夢を見た。
心の部屋にバクラがやってきて、俺はそのバクラを捕まえる夢だ。
捕まえたバクラには体温がなかった。
それでも、ちゃんと動いて、声を出して、暴れて、叫んで、嫌がった。
きつく睨まれてくらくらきた俺は、迷わずその唇に噛み付くのだ。
決して閉じないお互いの瞳が睫を数えられそうなくらい近くて歯止めがきかなかった。
俺はただただ子どもみたいにバクラの名を呼んで、その体に触れた。
冷たいけれど、感触はある。
白い肌、華奢な四肢、骨と皮ばかりの体を抱きしめて口付けた。
慌てて暴れるバクラを押さえつけて、とにかく、俺は本能のままに体をまさぐった。
びくびく反応するバクラが愛しくて、苦しい。
夢でなければ決して触れられないバクラ自身。
俺を罵倒して、髪をひっぱるけれど、知ったこっちゃ無い。
とにかく、触りたいのだ。
狂ったように好きだ、愛してると伝えると、顔を真っ赤にして大人しくなった。
それでも、待て、待てと言ってくる。
「王様こええよ」
軽口の笑いの中に震えが入っていたので、さすがに俺も止まる。
飢えすぎだ。
改めて俺はバクラに向き直ると、口付ける。
「触ってもいいか?」
っと、自分でも驚くくらい切羽詰まった声。
バクラはやれやれっという顔で、腕を広げた。肯定の合図だ。
今度は慎重に冷たい肌を触って、ゆっくりと指を馴染ませていく。
最初は明確だった境が、触れていく内に赤みが差し、さらさらとした触り心地だった表面が、汗のせいかしっとりしてきた。
その肌に口付け、舌を這わす。
胸から腹へと何度も舌を往復させながら、反応をうかがう。
身を震わせながらも、決して拒絶の動きは無い。
だから、調子にのって下半身に手をかけた。
細身のジーパンを下着ごとずりおろすと、さすがにいきなり敏感な部分が大気に触れたせいかぶるりっと震えた。
「王様、落ち着け」
そう聞こえたが、待っていられない。
この夢は、いつ覚めるかわからないのだから。
俺は硬くなりかけたソレを握って上下に扱かう。
それだけでそこは硬度を持ち、ぬるりとした液体を零す。
「お、さま」
上半身を起き上がらせて、バクラが俺の下半身に触れた。
情けないことにもうすっかり勃ってしまっている俺の固さに驚いたのか、バクラは苦笑。
それでも、片手で器用にズボンの前を開くと、そこに手を滑り込ませた。
お互いのモノに触れあい、口付けるために顔を近づけた。
今度もバクラは目を閉じなかったけれど、素直に口を開いて、舌を積極的に絡めてきた。
その感覚が妙にうまくて、色々問い詰めたかったが、そんな暇も惜しい。
腰と腰を近づけて、お互いの晒されたものをくっつけて、お互いの手で握る。
水音と、同じ硬さのモノがひっつく感覚に酔いながら夢中で口付けを繰り返した。
少しでも、多く、深くひっついていたくてたまらない。
「ん、ふっ、ぅ……」
息と一緒に漏れる声がますます俺を煽ってしょうがない。
ああ、ずっと、ずっと、ずっと、こうしたかった。
借り物の体という障害がなくなれば箍は粉々に壊れて、理性なんて言葉はどこかへ飛んでいく。
それはバクラも一緒らしく、いやらしい顔で俺に唇をねだる。
快楽に頭の芯を痺れさせ、手の動きを早めれば、限界が近いのか、潤んだ瞳から涙が零れた。
「お……ん……さ、……んん、い、い……く……」
口付けの合間にそう告げられ、握る手を更に強くした。
ぐらぐらとぶれる視界が、一瞬だけ白く染まったとき、お互いはお互いの手の中に欲望を吐き出していた。
ふらふらとバクラは揺れると俺の肩にぐたりと倒れてくる。
手が汚れていたので一瞬ためらったものの、ぎゅっと抱きしめて押し倒した。
胸元に直接耳をひっつければ、どくどくと心臓の音が聞こえる。
ああ、ここにいる。
また、俺はバクラの名前を呼んで、足にひっかかっていたズボンを奪うと開かせる。
細い足首は、強く握れば折れそうだった。そのまま、足を辿って付け根に行けば、先ほどのモノでどろどろに汚れていた。
じっと、下半身を見下ろせば、見るなと顔を背けられる。
べたべたになった手を潤滑油代わりにまずは一本入れてみた。
苦しそうな顔をしたものの、しっかりと受け入れる内部で指をゆっくりと動かす。
詰まる息や、耐えるような表情、漏れる声が色っぽい。
探るように指を突き上げ、指の腹で内部を撫でた。蠢き締め付け、熱くなる中のある一点を突いたとき、苦しげだった声が一気に甘いものへと変わる。
中心は一気に硬度を取り戻し生理的に溢れた涙が1、2滴頬を伝う。
見つけたとばかりにそこばかり突き上げれば、いやいやと首を振られた。
それでもしつこく突き上げ、二本目の指を入れる。
中心から溢れる液を更なる潤滑油代わりに使いゆるゆるとほぐし、広げた。
快楽と苦痛がない交ぜになった顔はひどくそそる。
いっそ、もう自分をその内部に埋めてしまいたかったが、ぐっと抑えて指を動かす。
開きっぱなしの唇からたれる唾液を舐め上げ、口付けた。ついでに前をいじれば、うまく口に集中できないのか、キスは拙いものに変わっていく。
3本目はさすがに苦しいのか表情を歪ませたが、拒絶はこなかった。
ぐちぐちと水音をたてるそこはすっかり指が馴染みきついながらも柔らかい。
いつの間にか腕をその首に巻きつけていたバクラは瞼を閉じたまま言った。
「王様、こいよ」
いいのかと目で問いかければ頷きが帰ってきた。
あんたも苦しいだろ? っと前を触られ、その通りだと指を抜く。
そこにあてがった瞬間、バクラが身を小さく縮めるのを見て、奥底の獰猛な獣が笑う。
そうだ、ずっと、飢えていた。目の前にこれほどのごちそうを用意されておいてずっと我慢していた自分に拍手を送りたい気分になってくる。
でも、もう我慢しなくてもいい。
無理矢理きついそこを押し広げ、バクラの中に俺を埋めた。
バクラは目を開き、息も吐けず声のない悲鳴をあげる。けれど、俺は止まれない、一気にずぶずぶと最奥まで埋め込んで、そこでやっと腰を止める。
熱く、痛いほどきついそこは蠢き、脈打つ。
居場所を求めるように腕に巻かれた手が背中を彷徨い、強く爪をたてた。布越しでもそれなりに痛かったが、構わない。
大きく息を吐いて、バクラの呼吸が整うのを待った。
正直、今のままだと動かさなくても果ててしまいそうで怖い。
待ち望んだそこはひどく気持ちがよかったし、なにより、俺は興奮していた。
とにかく、俺とバクラが落ち着く為に動きを止める。
ぼろぼろと泣くバクラを見下ろしていると落ち着けそうになかったが、目をそらすことはできない。
はぁはぁと息を整え、背中にたてられる爪の力が抜けた頃、俺もだいぶ落ち着いてきた。
俺を締め付け、蠢く中も馴染んだのか、最初ほどの痛みを伴うきつさはない。それでもきついので、俺はまずゆっくりと抜くことにした。
抜く瞬間きゅうっと締め付けられ、声が漏れる。
「あぁ、お、さまぁ」
甘い声で、呼ばれる。
それが妙に胸をじりじりさせ、その額や目尻、あごのラインに唇を落とした。
最初はゆるやかに、少しづつ早く腰を動かす。
そうしている間中、ずっとバクラは俺の名前を呼んでいた。
まるで、迷子になった子どものような声に俺は髪を撫でたり、声をかけることで答えた。まるで目の前に俺がいないようなバクラのその声は涙腺がゆるむ。
あやすように大丈夫だっと名前を呼ぶことを繰り返した。
青い瞳が開いて俺を見ているのに、見ていない。突き抜けた向こう側を見て、バクラは手を伸ばす。
俺は、ここにいる。
無理矢理目を覗き込んでそう告げた。
ああ、だったらと、だったらとバクラが鳴いた。
「はやく思い出してくれ」
妙に鮮明な声。
その声で、俺ははっとこれが夢であったと思い出す。
腕の中のバクラは俺が思い出したことに気づいたのか困ったように笑った。
そして、そのまま俺の耳元で囁く。
「おはよう、おうさま」
夢だった。
ぱっと起き上がると、夜の闇の中、窓辺に座ってバクラがこっちを見ている。
服の乱れも情事の余韻もないそのままの姿で、困ったように笑うと、聞いてきた。
「どうだった、遊戯?」
俺様のプレゼント。
その声に、俺は一つの可能性を見出す。
あれは、夢であって夢でなかったのではないかと。
「パラサイト、マインドか?」
「そう、俺様自身、分身がなにしたか、なにされたかわかんねえけど、あんまりあんたががっつくから、一度すっきりさせたやろうか……と、え?」
俺は立ち上がって、バクラとの距離を詰める。
そして、そのまま抱きしめた。
自分よりも低い体温。
この衝動は危ういと思った。
今すぐ、押し倒してしまいたい。
「ちょっ! ちょっと待て遊戯、だめ、やめろ!! これは宿主様の体!!」
突き飛ばされて、距離をとられた。
逆効果かよっと、唇を尖らせるバクラに、思わず告げる。
「俺を見ろ、バクラ」
そうすれば、目を見開いて、バクラは俺の向こうを見ながら、
ああ、だったら、だったら。
「はやく思い出してくれ」
分身とそっくりそのまま同じように呟いた。
まだまだ宿主の体という障害は飛び越えられませんが、3000年後でやっとエロれました(どんな動詞だ!!)
今しか見れない王様と、過去を見てるバクラ。
あまりのパラサイトマインドの間違った使い方にお客様の苦い笑みが見えます。
今回は王様視点で、軽く描写重視にしたので、喘ぎ声が少ないのが残念でした(黙れ!)
しかし、何気ない変化ですが、心の部屋では王様、現実では遊戯という分け方をなんとなくしましたが、うまく演出として出せませんでした……。
ところで、これは私の勝手な解釈なんですが、バクラがパラサイトマインドした分身は、バクラに戻らない限りは意思疎通できないんですよね?
アニメではそうっぽかったんですが、どうなのでしょうか。
とりあえず、3000年後の王様はずいぶんと若くてがっついてしまったのが反省点です……。いや、でも、自重しないならこれくらい……。