑って、盗賊のもう片方の足も持ち上げ、ぐいっと盗賊の胸へと押し付ける。
そして、抜ける寸前まで腰を引き、打ち付けた。
いつもの激しさと荒々しさを持って、盗賊の体を貪る。中に吐き出した自分の名残をかきだし、かき混ぜる。
「ひゃああ!! ん、あああ、うう!! あお、ぅあ!」
盗賊はそれを悲鳴にも似た嬌声をあげて受け入れた。
熱が体の中心に集まり止らない。
一番イイところを突き上げられ、思いっきり締め付ける。
「まだ、きつい、な」
「ひぃ、あぐ、あ、うああああ、ん!! い、くうう!!」
待ち望んだ強さに視界が眩む。
盗賊は前に触れられることなく達し、中をびくりびくりと小刻みに痙攣させた。
だが、王の腰はうがち続ける。
「い、や! な、あっな、あか、!」
「イったら、敏感になるんだろ?」
わかってるとばかりに王はその足をさする。
「でも、俺はまだイってないぜ?」
お前だけがイって終るわけがないと知っているだろ?
そう問いかける声に答えることもできず盗賊は翻弄される。
「はっはや……っくい、いっちまええ!!」
盗賊の叫びは、空しく響いた。
王は散々盗賊の内部を掻き乱し、蹂躙していく。
いつしか盗賊は嬌声をあげるだけの物のように王にしがみついて声をあげた。
力の篭る手を、王はひどく愛しく思う。
「あい、してる」
思わず零れた言葉はうまく盗賊の耳には届いていなかったようで反応は無い。
もしも、届いていたらどうなっていただろうか。王は今度こそ舌を噛み千切られるかもしれないなっと思いながら体を縮める盗賊の顔をあげさせ唇を奪った。
そして、お互いの行為に夢中になっている二人は気づかない。
すでに夜の帳は打ち払われ、太陽は昇り始めていることを。
二人にとっての夜明けは、もう少し先のことである。
いちゃいちゃエロが書きたかったんです(ぇー)
ちょっと雰囲気を変えてみたので、連作気味からは外してみました。別に連作気味でもよかたんですが。
しかし、最近の王様の鬼畜っぷりはちょっとかわいそうなくらいだったので、もう少し甘くを目指しました。
今回は焦らしプレイです(おいおい)
放置じゃなくて焦らし、わざとゆっくりすることで相手に誘わせる!!
あっあれ、やっぱり鬼畜?