目を覚ますと、お日様が空高く登り、部屋は灯ではなく、太陽光によって明るくなっていた。
 視線を巡らせれば、すっかり身支度を整えた王が水を飲んでいる。

「ああ、起きたか」

 そう、ごく普通に言うと、水差しからコップへ水を注ぎ、盗賊へ渡した。
 喉はからからに渇いていたし、状況を整理する為に落ち着くことが先決だった盗賊は素直に水を受け取る。一気に口から喉、そして胃へと流し込みおかわりを無言でコップを突き出すことで促す。
 庶民には絶対に飲めない冷えた水の味を今度はゆっくり味わいながら飲み干し、一息。


「なんで今昼なんだぁ!?」


 そして、叫んだ。

「お前が珍しく起きなかったから、放置したらどうなるか見てみたかった」 

 王は楽しげに言葉は本当だった。
 いつもなら盗賊は事が済めばさっさとどこかへ消えてしまうか、はたまた少し気絶するが、太陽が少し顔を出す頃にはいつもいなくなっているのがほとんど。
 今日のように、これほどまでに高く太陽が昇っているのに起きれないことなど初めてだった。
 原因は恐らく、単純な疲れだろう。
 ちょっとしたゴタゴタに巻き込まれてしまった盗賊は、すっかり習慣になった王との勝負もほったらかしに走り回っていたのだ。
 なんとか片付き、ほとんど徹夜ではあったが、睡眠もそこそこに王に勝負をしかければなぜかとてつもなく不機嫌な王は盗賊に圧勝、いつもより手酷く、しつこく、数多く盗賊の体を貪った。
 思い出してみれば、うっかり王の腕の中で気絶した瞬間、太陽が昇っていたようにも思えた。

「起せよ!!」
「いつも起さなくても起きるだろ?」

 王の物言いに苛立ちながら盗賊は、自分が今だ裸なのに気づき、周囲を見回す。昨日無理矢理脱がされ放り出された服を探しているのだが、何故か見当たらない。王の部屋がそれなりに広いとはいえ、まさか目の届かないところがある訳はない。

「俺の服はどこだ」
「女官が持っていった」
「女官!?」

 盗賊は思わず魚のようにぱくぱくと口を動かした。
 怒りのあまり言葉を失ってしまったのだ。
 女官が、ここに。つまり、それは「裸」で「王の寝台の上」で「のうのうと寝ている」姿を見られたということだ。

「誰がこの水を持ってきたと思っているんだ?」

 言われてみれば、王がわざわざ水を持ってくるはずが無い。この王ならばそれくらいやりそうだが、普通は止められる。

「大丈夫だ。よく言い含めてある」
「なにをだよ!!」

 その時の王を想像すると、盗賊は頭を抱えるしかない。
 けれど、今はそれを考えても仕方ない。
 とにかく、ここから離れる為にも服は必要だった。

「俺の服はどうなるんだよ!!」
「女官が洗ったら返してくれるそうだ。
 言っておくが俺が止めたんだがな。すごい剣幕で「王の部屋にこんな汚いボロ布を置いておくのは私どものプライドに関わります!!」っと言われては俺も逆らえない」
「神にも等しい王が逆らえないわけねえだろ!!」

 盗賊は頭痛すら覚えながら、ヤケになってもう一度コップを王に突き出す。
 酒でも煽りたい気分だったが、なんとなくこの王の前では飲んでも酔えそうにないのでやめた。
 コップを突き出してもいつまでも水を注がない王を睨みつければ、水差しから直接水を飲んでいた。
 王がそんな下品なまねしていいのかよっと言う前にアゴを持ち上げられ、唇を塞がれる。
 舌と共に冷たい水が口内に入り込み、一瞬拒んだせいか唇からあごへ水が伝う。
 ごくりっと盗賊が喉を鳴らしても、王は唇を遠ざけなかった。そのまま、舌を絡め、上顎の裏をざらりと舐める。
 噛み付いてやろうと思った瞬間、王はさっと舌を抜くとあごに伝った水を舐めとる。

「なにしやがる」
「水の代金だ」
「そりゃ、お高い代金で」
「そうか? まだ足りないと思うが?」

 王は今度は素直にコップに水を注ぐ。
 よく考えれば王に水とはいえ手酌をさせるなど恐れ多いのだが、その時の盗賊は気づかなかった。

「ちくしょう、この俺様が昼までねっこけた上に服とられるなんざ……笑い話にもなりやしねえ」
「じゃあ、辞めたらどうだ?」

 からかうような王の口調に「辞めるかよ!!」っと怒鳴り返す。
 しかし、考えてみれば手持ち無沙汰だった。
 体にはなにもまとっていない上に、ここは王宮のど真ん中。そして、勝負をしている訳でも、負けて王に貪られている訳でもない。
 そんな状況で長くじっとしているのは初めてだった。
 いっそ、勝負をしかけるかとも思ったが、興が乗らない。

「湯浴みでもするか」

 ぽつんっと王が呟いた。
 あまりにもごく自然に呟かれたせいで、うっかり聞き逃してしまいそうな言葉。
 適当に「すればいいだろ」っと相槌を打つと、王は盗賊からシーツを剥ぎ取った。

「おい!!」
「お前も入るんだぜ?」
「はあ! なんでだよ!?」
「いくら一応拭いてるからって気持ち悪いだろ?
 昨日は随分と汚れたしな」
「てめえが汚したんだろうが……」

 恨みがましい視線を無視し、王はすばやく盗賊にシーツを適当に巻きつけると手近な帯でシーツを縛り簡易の服を作る。

「庶民が湯浴みなんて滅多にできないだろ。チャンスだぜ?」

 拒まれることなど微塵も考えていない表情。
 盗賊はこのまま逃げたくなったが、確かに、体も気持ち悪く、こんな簡易の服では逃げても恥をかくだけである。
 しかも、

「動けないって言うなら、女官を呼んでやってもかまわないぜ?」

 っと、今にもその向こう側へ女官を呼ぼうとする王を止める。

「行く……」

 振り向いた王の顔は、ひどく、ひどく楽しそうだった。



「ち、くしょ……」

 地面を掘りタイルを敷き詰めた風呂に下半身を浸らせながら盗賊は呟いた。

「あっち……」

 熱い。
 湯が、ではない。どちらかといえば湯は快適な温度であったし、それほど長く入らなければ湯当たりも起しもしないだろう。
 熱いのは、盗賊自身の体と頭の芯だった。
 顔を真っ赤に火照らせ、だくだくと溢れる汗に眩暈を覚えながら、逃げるようにタイルの隙間に指をかけたが、それを背中に覆いかぶさる王は許さない。
 巧みな手つきで前をいじりながら後ろにも指を増やしていく。

「湯のせいで、ほぐれてるな」

 その褐色の背中を舐め、軽く肩を噛む。
 それだけで盗賊は震えてタイルに顔を突っ伏した。
 がんがんと熱さのせいでぼやけていく視界。水音がびしゃびしゃと聞こえ、背や腰を濡らす。
 すでに、足には力が入らず、ぐったりとタイルに体を預ければ、王は好き勝手に盗賊の体を扱った。
 吸い込む湯気が、喉からも熱さを増幅させる。

「こ、れが……ふ、風呂代かよ……」
「ああ」

 肩甲骨をゆったりと舐め上げ、湯の中に引きずり戻す。

「せっかくだ、ゆっくり浸かれ」
「あ、んたが……なにも、しなきゃ……つ、か、れ、る……」

 どっぷりと浸かれば王に背中を預けてしまうことになり、屈辱を感じたが、それすらも曖昧になっていく。
 足を持ち上げられ、浮力で軽くなった体を持ち上げられた。
 あてがわれた質量にこれから起きることを感じる。
 普段ならば身を硬くするところだったが、意識が白く染まり、それどころではなかった。
 気づけば、いつもより深く、熱く王を穿たれていた。

「うああぁぁぁぁぁ!!」

 口の中に湯が入り、悲鳴が濁る。
 持ち上げられた足が水面をかき乱し、盗賊と王の顔を濡らした。
 その透明な湯が白く濁るのにそう時間は、かからなかった。
 

「さっぱりしたな」

 すっきりした表情の王はそう呟いてぐったりと寝台に寝転ぶ盗賊の頭を拭く。
 白い髪は水気を飛ばしながらしっとりと落ち着いている。
 いつもぼさぼさの髪しか見たことの無かった王は少し新鮮だと小さく笑った。
 その笑みに反応することなく、ぼーっと盗賊はされるがままだった。
 すっかり湯当たりを起しているのだろう。ちょっとやりすぎたかと王は少しだけ反省する。

(このまま、この部屋で飼ってしまいたい)

 捕まえて、縛って、閉じ込めておきたい。

 欲しい。

 王はそっと、自分と同じ匂いになった盗賊の頭に顔を埋めた。



 最後にいちゃつくのがデフォになりそうです。
 口移しとお風呂プレイ!
 もう、中からも外からも熱くされちゃってバクラ大変★
 というか、エロばっかり書いてる気がしました。これからもエロです。
 本当は香油でぬるぬるプレイとかもしたかったんですが……(黙れ)


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