遊戯君、一つ戯言を言ってもいいかな。
嘘だと思ったら忘れてくれてもいいんだ。
あのさ、もう一人の遊戯君――ああ、アテムくんだっけ?
彼があの日、光の中に消えた日の話なんだ。
最後まで聞いてから笑ってね。
あの日、光の中へ帰っていく彼を見送っている時、僕の中から誰かが飛び出したんだ。
背中しか見えなかったから、誰かはわからないよ、ただ、背が高くて、おじいさんみたいな白髪の男だったと思う。
なんだか、男の背中を見てると、切なくて、懐かしくて、寂しくて胸が締め付けられたんだ。
男はね、閉じかける扉に向かって走っていったんだ。何か叫んでたかもしれないけど、聞こえなかったな。
皆、何も言わなかったから見えないんだなって一人で納得してたんだ。
それでね、男は光の中に飛び込もうとするんだけど、扉は残酷でもう少し、後少し、そう、一歩ほどの距離で届かなかった。
届かないはずだったんだ。手を伸ばしても、男は扉に指先すら触れられないはずだったんだ。
でも、扉の隙間から手が伸びてたよ。
そして、男の手を握ったんだ。
そのまま、男は腕に引っ張られて、扉の向こうへ消えちゃった。
光が眩しくて手の持ち主はわからなかったし、男の表情もわからなかったけど。
なんでかな……僕は、その手が、アテムくんの手に思えたんだ。
あの男は誰だったんだろうね。
知らない人のはずなのに、まるでずっと隣にいたみたいに知ってるような変な気分がする。
そのことを思い出すと、胸にね、ぽっかり穴が開いた気分なんだ。
あれ、遊戯君。
遊戯君泣いてるの?
どうして泣いているの?
僕、変なこと言ったかな。ごめんね。泣かすようなこといっちゃってごめんね。
え、「ありがとう」? なんでそんなこと言うの?
変な遊戯君。
僕の言ってることなんて嘘かもしれないのに、夢かもしれないのに。
だって、だって、そんな都合が良すぎるよ。
そんな御伽噺みたいな話、あるわけないよ。
ねえ、遊戯君、泣き止んで。
最終回ネタで虫がいい話を……。
だっだって、王バクファンとしては、やっておかないと!!
だって、光の向こうにバクラがいなかったんですよ!!
このサイトでは、バクラ=盗賊王です。そして、最終的にはゾークと盗賊王は融合(あるいは吸収)されてしまったというイメージですが……。
あの、バクラです。宿主の中に予備を、ストックを、生命線を残していたっていいじゃないですか!!