※すごい来世パラレルです。
1、バクラが女の子で、宿主の双子の姉(妹?)の天音です。
2、王様はエジプト人で、デュエリストキングです。
3、王様が自重してません。
4、何故か海馬とバクラが付き合ってます。
5、ギャグと見せかけて、やっぱりギャグです。
以上大丈夫な方だけどうぞ!!
どうか。
どうか、次があるならば。
どうか、過去の記憶なんか消してください。
辛かったんです。
とても、苦しかったんです。
自分だけが覚えているなんて、あまりにも。
寂しくて、切なくて、どうしようもなかったんです。
だから、次があるなら、どうか、全て忘れて、やり直させてください。
白馬の王子様なんて、待っていない。
エジプトの王様なんて、もっと待ってない。
「と、いうわけで迎えにきたZE☆」
「カエレ」
バタンっと俺様は瞬間的に扉を閉めた。
物凄い幻覚と幻聴を見て聞いてしまった気がする。
扉に鍵を掛け、チェーンをロックした。
「了、了、塩持ってこい」
声をかければ、部屋の奥から自分そっくりの顔が出てきた。
まあ、一卵性の双子だから似ていて当たり前なのだが。
「んー、料理に使うのー?」
「撒く、すごい幻覚見た」
「えー、勿体無いよ。もうすぐ使い終わる白スプレーでもいい?」
「よし、あの黒い顔真っ白にしてやる」
がちゃ。がちゃん。
スプレーをとりに玄関に上がった瞬間、扉が開く。そして、チェーンロックが一気にぶちぎれた。
振り返った先、なんだかよくわからない道具を持ったエジプトの王様がすげえ笑顔で立っている。
「てめえ!! ここ借家だぞ!!」
「ああ、弁償する」
「弁償するじゃねえ!! つか誰だてめえ!!」
「お前の前世の恋人だ!!」
「やばい、了!! 了!! 電波だ、警察呼べ」
「なになに? お兄ちゃんどいてそいつ殺せない?」
「ソレ系だ!! 早く!!」
エジプトの王様をけりだすと扉を押さえる。
物凄い力であちら側にひっぱられているが、ここで引くわけには行かない。
なんだか外で「バクラ!! バクラ!!」と連呼しているが、無視。
一秒でも早く警察がくることを祈るが、元来おっとりした性質の了では中々行動に移さないだろう。
こうなったら正当防衛で殴り倒して突き出すかと思った瞬間、扉から力が抜けた。
同時に、奥で着信音が聞こえる。
了の声を聞きながら、なんだかひしひしと嫌な予感がしてきた。なんか、了が、携帯を持ったままこっちにやってくる。
そして、俺様をどかすと、あろうことか扉を開けやがった。
「いらっしゃーい、アテムくん」
「久しぶりだぜ、獏良くん」
お前ら、グルか。
「ごめんねー、天音がテレちゃって」
「あま、ね?」
「てめ!! 了その名で呼ぶなっつったろ!!」
「えー、なんでさー、お父さんとお母さんがちゃんとつけてくれた名前なのに」
「へー、今回は、天音って言うのか」
「今回ってなんだ!! つーか、天音って呼ぶな電波!! おい、了、追い出せ!!」
「アテムくんはお客さんだよ。追い出すなんてひどいよ」
「だったら、俺様が出て行く!! こいつ帰ったらメールしろ!!」
「えー、一緒に遊ぼうよー、アテムくんすごくカードゲーム強いんだよ」
「冗談でも出会い頭に前世とか言い出す奴と遊べるか!!」
「いや、それは冗談じゃないぜ」
「了、黄色い救急車って何番でくんだ」
「天音、それは都市伝説だよ」
笑いながら了は電波を家にあげようとする。
絶対阻止しようと後ろを振り向いた瞬間、電波はいきなり俺様に抱きついてきやがった。
思わず肘鉄を食らわした上でかかと落としを決めれば、なぜだかひどく幸せそうな顔をしやがる。
キモイ、誰か助けろ。
「ははあー、天音ったらテレちゃってー」
「照れなくても大丈夫だぜ、バクラ」
「照れるか!!」
つっこむことにすら疲れた俺様は頭を抱える。
ここは本当に日本なのだろうか、あまりにも日本語が通じない。
この電波はエジプト人だから通じなくても仕方ないが、了は双子だというのに意思疎通がまったくできない。
とにかく、電波から俺は距離をとると、すばやく携帯電話を取り出す。
「警察?」
そう聞いてくる了を無視して、きっちり3回コールで出る相手に叫ぶ。
「社長!! 今暇か?
ああ、暇じゃなくてもいい、俺そっち行く、電波が家から出てくまでやっかいになるぜ!!」
「社長……?」
俺の言葉に電波が反応しやがった。
迷わず無視。
「あれ、海馬くんところいっちゃうの?」
したが、了がよけいなことを言う。
「バクラ!! なんで海馬なんかのところへ行くんだ!!」
いきなり他人をなんか扱いする電波はどうも社長と知り合いらしい。
苦々しく思いながら俺は堂々と言いはなかった。
「彼氏のところに行くのに理由なんかいるか!!」
ぴしりっと、電波が固まった。
「か」
「彼氏」
「枯れ死?」
「意味わかんねーよ!」
引きつった笑みで、了に助けを求める電波。
しかし、了は身内にもアレだが、他人にもアレだ。
「海馬くんと、天音は結構前から付き合ってるよ?」
電波は、倒れた。
なんだかよくわからないけれど、この世を儚んでいるように見える。
「おっ……」
おお、生き返った。
「俺よりも弱いデュエリストにバクラはやらないぜ!!」
そして、訳のわからないことを言い出した。
「ああ、天音。実はアテムくんはデュエリストキングなんだよ」
「はあ!?」
「天音デュエルシティ出たがってたよねー。僕が風邪引いちゃったから出れなかったけど、その時優勝したのがアテムくんなんだ」
「つーことは……あの、社長が3週間いじけて引きこもってたのは……?」
「アテムくんのせいだね」
この電波が本当にそんなデュエルキングなんつーたいそうな存在かはわからない。
ただ、了はボケているが嘘はつかない。なら、本当なのだろう。
「というわけで!! 俺は認めないぜ!!」
涙目でほざく電波を無視して、俺はふと、聞きなれた音に気が付いた。
電波を踏みつけて扉を開くと、そこには見慣れた車と、見慣れた長身、その傍らには見慣れたガキが立っていた。
「バクラー! 迎えに来たぞー!」
「おう、今行くぜ」
電波が後ろでなにか叫んでいるのを黙殺し、俺は一気に車に駆けつける。
「変態がいる、早く逃げるぞ」
モクバはちらっと俺が出てきた部屋を見て、電波を見つけたのだろう、頷いて車に乗り込んだ。
ただ、社長の奴はよほど負けたのが悔しいのだろう、睨んでいる。
それを見た電波も、また社長を睨みつけ、俺を見た。
「バクラ!!」
社長が、車に乗り込む。
扉が閉まる寸前。
「愛してる!!」
発進した車に安心した俺は扉にもたれかかった。
「………」
「バクラ、あれ、アテムだったよな?」
モクバがそう聞いてくるので、俺様は軽くうなづく。
ひどい疲労と感情がどっと全身を襲い、喋れそうになかったからだ。
「……あのさ、バクラ、一つ言ってもいい?」
聞きたくなかったが、そういう気力すらない。
「バクラって、すげええええええぇぇぇぇぇぇーーーー趣味悪い」
「知ってる」
俺様は火照った頬をガラスの冷たさで冷ましながら呟いた。
社長が物凄く不機嫌そうに俺を睨んでいる。
「しょうがねえじゃねえか」
そう、しょうがない。
だって、再会してしまった。
また、再会した。
二度と、会えないかもしれないと思ったのに。
二度と、会うものかと思ったのに。
会っても、好きでいてくれているなんて、思えなかった。
忘れたい記憶。
辛く、苦しく、悲しい、切ない、胸が痛くなる。
もがいて、あがいて、それでも、だめだった。だめだったのに。
それでも、目を閉じればありありと思い出すのは、たった一人。
「くだらん」
「女々しいと思ってるだろ」
「ああ、だが、お前のオカルトは今更だ」
忘れられなかった。
やり直せなかった。
都合よく、記憶は消えていない。
だから、寂しくて、寂しくてたまらなかった。
そう、前世の恋人。
結ばれなかった、報われなかった相手。
それが、いきなり現れた。
何も変わらず、今度は、きちんと覚えて、迎えにきた。自分を見つけてくれた。
それだけで、涙が出そうなほど嬉しい。
「なー、バクラー、アテムなんかやめろよー、兄様の方がいい男だぞ。
金持ちだし、背も高いし、変態じゃない!!」
「うるせえ」
目元をこすりながらモクバの言葉を打ち切る。
『海馬、あのな。俺様、前世からずっと好きな奴がいるんだ。
そいつとまた会えるなんて思ってねーし、そいつとまた会ったからって、そいつが好きになってくれるかはわかんねえけどやっぱ好きだ。
だから、あんたとは、きっと、そいつに会うまでしか付き合えない』
「言っておくが、俺の辞書に不可能と諦めると言う字はない」
「さすが」
「それに、貴様が待ち望んでいた相手がきたというのに縋らず俺にところにきたということは、まだ俺にチャンスがあるということだろう」
軽口をたたきながら、笑う。
「……だってよー、俺は3000年+α待ったんだぜ?
なのに、ぱっと現れてハッピーエンドっつうーのは、悔しいだろ?」
モクバも、にやっと笑う。
「確かに、そんな御伽噺つまらないぜ!」
「じらしてじらしてじらしてじらしてやる……」
「バクラ、いい顔だぜ★」
「ふぅん、付き合ってやってもかまわんぞ、奴には借りが山ほどあるからな……」
白馬の王子様なんて、待っていない。
ただ、貴方一人を待っていました。
でも、ただじゃ許しません。
「アテムくーん、しっかりー。もうすぐ遊戯君と城ノ内くんが迎えにきてくれるって」
「…………(しょんぼり)」
ついに書いてしまったイタすぎる転生パラレル天音……。
イタイイタイイタイ!! でも、楽しかったです(おい)
なぜか海バク要素が入ってるのは永遠の謎にしといてください。
他にいい当て馬がいなかったんです(おいおい)
なお、微妙に引用してるのは、アリプロの聖少女領域です。
そして、続きません。