小瓶と、率直な文字の書いた箱を両手に持って、彼は笑っていた。

「最近は、ネットでなんでも手に入って便利だよな」
 
 目の前で開封される箱。
 そこからでてきた物を見て、僕は赤面した。
 しかし、彼は取り出したものを見せ付けるように薄い唇にあてる。
 そのあまりにも大胆な彼の行動に、俯き、言葉が出せない。
 すると、彼はまるで猫みたいにしなやかに近づいてくると、目の前に座っって顔を覗き込んでくる。キレイな微笑。
 唇をちろっと舐めると、いきなり僕の頬に小さく口付け、ねだるように唇を少し尖らせると目を閉じた。
 少し顔を突き出せば、触れる距離。
 濡れた唇が柔らかいのを知っている。湿った口内の温度も、味も、舌の感触も。
 ごくりっと、喉が鳴った。

 この誘惑に、耐えられるわけがない。

 目を閉じて、唇を重ねる。
 知っている柔らかさを感じてすぐ、舌が唇を割って入ってきた。
 歯列を舐め、口を開くように催促してくる。
 小さく口を開ければすぐに彼の舌が僕の舌に絡み付いてきた。ちょっと、彼の方が温度が低い。
 応えるために舌を動かすと、すっと、引かれる。
 思わず目を開けると、笑っていた。
 また、ちょんっと、触れて、引く。これは、もしかして誘われてる?
 そう思って、舌を追いかけた。開かれた唇に舌を入れ、舌を絡める。
 まるで正解とでも言うように、彼は舌に吸い付いてきた。
 そのまま、甘く舌をじゃれあわせて、唇の端から唾液が伝うのも気にせず角度を変えて、続ける。
 少しの隙間がもどかしくて、中々離れられない。
 思考すら放棄して、溶けるように、お互いの温度とか、感触とか、味の境がなくなるまで絡めあった。
 さすがに舌が疲れて、唇がふやけそうになったので、離れる。
 彼は満足そうに笑って、唇を舐めた。

「なあ、ゆうぎぃ」

 くすくす笑いながら、彼は後ろに倒れた。
 広がる髪に顔をすりよせ、手を広げる。
 抱きしめられるのを、待つように。

「しようぜぇ、ゆうぎぃ」

 飼い主に構ってほしがる猫みたいに、色っぽい目で見つめられる。
 キスの誘惑に耐えられなかったのに、この誘惑に耐えられるわけがない。
 僕は、ちょっと考えて、彼に覆いかぶさる。
 見上げてくる彼は楽しそうで、僕の首に片手を回した。
 そして、もう片方の手で、ソレを目の前に突きつけてくる。

「えっとね。終くん……僕、それはまだ早いと思うんだ」
「そうか?」

 ちょっと不満そうな顔。

「もっとそういうのはさ。手順もいるし、色々もっと準備しないと……終くんが痛くて辛いんだよ?」
「別に、俺様それくらい平気だぜ……?」
「平気じゃないよ」

 僕は、眉根を寄せた。
 彼がいくら不満そうな顔をしても、これは言わなきゃいけない。

「僕が平気じゃないんだよ。
 終くんが痛いのも、苦しいのも、傷つくのも、僕はいやだ。平気じゃない」

 彼は、あんまり自分を大事にしない。
 傷ついても平気な顔をして、痛くても我慢する。
 些細なことで僕に涙を見せるのに、重要なことはいつも黙ってしまいこんで隠すから。
 僕はいつもそれが気に入らない。
 些細なことでも泣かせてあげるけれど、重要なことなら、痛いならもっと、きちんと泣いて「痛い」と言わせてあげたいのだから。
 平気と、耐えさせてはいけない。
 だから、しっかりと言った。

「僕は、誰よりも終くんを大切にしたいんだよ」

 大事に、大事に、大事にしたい。
 誰よりも、甘やかして、優しくしたい。
 傷つけたり、苦しめたりしたくない、絶対に。
 しばらく、彼は僕を見ていた。青い瞳で、うかがうように、じっと。
 僕も、まっすぐ見返す。

「わかった」

 彼は、頷く。
 そして、顔の横に置いた僕の手に顔をすりよせる。

「じゃあさ、きょうはおれさまがいたくくならないようにして」

 甘えるような声。

「大丈夫、俺様、予習しといたから……」

 少しだけ体を起して、僕の耳元で
 して。
 っと、呟く。
 本当にわかったのだろうか。
 そんな疑問を抱かずにいられなかった。










 ちゅぐちゅぐと、水音がする。
 水音は、少し高い声が合わさり、卑猥な雰囲気を作り出す。

「ゆぅぎぃ、ゆぅぎ、あ、そこ……ひゃっぁっ!」

 彼は、口元を飲みきれなかった唾液で汚しながら震えた。
 足の間、最も敏感な部分を舌がなぞる。
 下から上に、あるいは裏側の一部を丁寧に集中して、時折強く吸われた。同時に根元や先端を親指でぐりぐり押される。 
 それだけで、少年は頭の中を真っ白にし、声を抑えるのも忘れて感じてしまう。

「ん、ああ、んあぁ……!」

 唾液と溢れる透明な液体が混ざり合い、とろとろと足の間を伝って指と床を汚す。
 赤く染まった頬も、情欲に浮かされた瞳も、流れる汗にも、明らかな快楽の色がある。
 しかし、その中にはどこか、戸惑いの色があった。
 その理由は、恐らく足の間にある少年が原因だろう。
 少年は舌で彼のソレを愛撫しながら、ぐぢゅりと、指が動した。
 ぬるぬると、こちらはローションで汚れた指。しかし、現在はそれ以外の液体でも汚れ、俗に言うコンドームに包まれ、彼の内部に侵入している。
 それが、ゆるく出し入れを繰り返し、中を探った。

「ひゃっ……」

 きつい内部は指を締め付け、それでも飲み込んでいく。
 第一関節を曲げたり、内壁を押し返す。探るように、どこか怖々とした手つきで、指は奥へと進んだ。
 こりっと、小さなしこりのようなものに触れる。
 気になって少し強く刺激した瞬間、彼の背が跳ねて、まるで弓のように反り返った。

「だっだめ、あああ、そこだめ、いぁ、あぁぁぁぁ!!」 
「いたい?」

 少年が聞く。
 彼はぐっと、唇を噛んで首を左右に振った。

「ちっがぁ、ぅん……そこ、すご、く、あぅ……っ!」

 瞳に涙を溜め、閉じそうになる足を、彼は自分の手で抑えて開く。力の篭った指が、あまり肉付きのよくない足を引っ掻いた。
 肌を傷つけていることに気づいた少年は、舌を彼のソレから、指の引っ掻いた部分へとかえる。

「ふ、ぁん!! ぇ、いっや、や!」

 いきなりくると思っていなかった部分への感覚に、更に体が跳ねる。
 滑った手が離れ、足が閉じかけた。

「終くん、無理しないでいいから」
「むぅり、してなぁぁあっ!!」 

 体をよじり、中から与えられる痺れを逃がそうとする。
 だが、うまくいかずにただ行き場のない熱が下肢に止まりたまらない。 
 それなのに、指はまだ中を蠢いている。

「うあ!! ひゅ、ああ!!ふっ!
 ゆぎ、ゆうぎ!! そこ、あんまり、さわっちゃ! へん!!」
「ここ……?」
「くぁああああ、んんっ!!」

 こりこりと、ゴム越しに反応があった部分を強く撫でる。
 彼は流れる涙が飛ぶような勢いで首を振った。
 掴むものを求めて、シーツを握り締める。
 絶頂の衝動が止められない。
 声もなく、彼は白い液体を少年の顔と足に撒き散らす。
 痙攣はやむことなく彼の体を襲い、快楽が突き抜けたまま帰ってこない。
 うまく呼吸ができないのか、咽ながら口を魚のようにぱくつかせた。

「あっごめん……」
 
 慌てて指を引いた少年に、彼はやっと安堵の息を零す。
 少年は袖で顔を拭いながらも、困ったような顔で彼を覗き込んだ。
 数十秒、激しい呼吸を繰り返す。
 そして、落ち着いたのか、ぽつっと呟いた。

「は、ぁ、は……じ、じぶんで……」

 荒く息を吐き、滲む視界を拭うと悔しそうに眉根を下げた。

「じぶんで、した、ときは、こんなじゃなかったのに……」

 かすれかすれにそう呟く。
 自分で、の部分に少年は苦笑した。
 彼が最初に言った「予習」。
 それは、さっきのような行為を受け入れるために、少年に手間をかけさせないように自分で中に指をいれ、自分でほぐしたということだ。
 確かにそのおかげで少年の指は入りやすく、痛みや嫌悪感も少ない。だが、どうにも自分の指と他人の指は違うようで、感覚が違うと戸惑っているのだ。

「いや?」

 いやならもうやめるよ?
 そう心配そうに問う少年に、彼は首を振る。

「いやじゃ……ない……」

 掴んだシーツを手繰り寄せ、ぐしゃぐしゃと揉む。
 珍しく言いよどんでいる様子に、少年はますます心配そうな顔になった。

「そ、の……」

 ぎゅっとシーツを抱きしめて顔を突っ込む。



「……ゆうぎのゆびだと、きもちいいから……」



 語尾がどんどん小さくなっていく。
 それに比例するように耳が、先ほどより真っ赤になっていることに少年は気づいた。

「痛いとか、気持ち悪いじゃなくて?」
「さいしょは……それもあったけど……きもちよすぎて、だめだ……」

 少年の顔も赤くなり、しかし思わず笑みが浮かんでしまう。
 ちゃんと、自分が彼を感じさせていた事実が嬉しいと感じた。
 彼が、羞恥を誤魔化すように、口を開く。

「遊戯、そろそろさあ……」

 もじっと、腰が揺れる。
 少年は声に反応して顔をあげた。

「いれるか……?」

 主語のない問いに、少年は一瞬考える。
 そして、言葉の意味に気づくと、首を横に振った。

「だめだよ」
「もういいだろ……その、恥ずかしいし……」
「だって、終くんの中、狭くてまだ二本しか……」

 っと、そこまで言って、ちょっと率直だったかと口を閉じる。
 彼は、不満そうに少年を見上げるが、少年はそれでも首を横に振った。
 こういうとき、いつもなら折れやすい少年だが、折れはしない。

「とにかく、今日はまだだめ」
「今日、は?」
「そう」

 彼は諦めたようにため息をつく。

「俺様、平気なのに」
「だから、終くんが平気でも、僕は嫌なんだよ」

 足の間から体を起して、彼の頬に口付ける。
 それを引き止めるように、少年の服を彼は掴んだ。
 少年の動きが止まる。
 
「なあ、遊戯」
 
 真剣な瞳で、確かめる。
 声に不安が含まれた、怯えているようにも聞こえる弱弱しい言葉。

「俺様のこと、好き?」
「好きだよ」

 即答だった。
 ぽんっと。
 少年の思考よりも早い、当たり前。
 言った後、少年がちょっと照れて、笑ってしまうほどに。
 それでも、目をそらさない。

「好きだよ、終くん」

 落ち着いた声音で言い直す。
 真実が濁りなくこもった強い言葉だった。
 まっすぐ、揺れることなくそれることのない視線。
 それは、全ての不安も、恐怖も払う。くすぐったくなるくらい純粋なもの。
 彼も笑った。

「ゆうぎ」

 今度の口付けは、彼から。

「俺様も、好き」

 世界中の愛の言葉を一つに凝縮させたような愛しさだった。
 万感の、一言。
 なんら照れも躊躇いもなかった。あるのは、真実だけだといわんばかりに。
 少年は、こつんっと、彼と額をあわせる。

「ごめんね」

 口から出たのは、謝罪。
 彼は、きょとんっと、目を見開いた。

「ごめんね、不安にさせて」
「俺様、別に……」

 視線が泳ぐ。
 否定しようとして、うまく言い訳が出てこない。
 図星をつかれたのか、彼はひどく気まずそうだった。
 少年は、目を閉じる。

「でも、僕は終くんが好きだから」





 好きだから。





「焦らなくてもいいんだよ。無理しなくてもいいんだよ」
 
 ゆっくり、言い聞かせるように、触れた場所から、伝われと言うように。  何度も、口にする。
 いくら言っても言い足りない。そんな表情で。

「好きだよ。不安にさせてごめん」

 あまりにも優しい声と言葉は、まるでしみこむようだった。



 今回は、前回できなかったを、目標にひたすらいちゃいちゃえろえろ。
 ゆるやかにエロ路線へ。純愛どこいった!!(管理人には無理です)

 そして、今回は終くんが実は不安だったんだよ。っという話。
 性急さだとか、大胆さだとか、狡猾さは、だいたい不安と孤独からきてます。
 自分は男だし、AIBOは優しいし、モテるし、ちゃんと繋ぎとめておけているのか怖くて怖くてたまりません。
 でもって、それを汲み取るAIBO。AIBOはちゃんと口にすることができる子って信じてる!!
 遊戯のフェr&後ろ、終くんの自分でやってた宣言がやれて楽しかったです。ネットって便利!(おい)
 ちなみに、冒頭の箱と瓶はゴムとローションです。ゴムをいじる受けって萌える。
 そして、指にゴムつけてぐちゃぐちゃもいいなって、俺はエロですが、変態ですが、なにか問題でも(ありまくり)

 しかし、今回の反省点は、終くんに遊戯の耳をかぷってできなかったこと!!
 他のCPではできないこと、やれないことをバンバンやりたい!!



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