※セトの美化が激しいです。その上脈絡なく殴られてる。
 バクラがヤンデレちっく。
 王様が妙にかわいそう。
 セトが殴られてる。
 私が常にやりたい放題。捏造ばかり。
 それでもOKな方は見てやってくださいませ。






















































 びたっと、この国で最も尊い地位にある王は、地面に転がって空を見上げた。
 気温も熱くぎらぎらと輝く太陽があるとはいえ、王は体に異常なほど汗をかき、息も荒い。
 ここでせめて風の一つでも吹けば心地よいのだが、残念なことに今日は無風だった。
 ふと、そんな王の上に影ができる。視線を少し横にやれば、そこには普段とは違う、軽装の神官が立っていた。
 どんな直射日光の中でもいっそ冷たささえ感じそうな平静な表情の男は少し眉をひそめる。

「王、行儀が悪いです」
「見逃せ……」

 王の言葉に、男は素っ気ない態度でわかりましたっと頷く。
 しばらく、王の息が整うまでの間、少しだけ乱れた髪をまとめなおし、服の裾を整えた。
 淡々と自然な動作に、王は少々不機嫌そうに問う。

「……お前は、汗をかかないのか?」
「まさか、かいております。ただ、目立たないだけです」
「本当か……?」
「貴方様に嘘などつきません」

 実直な、しかしそれ以上の反論を許さない言葉。

「さて、王、私は組み手の約束を果たしました。ご休憩を終えられたらこちらの約束どおり仕事をしていただきます」
「……」

 あくまで礼儀正しい口調だったが、王はますます不機嫌そうに空に視線を戻した。
 数分前の組み手を思い出す。
 王はまだ若く、体も小さい、対して男は細いが長身でかなり鍛えられていた。
 だが、王はその分小回りもきくし、速い。ゆえに弱いつもりはなかった。むしろ、標準よりも強いとも言える。
 それなのに、はっきりいえば、勝敗のつかない組み手で負けた。負けたと、王は思っている。
 翻弄され、それでも抗おうと無理矢理、呼吸を乱そうとしてもそれは容易くさばかれ、決まった組み手に、誘導された。
 殴られたわけでも、投げられたわけでもなくわかる強さ。
 しかも、汗だくの自分に対して、まったく汗をかいていない。
 恐らく、最小の動きを理解しているのだろう。

「セト、何故お前はそんなに強いんだ」
「自分ではそれほど強くないつもりですが?」
「この前、カリムと手合わせしていただろ……異常だ」
「……特別な理由はございません……ただ」
「ただ……?」










 衝動的に、殴っていた。
 別に、殴ることなど珍しくもなんともない。
 暴力とは呼吸をするくらい身近なものであったし、体に染み付いたもの、口よりも先に手が出ることなど当たり前。
 なにかおかしいことがあるとすれば、どちらかというと蹴りの多い自分が殴ったことだろう。 
 それだけなのに、呆然としてしまった。愕然と、動けない。息すらひっと詰まった。
 寒い。
 血の気が引くという感覚を、ほとんど始めて味わった。
 見たくないと、どこかが叫んだ。
 しかし、目はそらせず、見続ける。

「……バクラ」

 静かな、けれど、喧騒の中ですら染み渡るような声。
 聞きなれた声だ。
 いつも自分を落ち着ける、叱り、宥める響き。
 その声だったからこそ、一度は落ち着いた。
 止まった体が、動き出す。脳が、状況を理解した。
 震える。
 最初は、突き出した拳から、次第に全身ががくがくと震えてとまらない。
 開いた口から、声が零れる。

「あ、っ」

 ひゅうっと、喉に空気が通る。
 舌がもつれて、喉が引きつる。
 意思を持って吐き出した言葉ではなかった。

「ああぁ……」

 意味のない、音。

「あっあああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 ただの悲鳴としての音。
 獣のように吠える。
 視界が揺れた。ぐらぐらと、ぐらぐらと安定しない。
 目の前の相手すら、滲む。
 自分の体だというのに、体がいう事をきかない
 混乱した頭は思考を拒否し、ただがむしゃらに叫び続ける。

「っあぁぁぁぁあああああ!!」

 震えながら、首を左右に振った。
 違う、違うと否定するように、小さな子どもが駄々をこねているように。
 だが、いくらそうしても現実は変わりはしない。
 
 殴ってしまった。

 その事実だけが全身を駆け巡る。
(誰を、どうして、なぜ、わからない)
 なんでこんなにも、自分が取り乱しているかわからなかった。
 別に、殴ることなど珍しくもなんともない。
 暴力とは呼吸をするくらい身近なものであったし、体に染み付いたもの、口よりも先に手が出ることなど当たり前。
 確かに、この相手に限ってはそれなりの付き合いになるというのに殴るなど初めてだった。だが、それだけだ。
 それだけのはずなのに。
 はずなのに。
 考えがまとまらない。

「ぁあああああっああああああっ!!」

 こみ上げる吐き気。
 口を抑えようとした手が、自らの皮膚を引っ掻いた。爪が皮膚を傷つける。
 痛みを感じない。
 ぐらっと、視界が揺れる。

「うっ、げほっ……あああぁっ……」
「バクラ!」

 少し焦ったような声。
 血が、こめかみから頬へと落ちていく。
 吐き出した息を吸えない。
 力の入っていない拳を握り締めた。
 そして、そのまま勢いをつけて壁に叩きつける。
 みしっと骨が軋む。
 だが、構わない、もう一度、叩きつけた。

「やめろ、落ち着け!」

 手首を掴まれる。
 拳からは壁にぶつけたせいで擦れたのだろう、血が滴っていた。
 ふらつく視界が、相手を捕らえる。
 整いすぎた凛々しい顔の形よい唇が切れ、頬が微かに赤く腫れていた。
 それは、自分がしてしまったもの。

「うっぁ……あああっ!!」

 震えが止まらない。
 ぼろっと、瞳から涙が落ちる。止まらない。ぼろぼろと無造作に。
 掴まれた手を振り払おうと腕を振るが、力が上手く入らない。
 舌打ち。
 ぐいっと、掴んだ腕を引かれたかと思うと、頬に衝撃がきた。
 倒れるかと思えば、手首を更に強く掴まれ支えられる。
 ひっと、喉が鳴った。

「落ち着け」

 青い瞳が無理矢理かち合う。それは声と合わさって、意識を引き戻す。
 ぱちりと瞬きをすると涙が止まった。
 吐くばかりだった息を吸う。
 はぁはぁとまるで何時間も走り続けたように肩が上下し、苦しい。
 それでも落ち着くと、叩かれた頬が痛んだ。

「正気に戻ったか?」
 
 ゆっくり聞いてくる。
 けれど、答えられない。
 それよりも、あまりにも相手の顔が痛々しくて、辛い。
 知らない感情。制御できずに溢れる。

「せ、」

 手を顔に伸ばす。
 避けられることなく触れた。
 輪郭をなぞり、ざらりとした傷口をたどり、触れると痛みに歪む頬を撫でる。
 触れながら、表情が、更にくしゃりと歪んだ。

「せとのかおがああぁぁ……」

 ぎゅっと硬く閉じられた瞼から涙が流れ続けた。
 そうすると、実年齢よりもずっと幼く見える。いや、これが年相応なのだ。 
 標準よりも少し小さいだけの体が、もっと小さく細く見えた。

「うるさい……」
「お、おれさ、あてる、つも、り、なくて……せとな、らよけるって……」
「避けれんで悪かったな。泣くな」
「せっか、せっかくきれいなのに……」
「男にキレイだとか使うな」
「ごめ、ごめん……」

 呻きながら、顔を抑える。
 その顔にも、相手と同じように、ただしこちらは平手で叩かれた痕があった。

「俺も手をあげた、あいこだろう」
「違う」
「どこがだ」
「違う……」

 ぶんぶんと首を振る。
 いくら言っても聞かず答えない。
 眉をしかめ、怒ったような、困ったような顔で、重く溜息をついた。
 どう対応していいかわからない。

「なら、もう一発殴ってやる」

 頬を出せ。
 その一言で顔をあげる。
 何か言うかと思えば、黙って頬を出したものだから、ますます相手は弱り果てた。
 いつもならば、ここで文句の一つは出るところだというのに。
 どうするかと考えながら、落ち着けるために頬を叩くのではなく、頭を軽く撫でた。

「……俺が」

 しぶしぶと、口を開く。

「俺が悪かった、言いすぎた」

 驚いたような、青い瞳が相手をとらえる。
 相手は居心地悪そうに、見返した。決して、そらすことはない。
 しばらくじっと魅入ったように動かなくなった。
 相手が謝った衝撃にだいぶ落ち着いたのだろう、服の袖で涙を拭く。

「顔、いてえ……?」

 微かに腫れた頬を触れないようにあごを撫でる。
 
「痛くない」
「セト……」
「なんだ」
「……ごめんなさい」

 ふうっと、また溜息が落ちた。

「かまわん」 

 それよりもっと、頭からこめかみに手が下りる。
 そこには、もう血は止まっているが赤い引っ掻き傷があった。
 ぴくっと、痛みに顔を歪めるのを確かめ、乾きかけた頬まで落ちた血の筋を指で拭う。

「俺もお前も、手当てがいるだろう」
「いらねえ……」
「わけのわからん駄々をこねるな」

 再び、手首を掴んだ。
 軽く引くと素直に立ち、ついてくる。
 その最中も、何度も顔を気にしているようだった。
 ちらちら気にしてくるのを無視しながら、片手で額をおさえ、今日何度目か数えてもいない溜息をついた。
 そして、確信する。

(こいつとは……おちおち喧嘩もできん)

 殴られるたびに取り乱されては一々対応が疲れるし、めんどくさい。
 口よりも先に手が出るならば、気をつけても避け損ねることもあるだろう。それに全て付き合ってはいられなかった。
 泣いて取り乱す人間を見捨てることのできない相手は、考える。
 どうすればいいのか。
(ならば)










「不意打ちでも避けられるほど強くならなければいけないわけです」










「私は心の機微を感じ取れるほど器用な男ではございません。だからこそ、体の機微を見とれるように鍛えました」
「……それが、俺に組み手で圧勝する理由か?」
「別に、圧勝などしていません。組み手ですから。王が倒れているのは体力不足でしょう。
 いまだ王はまだ体ができあがっていませんし、実戦経験も乏しく、こういった組み手の型は不得手です。
 もっと王の得意分野に持ち込めば私など足元にも及びません」
「世辞はいい」

 王は、悔しそうに手を振る。

「いえ、確かに今は私が上ですが、後5年もすればそれこそ、右に出るものはいなくなるでしょう」
「やはり、お前が上か」
「失言でした」

 あっさりと頭を下げる。
 しかし、その表情はさほどまずいともしまったとも思っていないように見えた。

「俺は……」
「はい」
「前に思いっきり顔がヘコむほどバクラに殴られた」
「ええ、大変でしたね」
「バクラは、大笑いだったぞ」
「はい、王宮中に響き渡りました」
「ずるいぜ……」
「なんのことだかわかりません」

 男は、そう言って肩をすくめた。



 管理人の主張をさり気無く詰め込んだブツです。
 具体的にいうと、セト様は文武両道、実はかなり強いよ、セトバク幼馴染、さり気無くセト様長髪説ぷっしゅ、セトは実は鈍感・空気読めそうで読めない(さすが社長の前世)バクラヤンデレ、セトバク←王……等。
 詰め込みすぎな管理人です。
 ちなみに、回想部分は子セト、子バクで見てください。わかりにくい。
 今回はどっちかというとサイト初期に返って短めにまとめてみました。
 しかし、どう見ても文才がありません、本当にすみませんでした。
 とりあえず、うちのバクラはセト様のお顔大好きです。
 自分でも驚くくらい好きです。おかげで拒絶反応が出ます。ヤンデレ!(違) 
 きずつけちゃいけないきれいなものだいじなものなんですよ、ひどい捏造。
 しかし、王様もただ単に長期的な肉弾戦(体力、成長中の腕力的なものを見て)が不得手なわけであって、本当は弱くはないです。今回の話の展開上ちょっとセトを持ち上げてますが、一応。
 時間軸がいまいちわかりませんが、闇のゲーム前の歴史だと思ってください。
 王宮惨劇前。でなければもう、パラレルでお願いします……。

 本気で喧嘩もできない関係だったから、友達とも言えなかった二人。



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