お前は誰と鏡の向こう側が聞いた。
 俺は誰と鏡のこちら側が聞いた。
 二人はそっくりなようであちこちがまるで出来損ないのように違いすぎたので、初めお互いが鏡であるかなんて気づけなかった。
 しかし、じっと見ているうちに気づいた片方は手を伸ばした。
 同時に、もう片方も手を伸ばす。
 まったく同じ動きでありながら正反対の手で鏡の表面に触れた。
 ひやりとした鏡の表面に、不思議そうに首をかしげる。
 ふっと、片方がその鏡の正体に気づいた。



「これは闇だ」



 呟いて、同時に驚く。
 なぜなら、鏡の向こう側は唇を開けてすらいないのだ。これが鏡であるならば、向こう側もまた気づき、呟かないとおかしい。
 しかし、向こう側は気づきもしなかったという表情でじっとこちら側を見ていた。
 今にも、泣きそうな表情。

「変わってしまったのか?」
「変わらなかったのか?」 

 向こう側が呟けば、こちら側も呟いた。

「変わりたくはなかった」
「変わりたかった」

 震えるような声。

「俺様はずっと、復讐に囚われていたかった」
「俺様はずっと、想いに溺れていたかった」

 お互いが瞳をそらさずに。

「俺様は、王様を憎んでる」
「俺様は、王様を愛してる」

 そのままの向こう側は、責めるように。
 闇を通したこちら側は、確かめるように。

「復讐の為に、ここまでやってきた」
「もう一度会いたいから、ここまでやってきた」

 正しくそれは鏡であった。 

「俺様は、王様を殺したい」
「俺様は、王様を殺したい」

 そっくりでありながら正反対。
 闇を通した向こう側。
 そうっと、こちら側が指を折る。
 すると、鏡を抜けてその指は向こう側に触れた。
 向こう側は驚くことなく見ていた。
 白い指と、褐色の指が触れる。
 温度は無かった。
 いや、あったが、あまりにも同じすぎてわからないのだ。
 そのまま白い指は褐色の手を握った。



「嘘つき」



 っと、こちら側が罵った。

「変わってしまったのはお前だ」
「変わりたかったのはお前だ」
「想いに溺れたかったのも、王様を愛したのも、もう一度会いたかったのも、全部」
「お前なんだよ、盗賊王」
「俺様は闇を通して保存されてしまった」
「復讐に囚われたのは俺だ。王様を憎んでいるのは俺だ。復讐の為にここにきたのも、全部、俺様だ」
「ああ、俺様はお前の望みどおり、変われなくなってしまった」
「もう俺様はもう人じゃない。ただの闇を通した装置に変わってしまった」
「人であるものか、人は3000年も同じ思いを保存して生きてはいられないのだから」

 戸惑う向こう側の腕を掴んだまま、こちら側は引き寄せた。
 闇を通り抜けて、3000年の時を刻んでいく。

「闇のゲームが始まるぜ。もう俺様もお前も夢ばかり見てはいられないんだ」




 また例のアレな小説です。
 もう、皆様に一々ツッコミの手間をかけさせるのが嫌なのでやめました!!
 管理人としては、最初はヘコみましたが、そろそろお約束すぎて楽しくなってきたのですが、皆様の親切やお手間を楽しいと感じるようになっては人間としてダメなので。
 最初はバク盗だったんですが、やめました。自分の文才のなさに絶望したので……(バク盗は! もっと! ステキなんだ!!)
 うちでは基本、盗賊王=闇バクラなのですが、バク盗だった名残で≠になってます。
 闇バクラは、考えてみればかわいそうだなっと、盗賊王でもなければ、完全にゾークでもない存在って、すごく中途半端ですよね。
 ただ、復讐と王様を殺すため、邪神を復活させるための装置というようなものなのですから。



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