※AIBOが精神的にひどい。
 バクラも色々とテンパっててやばいです。欲情とかしてます。
 キャラ崩壊、AIBOは優しいんだよ、妖精さんだよ!
 そんな正しく清い思考の方は逃げてください、穢れちゃだめだ!!





 









































 獏良終は、恋をしている。
 しかし、一般的に口に出せるようなものでも、甘い、あるいは甘酸っぱいものでもない。
 できれば、一生、できうるなら墓の中まで持って生きたいような恋だ。
 なぜなら、いわゆる相手は同性で、異性が露出した本やビデオなんかも嗜んだりする至ってノーマルな男子高校生である。
 恐らく、想いを告げたところで、万人が整っていると、美しいという容姿を持って生まれた獏良終であろうとも、拒絶されてしまうだろうと半ば確信していた。
 別に、獏良終だって、少々異常なまでに兄を偏愛していたものの、柔らかくてかわいい(美人な)異性が嫌いなわけではない。その証拠に、告白したことはないが、告白されて悪い気はしなかったし、付き合ったこともある。長続きしなかっただけで。
 ちなみに、男にときめいたことは、今現在恋している相手以外には皆無で、むしろ、嫌悪していると言っていい。
 俗に言う女顔である獏良終は、その手合いに言い寄られたことや、そういう風に見られたこともある。そんな時、自分がどのような心境になったかも、獏良終の確信の一つの証拠だろう。
 けれど、獏良終は同性に恋をしていた。
 いや、もしも獏良終に恋をしているかと聞けば、首を横に振るだろう。
 獏良終の辞書を引くならば、その気持ちは恐ろしいことに、欲情に類する感情なのだ。そんな、即物的で、興奮を覚える、本能に基づいた、恋からキレイな虚飾を剥ぎ取った欲望なのだ。
 いつだって、その感情は奥深くに、うっかりしていれば獏良終が忘れてしまうほどひっそり潜んでいる。
 大人しいときはそれこそ、本当に、恋と評してもいいくらい獏良終は相手に好きだとか、愛しいだとか温かい気持ちが、兄に抱くに似た心を持てた。でも、それはきっと友愛だとか、動物をかわいいと感じる方に近いだろう。
 だが、不意に、ざわりと獏良終はおかしいことに欲情してしまうのだ。兄にもしたことがないのに。
 まあ、不幸中の幸いに、獏良終は演技派であり、冷静に自分を観察し、同時に相手も観察し、自分がどういう時欲情するか分析して、対策もきちんとしていたので、今のところ問題は何一つなかった。
 そう、例えば、どんな時に欲情するかと問われれば、最も多いのはゲームをしている時だ。
 どんなゲームでもいいが、その中でも、特にカードゲームだと興奮して血が騒ぐ。
 カードを見るときのまっすぐで、あらゆる感情をこめた真剣な視線で見つめてほしいだとか、カードを触る小ぶりでふよふよとした、子どもっぽい、けれど少しだけ長い指に触って欲しいだとか、宣言する時のように強く、声変わり前の高い声で呼んで欲しいだとか、デュエルタクティクスがぴったりとはまった時の会心の笑みなど、自分に向けられてなくてもたまらない。
 だから、獏良終は極力相手とはデュエルをしないことにしている。寂しいが仕方ないことだ。見ることはゲームが好きな性質も手伝って耐え難い誘惑により避けられないが、我慢もできた。
 つまるところを言うと、獏良終の恋は絶賛迷走中だということだ。





「バクラくん、デュエルしようか」





 一瞬、終は相手の口から飛び出した言葉の意味がわからなかった。
 耳には入ったが、脳が中々理解を承認してくれなかったのだ。
 おかげで、勝手に脊髄が口を開いた。

「いいぜ」

 ぽろりと、転げ落ちてしまった。
 顔には出さなかったが、血が沸き立つのを感じる。
 言ってしまったからにはもう遅い。ここで焦って訂正しても怪しまれるか、相手のことだから悲しむかもしれない。すると、終でなくともひどい罪悪感に駆られてしまうという恐ろしい効果があるため、迂闊に反応できなかった。
 記憶を検索してなんとか用事を見つけようとしたが、むしろ今日は兄がいまくて暇だという回答が見つかった。それも、この相手は兄と話していて知っている。
 ぱあっと相手の表情が喜びに輝いた。ますます断りづらくなっていく、というよりも、受けてしまった時点でもう断ることなどできないのだ。
 後悔する一方で、別の部分が歓喜の声をあげている。
 終がゲームは好きだ。相手が好きだ。特に勝負に臨む表情などぞくぞくしてたまらないくらい。
 今現在をもって、カードを選定するその表情を見ただけでやはり顔には出さないが、熱が這い上がってくる。
 その熱に翻弄されないように、必死に自分を抑制した。

「終くん、先攻がいい? 後攻がいい?」

 椅子に座って、デッキをサイドに置く。
 笑いかけられて、終はできるだけ自然に視線をそらすとカードをカバンから出した。相手と対戦することはないが、他の人間とは時折する為、用意はしている。
 いつだって最高の状態で保たれているデッキは、見るまでもないが、意識をそらすためにカードを確認した。
 そうしないと、にやけるか赤面してしまいそうだったからだ。

「後攻」
「じゃあ、僕が先攻ね」

 控えめに声を出すとぶっきらぼうになった。
 一瞬、相手の顔が曇る。
 不機嫌だと思われたのだろう、少し申し訳なさそうな顔で、デッキを終にさしだした。終もデッキを差し出す。
 視線が、デッキではなく、相手の指に向く。触れてしまいそうだと、恐れた。
 しかし、幸いなことに――残念なことに――手は触れない。
 お互いのデッキを軽くシャッフル。
 
「ドロー」
(あっ)

 もうだめだっと、終は思う。
 相手の、顔が変わった。
 決闘者の顔だ。
 終の最も愛する、そして、下劣な欲情を抱いてしまう顔。
 手札で、赤くなる顔を隠した。一応は、手札を見ているように見えるはずだ。それに、相手はカードに夢中で終を今は見ていない。
 見ていなくても、終にはどうしようもない衝動が湧き上がってしまうのだが。

「じゃあ、僕はこのカードを裏守備表示で出して、1枚伏せるよ」

 終は、小さく息を呑む。
 身震いさえしそうなのに耐えて、カードに集中しろと叱咤した。

「なら、俺は、」

 見られている。
 探るように、対するように、相手が、終を。
(ちくしょう)
 小さくて華奢で目が大きくて幼くて小動物みたいでかわいい。
 なのに、なんでこんなにかっこいいのか。

「終くん、ドローし忘れてる」
「あっ」

 取り乱しかけて、ぐっと立て直した。
 すらっと嘘の出てくる口に任せて虚偽を並べる。
 まさか、こんな単純なことが欠落するとは、自分を恥じてたまらない。
 相手に見惚れるなんて、恋する乙女もびっくりだ。
(きっと、)
 熱が、暴走しそうだった。
 終はなんとかゲームを進める。
(きっと、遊戯は俺様がこんなこと考えてるなんて、思わねえだろうな)
 本当は、この場でサレンダーしてでも逃げ出したかったが、高すぎるプライドにおいて負けるわけにはいかない。 
 しかも、始まって1ターンなんて、不自然すぎる。
 終は、演技派な自分と、平静なフリを保てるよう育ててくれた兄に深く感謝した。
 ゲームは続く。
 早く終われと、終は何度も心の中で繰り返した。
(ずっと、していたい)
 だが、同時にそう思う。

「リバースカードオープン!」

 相手の痛いほど真剣な顔と声。
(遊戯は、こんなに真剣にデュエルしてんのに)
 心地よいほど終を刺激する。それは、真面目な相手にとっての裏切り行為でもあった。
 真剣ならば、真剣に返すべきだというのに。終とて、決闘者だというのに。
 情けなさに、終は少しだけ泣きだそうだった。










 ばんっと、勢いよく扉を開けて、鍵も掛けずに中に飛び込んだ。
 靴を叩きつけるように脱ぎ、廊下をどたばたと強く走り抜ける。
 兄がいれば怒られていただろうが、今日はいないのだ。
 顔が熱かった。息も切れている。ここまで走ってきたのだから当然ではあるが、それはまた別の意味も含んでいた。
 兄の隣の部屋、つまりは自分の部屋に性急に飛び込むとカバンを放り投げる。
 鈍い音。
 教科書や、カード、机の心配もできない。
 そして、制服の上着を脱ぎもせず、ベッドに飛び込んだ壁に背を預けて、もどかしいながらもベルトを外す。
 解放を待つ部分が痛かった。熱く張り詰めてたまらない。学校から、ここまでずっと疼いていたのだから。
 じわりっと、目尻に涙を浮かべながら荒く熱すぎる吐息を喉が詰まりそうになりながら繰り返す。
 破るような手つきで、前を開けて、下着をずらす。
 限界まで勃ちあがったソコは、触れてもいないのに汗と先端から滲む透明な液体で濡れていた。
 自己嫌悪に吐きそうになる。
 これが、終が相手に対する感情を恋と決して言えない理由だ。こんな風になってしまうのを、恋などと思いたくもない。

「ぁ、はっ……」

 ぐっと、手でソレを掴む。
 求めていた刺激に、ソコは強い快楽を腰に伝えた。
 ぬるりとした手に伝う感触にすら、肩が震える。
 先端を撫でて、反り返った部分をまずはゆっくりと馴染ませた。

「っ、ひ、ぁ、ゃ……」

 我慢していた分、恍惚は蕩けるようだった。
 本当はそのまま激しくこすりたかったが、すぐに出てしまうのも恥ずかしい気がして少し息を整える。
 自制には自信がある。
 大きく息を吸って、吐いた。
 熱い、体内の温度を吐き出すようなとんでもない熱さ。
 それでも、目の前に相手がいないせいか落ち着きは取り戻した。涙が零れる。頬を伝う冷たさが、頭を冷やす。
 しかし、落ち着いても下肢は治まらない。

「はぁ……」

 やわやわと手全体でソコを包み込み、揉んだ。 

「う、ぁぁん……」

 誰もいない状況が、声を抑えさせない。
 手の動きを少し乱暴にすると、声も大きくなる。
 無意識に腰を捩れば、体勢が崩れた。
 いつの間にか足を大胆にも開き、顔を左右に振ってせりあがる快感を享受する。 
 目を閉じれば、今日、目の前にいた相手。
 真剣な瞳で、見てくる。

「ゆ、あ、ひゃあっ」

 カードを見る目。
 自分を見る目。
 強く凛々しい目。
 どの瞳も、終を震わせる。

「あっあっ、あっ、ゆう、」

 手が止まらない。
 ぐちゃぐちゃと摩擦によって水音が高くなる。
 片手で上下にこすり、もう片手はくびれ部分や先端を強く指の先で押したり、抉ったりして刺激に変化を加えた。

「あぁ、ぅああ、ん、あ……」

 その中で、夢想する。
 この手が、あの指だったらと。
 あの、カードを触れる指が、自分のモノに触れていたら。 

「ゆう、ゆ、、あ、んんっぎ、あ、ひゃ……」
 
 じんっと、甘い痺れ。
 キレイな手だと思う。
 本人は小さいだとか、子どもみたいだとか思うが、形は整っているし、指は長い方だ。
 触れられたらきっと、ひどく気持ちいいだろうに。
 自分が触るように、触ってほしい。

「ゆぅ、ぎぃ……」

 ありえないことを考えながら、喘ぎ声が愛しいものを呼ぶ声に変わる。 
 届くことがないからこそ、はっきりと、甘く、愛しい。

「ゆ、うぎ、ゆうぎ……」

 高まる感情にあわせて、呼吸が揺らぐ。
 壁に押し付けた背中が痛い。
 だが、それよりも快楽に全てを引きずられ、奪われる。

「ゆう、ぃい……いい……ゆうぎぃ……!」

 絶頂を迎える瞬間。
 点滅する視界。
 天上がひっくり返るような、不安定さ。
 腰が浮く。
 苦しい、涙が零れた。頬を伝う。
 鋭敏な感覚は全てを同じものへと還元する。

「ゆうぎ……!」










「なに?」










 終は、死ぬかと思った。
 いや、このまま心臓が止まって死にたいとすら思った。
 しかし、心臓は止まらず、体の動きだけが止まっている。

「なに、バクラくん」

 体が震える。
 幻覚と、幻聴が同時に襲っているのであってくれと祈った。
 瞬きを繰り返す。
 相手の姿が、そこにある。脳裏に描いたままの姿で。
 ただ違うのは、相手が笑顔ということだけだ。いつも通りの笑顔なのに、何かが違う。
(なんで)
(なんで、なんで)
(なんで、ここに?)
 どこからか急に現れたのではない。ごく普通に扉を開けて、部屋に入ってきているのだ。廊下を歩く音が聞こえなかったのは集中しすぎたせいだろう。
 おかしいところは一つもない。人間の限界を超えたことは何もしてないないのだから。
 現実をなんとか理解した終の顔が、かあっと、赤く染まった。
 元々興奮にほんのり朱がさしていたのだが、今は羞恥によって真っ赤に染まりきっている。
 慌てて、前を手で隠したまま、叫んだ。
 体勢も立て直そうとしたが、踏んだシーツが全てうまくいない。

「見るな!!」

 ぼろっと、涙が落ちる。
 恥ずかしくてたまらない。
 ひた隠しにしていた欲望を、見られてしまった。しかも、名前を呼んでいるところを聞かれてしまった。
 決して、知られなくなかったのに。
 相手にだけは、知られたくなかった。
 せめて、名前を呼んでいなければ男としての生理現象としてまだ処理してくれただろうが、フォローは不可能だ。嘘もうまくでてこない。
 きっと、嫌悪されているだろう。軽蔑されただろう。気持ち悪いと罵られ、二度と口をきいてはもらえないことは容易に想像できた。
(また、転校か……)
 絶望に浸りながら、うなだれる。うつむいた顔があげられない。
 身を縮め、終は死刑判決を待った。
 できれば聞きたくなかったが、これは報いだと、逃げなかった。
 それでも、目は見たくない。あの大きな瞳に負の感情を孕んだ様など、恐ろしくて見ることなどできはしなかった。
 しかし、いつまで経っても中々予想していた言葉が来ない。
 どころか、ゆっくりと、近づいてくる。

「どうしてそんなことしてるの?」

 問う声は優しかった。
 その優しさが怖い。より恐怖と不安を煽る。
 思考ができない。
 息すらうまくできないのに、できるわけがなかった。
 答えることができず沈黙する。

「ねえ、バクラくん」

 きしっと、ベッドの縁に座る音。
 少しだけ、終は顔をあげ、相手をうかがう。
 相手は、笑っていた。
 いつも通り、優しく笑っている。

「どうして、僕の名前を呼んだの?」

 震えて、終は喋れなかった。
 涙は止まらない。
 こんなに泣いたのはいつぶりだっただろうか。混乱した頭がそんなことを考える。
 そういえば、兄が怒りすぎて笑っているのを思い出す。
 ならば、この固定された笑顔は、相手の怒りなのだろうと推測した。この状況を見て笑えるほど、怒っているのだ。
 もうお終いだとばかりに、終は目の前が真っ白になるのを覚えた。
 本当に、今すぐ死んでしまいたい。
 舌でも噛もうかと考えている途中で、頬に指が触れた。
 びくっと、終は怯える。

「大丈夫」

 優しい指だった。
 人を傷つけるための指ではない。
 慰め、宥める指が、涙を拭う。
 拭っても拭っても拭いきれない涙を、一滴づつ。
 温かい、触れてほしいと思った指だった。

「大丈夫だよ、バクラくん」

 ぐずぐずと泣く終に、あくまで優しい声で紡ぐ。

「僕は、怒ってないから」

 ちっとも、怒ってないよ。
 そして、涙を拭っている手と反対の手が、下に伸びた。
 足の間、下肢を隠す手の上に、手を重ねた。
 敏感な部分への微弱な刺激がぴりっと、終を刺激する。

「ぁぅ……」
「怒ってないから、落ち着いて」

 頭を撫でる。
 子どもにするように、乱れた髪を何度も。
 その撫でられる行為すら、直前だった終の体には小さな快楽となる。

「ぁっ……ゆう……」
「大丈夫、だから、答えて」

 ぎゅっと、重ねた手に力がこもる。 
 終はもどかしい感覚に思わず腰が動いた。

「どうして、こんなことしてたの?」
「お、おれ、」
「うん」

 何か言おうとするが、うまく答えられない。
 言い訳や、嘘がひっきりなしに浮かぶが、口に出せない。

「僕の名前を呼んだの、なんで?」

 こんなことしながら、なんで僕の名前を呼んだの?
 一時的に止まった涙が溢れる。
 目を閉じてとめようとするが、うまくいかない。
 そんな終を撫でながら、相手は言葉を続ける。

「僕のこと考えながらしてたの?」
「んぁ……!」

 ぐりっと、手を一枚隔てて、相手がソコを刺激する。
 びくびくと、刺激が足りないと訴えるように足が跳ねた。
 終は、躊躇いながら頷く。
 ひどく勇気と気力が必要だったが、なんとか肯定する。

「僕のこと考えながらしてたんだ」 

 肯定してしまえば、少しだけすっきりした。
 開き直ってしまったと言ってもいい。 

「なんで?」

 更に、問われる。
 極限状態で追い詰められ、終はやけくそだった。
 これ以上悪くなることなどない。そう思うと、なんでもできるような気がする。
 終はひどく重い口を開いた。

「ゆうぎのこと、」

 大きく、息を吸う。
 そして、息を吐くのに押されるように、告げた。

「すきだから」

 世界が終わるような気分とはこういうものだろうか。
 終はそんなことをなぜだか逆に冷静になった頭で考える。
 どんな瞳で自分を見るのか、それだけが気になって、相手を見た。
 驚いた顔を、している。だが、それもすぐに笑顔に戻った。
 
「そっか」

 あまりにも、あっさりした答え。
 なぜだか、嬉しそうな声に聞こえた。
 考えていたこととまったく違う答えに、終は再び思考の迷路に突き落とされる。
 拒絶するでもなく、軽蔑するでもなく、なぜ。 

「ねえ」

 手を撫でる。

「どういう風にしてほしかったの?」

 あまりにも、予想外の言葉。
 訳がわからず、終は戸惑った。
 声音から、責められているわけではないと思う。

「僕に、どういう風にしてほしかったの?」

 相手は、怒ってないとと言ったならば、怒っていないのだろう。
 なのに、なぜこんな質問をするかわからない。

「君の想像の中の僕は、君をどう触った?」

 きゅうっと、手を強く握る。
 間接的に、ソコをいじりながら、相手は問い続ける。

「こう?」
「ひゃっ、は……まっ。ゆうぎ……!?」
「あっバクラくん、足閉じちゃだめだよ」
「え、ゃ……まっまて、ゆうぎ……」

 身を引こうとして、壁にぶつかる。
 痛みはなかったが、ぐるぐると空回りする思考がより絡まってわからない。
 しかし、腰に渦巻く熱だけは明確に体を追い立てる。
 重ねられた手から伝わる体温。
 こうしてしっかりと相手の手に触れることは、初めてだった。
 いつも見ていた通り、小さいけれど、長い指。少しだけ丸みを帯びて柔らかい。その手に直接触れられていないというのに、終は自分で触るよりも何倍も感じてしまう。
 くちゅくちゅと与えられる感触にソコがまた透明な液体を吐き出して濡らした。

「気持ちいい?」
「なっん、なんで、ゆう、ぎ……ふっん……」

 問おうとして口を開くと声が漏れる。
 唇を噛み締めて抑えるが、どうしても鼻から抜ける声が漏れてしまう。
 相手の視線が、足の間に向けられていると思うと、背筋がぞくっと震えた。
 想像とはまったく違う、羞恥と背徳が終の顔を耳まで赤くさせる。

「み、るなあぁ……」

 首を左右に振るが、視線はそらされない。
 嫌なのに、終の下肢は萎えることなく、むしろ快楽を逃さぬとでもいうように勃ちあがっている。
 目を閉じるが、見られている事実からは逃れられない。否、見ないからこそ、視線が気になってしまう。
 どくどくと血の集まるソコは、限界が近いことを克明に伝えている。

「んん、ん、ん……っ!」

 流れ続ける涙の通る頬を、相手は撫でた。
 そんな何気ない行為にすら、終の体は反応して跳ねる。

「ねえ、バクラくん」

 何も変わらぬ優しい声。
 この醜態を見ても、そして終を乱しても変わらない。

「僕にどうして欲しい?」
「あっ……」

 手の動きが止まる。
 しっかりと終の手に手を重ねているが、刺激するように動く事はない。
 終は無意識に残念そうな声を出し、手を見つめた。
(もう、すこしで、いけるのに……)
 そう考えてしまったことに、自己嫌悪がこみ上げた。
 だが、体は正直で、まるでもっといじってほしげにビクビクと手の中でソコが跳ねる。

「やめてほしい?」

 相手が首を傾げる。

「もしも、バクラくんが嫌で、今すぐいなくなってほしいなら、そうするよ?」

 がんっと、その言葉に終は殴られたような気がした。
 目の前が真っ暗になるような衝撃。
 見られたときよりも、不安がこみ上げ、怖い。
 見捨てられるような、気がした。

「い、いやだ……」

 小さく、首を横に振る。
 震えながら、すがるような目で相手を見た。 
 涙で潤む瞳が、視界をぼやけさせる。
 その目尻を、相手の手が拭う。

「やだ、ゆうぎ……」
「じゃあ、どうしてほしい?」

 聞く。
 終は、少しうつむき、沈黙した。
 相手は、それをただじっと待っている。答えるまで、何も言わず。
 居心地の悪い間。
 もじもじと、勝手に刺激を求める下半身が揺れる。

「さ、」

 おずおずと、口を開く。
 生きてきて、最も、辛く恥ずかしい瞬間だったかもしれない。

「さわってほしい……」

 ゆうぎのてで、さわって。
 相手は、それを聞くと、頷いた。

「わかった」
 
 重なっていた手に、再び力がこもる。
 だが、今度は終の指の隙間から、直接ソコに触れた。

「ひゃあっ!」

 自分以外の体温に、感触に、ぐんっと、血が沸騰する。
 それも、相手に触ってもらっているのだ、訳がわからないほど、気持ちいい。

「ふああ、あ! ん、ゃぁあ!」

 稚拙で荒い手つきだったが、それでもたまらない。
 ガクガク震えながら抑えられない声が漏れる。
 唇をもう一度噛み締めようとしたが、うまくいかなかった。
 他人に触れられた経験のない終には、きつすぎるくらいの快楽。
 快楽を逃がそうと首を振ると、涙が散っていく。

「ま、はや!! そんな、はげし!! くっゃ、ああ!!」
「もっと、ゆっくりがいいの?」
「ん、ふ、ああ!!」

 こくこくと首を縦に振ると、稚拙さは変わらないが、手の動きがゆるやかになる。

「はあ、あ……ぅ……ん!」

 まだ強い刺激に流されながら、終は足の間からいつの間にか制服を掴んでいる手に力をこめる。
 ぎゅうっと、指先が白く食い込んだ。
 制服にしわがより、汚れたが、気にするほどの余裕がない。
 閉らない口から唾液が零れる。

「バクラくん、気持ちいい?」

 耳元で響く優しい声は終の脳に染みこんでいく。
 操られるかのように終の首が頷いた。

「僕の手に触られて、こんなに感じてるんだ」

 背を反らし、瞳を熱に浮かされながら意識は相手に集中してしまう。
 それは、自分のあられもないところを見る目だとか、キレイだと思っていたのに、自分のモノで汚れていく手だとか、驚くほど近い距離と、体温と息遣いだ。
 全部の感覚が、相手に向かうような、奪われるような錯覚。
 
「バクラくん――しゅうくん」
「うひゃ、ぁ!」

 相手の声を少しも聞き逃さないために研ぎ澄まされた耳に息を吹きかけられた。
 びくりと一際強く体が震え、どくっと相手の手の中に白い液体を吐き出す。
 苦しそうに息を乱し、足がきゅうっと、釣ったかのように引きつった。
 小刻みに震えながら、頭が冷えていくのを覚える。
 相手はしばらく白い液体で汚れた手を見ていた。
 それがまた恥ずかしくて、終は目をそらす。

「ゆうぎ」
「なに」
「その……手、拭けよ」
「あっうん」

 ポケットからハンカチを取り出し、渡す。
 相手はそれを素直に受け取って手を拭った。
(このハンカチは、捨てよう)
 現実逃避めいた思考で、見届ける。
 同時になんとも、間抜けな姿だろうと悲しくなった。
 とりあえず、制服を着直す。
 かなり汚れて気持ち悪かったが、しかたがない。まさか脱ぐわけにもいかないのだ。

「あっ」

 相手が、今まさに思い出した声で動きを止めた。
 終がびくっと怯える。
 これ以上予測不能な展開は、本当に処理オーバーしてしまうだろう。

「そうだ、終くん、忘れ物」

 ポケットからデッキを入れるための箱を取り出し、一番上のカードをとる。
 終が手を拭いて受け取ると、それは終のカードだった。
 デュエルで使った記憶がないが、デッキにいれていたのことは覚えている。

「これ、届けにきたんだ。勝手に入って悪いと思ったけど、鍵開いてたし」
「そうかよ……」
「靴があったし、一応声はかけたんだよ?」

 終は相手のそんな、あまりにもいつも通り過ぎる言葉に、驚きを隠せなかった。
 なんで、あんなことをしたのに、あった後なのに、これほど普通に接せられるのか。
 もしかして、終以外の一般常識では結構当たり前のことだったりしてしまうのかと、疑ってしまう。
 自分は、こんなにも恥ずかしくて、どうしていいかわからないというのに。
 
「明日でもいいかなって思ったんだけどね」

 そこで、相手は間を開けた。
 初めて、頬を染める。
 愛らしい顔に似合う、困ったような笑み。

「終くんに、会いたかったから」

 また、終の頭がフリーズする。
 それがどういう意味なのか、理解できない。
 今すぐ白旗をあげて降参したい気分になった。そんなことはできないというのに。



「僕も、終くんのことが好きだよ」



 もう、白旗はあがっている。
 最初っから、そこに翻っているのだ。
 終は、また泣いた。
 嬉し泣きでも、悲しくて泣いたのでもない。
 子どもによくある思考がぐちゃぐちゃして、わからないときの泣き方だ。
 がむしゃらに泣いているところを、相手はそうっと抱きしめて、耳元で小さく聞く。

「ねえ、終くん、僕にどうして欲しい?」

 終は泣きながら顔をあげて、絡まる舌で告げた。

「きすしてほしい」

 いいよっと、相手は笑って口付ける。
 そうして、終は三つの事に気づいた。
 この優しい笑顔が結構ひどいということと、自分の呼び名が変わったことだ。
 だって、して欲しいことを知っているくせに、それを笑顔で隠して言わせている。これをひどいと言わずなんと言おうか。しかも、本来ならその口から飛び出すはずの「泣かないで」という言葉が飛び出さなかったというところもまたひどい。
 どうにもこうにも、本心は読めないが、終の泣き顔はお気にとてもお気に召してしまったらしい。
 しかし、それを終は自分の呼び名が変わったことが嬉しくて許してしまっているところがまったくもって救えない。
 きっとそれは、関係の変わった明確な境界線なのだろう。








 だが、それよりも、終がどうしようと気づいてしまったのは、そんな優しい、そしてひどい笑顔にどうしようもなく欲情してしまいそうだということ。
 そういうひどいところも、嫌いじゃないのだ。
 むしろ、相手に与えられるなら、それもいいかもしれないと考えてしまう。相手がそう望むなら、叶えてやりたいと思っている。









 獏良終は、恋をしている。
 そして、想いが通じた後も絶賛迷走中だ。



 どえすなAIBO×恋に迷走中のバクラ。
 そんなテーマで書いたら失敗しました。よくあることです(諦めた)
 しかし、どえす分が足りない!!(ガビーン
 もっとこう、意地悪なAIBOを書きたかったのですが、妙にソフトに。
 泣かしてるのを実は放置、告白スルー、混乱してるのに畳み掛ける、言葉攻め気味をもっと生かしたかったんですが。
 たぶん、言葉攻め分が足りませんでした。もっと文才が欲しいです。
 とりあえず、AIBOに振り回されるバクラも大変楽しかったです。
 いつも振り回されてるだけじゃないんだZE☆
 バクラは、AIBOが好き過ぎて欲情とかするといいなっと思って本当にやらかす私はなんという変態。すくいようがないのは管理人です。タイトルの意味でもあります。すくいようがない。
 欲情というよりは、発情のような気もしなくもないです。まあ、似たようなもので(おい)

 朝見て書き直してたら、止まらなくなって焦りました。
 久々に、エロらしいエロが書けてちょっと嬉しかったです。 
 実は、AIBOが終の欲情に気づいてて、忘れたんじゃなくてカードこっそり抜いてバクラ追いかけてきたという展開もあったんですが。
 そこまでAIBOにダークをいれるのはどうなのかっと、AIBO理性ストッパーが……。
 王様なら、させた(ぁ)



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