猫を、見つけた。
白い毛並みに鋭い瞳。野良らしくすりよってくる様子もなく、むしろ近づくと威嚇しくる上に、攻撃までしかけてくる乱暴者。
なぜかいつも高いところから見下ろしてくるから不思議に思っていら、相棒が言うには、猫は高いところに上っているやつほど偉いらしい。気位の高い猫。
(似てる、な)
思わず。
「バクラ」
名前をつけてみた。
妙にしっくりきたので、そう呼ぶことにした。
相棒はやめなよっと言ったけど、気づけば相棒も呼んでる。
「だって、妙にしっくりきちゃって……」
そうすると、おもしろがって城之内くんや杏まで呼び始めた。
なんとなく、コンビニ帰りによく見かけるから餌付けもしてみる。
「アテム、そんなに味の濃いからあげとかあげたらバクラの体に悪いよ」
「でも、バクラはこのからあげが好きなんだぜ」
「ああ、すげえくうよな。前にやったらバクラのやつ、ちょっと近づいてきたんだぜ。意外と食い意地はってるよな」
「やっと手を舐めるようになったんだぜ」
「え、本当?」
「バクラ、すげーアテムになついてるよな」
「おーい、城之内、遊戯、アテム」
「あっ本田くん」
「楽しそうに、何の話してんだ?」
『バクラの話』
「バ……?」
「ほら、あの、白くて目つきの悪いやつだよ」
「白……目つきの悪い方……?」
「そうそう、そいつがやっとアテムに懐いたって……」
「へっへー……」
「王様あああああああ!!てめえどんな噂流してやがる!!
兄貴が「やっと君もアテムくんと仲良くなったんだね★でも、外で指舐めプレイはやめた方がいいよ」って言ってきやがったぞ!?」
「誤解だ!!」
共通の話題を話しているとき第三者が介入すると、共通語を説明し忘れる。
どの辺が王バクかというと、王様がすぐさまバクラを連想しちゃうところです。
本田は目つきが悪いと聞いて、目つきの悪い方のバクラだと勝手に解釈しました。
おまけ的な
青年は、猫の喉を撫でながら、ぽつりと呟く。
「バクラも、このバクラくらい素直だったら、楽なんだけどね」
にゃー
ぴんっと、伸ばされた猫の尻尾がぱたんっと、地面を叩く。
「バクラもそう思う?」
にゃー
「でもさ」
にこりと、青年は笑う。
「まだ、君はアテムくんを、僕はバクラを独り占めしたいよね?」
だから、秘密だよ。
しーっと、人差し指を唇にあてる。
にゃー
青年は、小さな共犯者に、そっと口止め料代わりの魚を差だした。
(雰囲気で書くとだめだと悟ります)