1、バクラが女の子で、獏良の妹の天音です。
 2、王様は17歳、獏良と同い年で同じクラス。
 3、天音ちゃんが7歳の幼女です。
 4、王様、ロリ疑惑濃厚。
 5、ギャグと見せかけて、やっぱりギャグです。
















































 ずっと会いたかった。
 待って待って待ち続けた。
 3000年に比べれば短いかもしれない。
 それでも、ずっと恋焦がれて待っていたんだ。

「それなのに……」

 彼は思わず天を仰いだ。
 今ならラーだろうが、オシリスだろうがオベリスクだろうがに祈りたい気分でいっぱいである。しかし、祈っても無駄なのでやめた。
 溜息一つとともに、自分の腕を見下ろす。自分の手、自分の足、自分の体。せっかく、やっと手に入れたというのに。
 悲劇か、あるいは喜劇か。
 しかし、彼は立ち止まらない。
 嘆いていてもしかたなく、そして行かなくてはいけない場所があるからだ。
 前へと視線を向け、時計で時間を確認する。
 覗きこんだ建物のその奥に、待ち人はいた。
 この場合、待ち人と形容していいかはわからないが、ただ、待ち人を見つけた瞬間、彼は笑う。

「バクラ」

 愛しい、世界中の愛しさを込めた声。
 恐らくこんな声で呼ばれれば、たいていの女性がうっとりとしてしまうだろう。
 その声に呼応して、バクラと呼ばれた相手も振返った。笑う。無邪気な、無邪気な一点の曇りもない愛らしい笑み。
 二人は、少しだけ見つめあうと、だっと、走り出す。

「バクラ!!」
「アテム!!」

 彼は腕を広げ、相手を受け入れ、相手はその胸に縋りつく。
 今、世界にはたった二人だけ。オンステージ。まさに、恋人同士の感動の再会シーンだった。

 

 ただし、片方が、10歳にも満たぬ小学生の少女でなければ、の話ではあるが。



 外見年齢的に言えば、約5歳。実年齢的に言うと10歳年の離れた二人は、決して恋人同士に見えない。
 兄妹には見えるが、あまりにも彼がいい笑顔を浮かべすぎているので、見る人が見れば犯罪にしか見えなかった。

「…………」

 そして、その光景が犯罪に見える一人の少年が、すっと携帯を取り出した。
 迷い泣く耳にあてる。
 はっと気づいた彼は少女を抱きしめたまま叫ぶ。

「はっ!! ばっ獏良くん!?」
「…………もしもし、警察ですか、うちの妹が怪しい男に……」
「誤解だ!! 俺たちは愛し合ってる!!」
「あー、りょー兄、迎えにきてくれたのか?」
「うん、そうだよ。さあ、アテムくんには赤いランプのお迎えがくるから僕と帰ろうか」
「うん!!」

 するりと彼の腕から抜けた少女は、今度は自分の兄に縋りついた。
 赤いランドセルを背負い直し、彼に抱きついたときよりも嬉しそうに笑う。

「バクラ!!」

 彼は、目に見えて足を崩し、よろよろと腕を伸ばす。
 さっきまでの雰囲気はどこへやら、少女は兄にひっつけてご満悦だった。この世に、兄よりも愛しいものの無い表情。
 兄はそんな妹の頭をいつくしむように撫でながら、彼を冷たく見つめる。

「天音、大丈夫? 変なことされなかった?」
「してないぜ!!」
「んー、されてない」
「そう、よかった。変なことされそうになったら前にあげたスプレー使うんだよ。ためらわず」
「おう!!」

 いいお返事にがくっと彼は肩を落とす。
 まだいまいちなにもわかっていない少女は、とにかく兄のいう事を聞くことに必死で、彼への配慮は考えない。というよりも、配慮できるほどの思考は発達していないとも言う。
 そもそも、この世で兄が一番正しいと思っているのだから、兄が言う事は絶対だった。それでも、一応、近づくなと言われている彼に好意的な面を向けていることから救いはあるのだが。

「後、ブザーの使い方もわかるよね、2個あるから、一個引いたら投げるんだよ。助けを求めるときは「火事だー!!」が有効だからね」

 まだまだ続く講座に、彼は思わずサレンダーしたくなってきた。
 したからどうなるということはないのだが。
(さすがの俺だって、7歳には手を……)
 ちらりと少女を見れば、少女は笑って手を振る。
(……手を………………かわいいぜ……)
 そう考えた瞬間、兄の視線がますます冷たく、きつくなったような気がした。
 彼は、少し反省する。
 
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

 長々と続いた講座が一通り終った頃、少女と手を繋ぎ兄は彼に手を振った。
 なんだかんだ言っても、無視しないところが友達らしい。
 彼はすっかり力なく手を振りながら、立ち上がる。
 
「あっりょー兄、待って」

 ぱっと少女は手を離すとてこてこと彼に近づいた。
 それくらいならいいだろうと兄もほほえましく見守っている。
 少女は立ち上がったアテムがかがむように手まねきした。その感覚は、彼が初めて得るもの。
(前も……その前も俺の方が低かったからな……)
 なんとなくしみじみ思いながらも屈む。
 その耳元に小さな唇を寄せ、少女は囁いた。



「もっと焦れとけ、俺様はもっと待った」



 「え?」っと呟く前に顔は離れ、一瞬だけ無邪気な笑顔が見覚えのある顔になっていた。
 目の錯覚かと瞬きしただけで、その面影すら残らない。
 笑いながら、小さな手を振った。

「ばいばい、王様」

 スカートと赤いランドセルをひるがえし、少女は兄へとまた戻っていく。
 置いてけぼりにされた彼は、ただ、先ほどの声が、表情は幻覚ではないかと困惑するばかりだった。



 王様と幼女。
 約束は果たしましたよ!! と、言いつつなぜか続くっぽくなりました。続きません、恐らく。
 転生天音ちゃんはついに幼女になって、王様ロリコン疑惑です。7歳なのに魔性の幼女。記憶はあるのかないのか……。
 そして、王様の限界はいつまで持つのか。いつ警察に捕まるのか。楽しみですね
 いや、たぶん、続きません。


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