まだ見えぬ未来で僕らは多くの人とすれ違い
 そして本当に愛せる君にいつか出会うだろう。
 君はどの糸たぐり僕と出会う?





「お、さまあ……」

 ずるずると、血まみれの男は、這いずる。
 瓦礫と死体の中で、たった一人を見て、呼ぶ。
 決して、もう二度とこちらを見ることも、呼ぶこともない相手を。
 霞む視界、すでに痛みすら遠くなった身体を引きずり、その少しでも近くに行こうと手を伸ばした。
 地面を引っかきはがれた爪から血が溢れる。
 それでも、まだ届かない。

「おう、さ……っ」

 呼ぶ声も、吐き出した血によって濁り消える。
 自分は、もうすぐ死ぬだろうと男は知っていた。
 知っていても、動かずにはいられない。否、死ぬからこそ、今動かなければいけない。
 死ぬ前でなければ、いけなかった。そうでなければ、これほど素直にはなれないと知っていた。

「ぁ……」

 がらがらと、未だ崩れ続ける天井が求める相手を隠そうとする。
 急がなくてはいけない。けれど、体は言う事を聞かず、距離を縮めてはくれない。
 ざりりと指先は土を引っかくだけで進まない。

「お、ぁ……!」

 ごぼりっと、呼ぶたびに口からは血が溢れた。
 もう、思考する隙すら男には残されていない。
 ただ、目の前だけを。ただ、目の前の思いだけを目指した。
 そして、ようやく、指先がその体に触れる。
 それだけで、よかった。
 男は、そこでやっと体の力を抜くのだ。
 それ以上は、一歩も求めず、安心したように、満足したかのように表情を緩めた。
 愛しい、愛しいと告げる顔。
 恐らく、それは男の人生において最も美しい表情だっただろう。
 血まみれで、今にも死にそうだと言うのに、美しい笑み。
 その笑みを向けて、男は最期の言葉を紡いだ。
 今出なければ、決して紡げなかった言葉。伝えられない言葉。


「あい、してる……」
 (おうさま、あいしてる)


 次で会おう。
 また、会おう。
 今は死に朽ち果てるけれど、次があるから。
 次は、もっと、もっとうまくやろう。
 たぶん、無理だけど。
 俺様もあんたも不器用だから、ヘタクソだから無理だろうけど。
 次は、もっとうまくやろう。
 また、会おう。
 次で会おう。
 愛してる、愛してる、あいし



 崩れる瓦礫が男を埋める。
 男は、笑みを浮かべたまま、その命を静かに手放した。
 誰も知らない一つの最期。
 誰も知らない最期の言葉。
 恐らく、次でも紡がれることなく消えるだろう。
 それでも、次はやってくる。
 時間が巡り、人が代わり、舞台は整う。
 そうして、不器用でヘタクソな二人は再会するのだ。





 僕は踊り続ける。
 君が僕を見つけてくれるまで。
 この体朽ち果てても、この生命届くのなら。
 
 遠い記憶の中で君が呼んでる。



 ナナ●ジカのTa-lila ●を見つけてはどうきいても王←バクソング。
 涙が出ます。
 というわけで、衝動的に嘘の歴史を捏造する。恐らく、ゾーク介入前の歴史。
 結局、最期でもないと人は素直になれないよっという話。
 バクラは本当に、不器用でヘタクソだと思います。
 なにがと言われれば、生き方と愛し方が。



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