寝台から起き上がった盗賊を、王はまた腕の中に閉じ込めた。
嫌だと抵抗する盗賊の疲労につけこんで王は目を閉じたままその髪に顔を埋める。
汗と性と、そして砂漠と盗賊自身の匂い。王にとって、ひどく遠く、焦がれるもの。
それは、いつだって王の胸をかきむしり熱くさせる。
「王様、離せ」
だから、そんな言葉に耳を貸さず、ゆっくりと髪から耳へと顔を動かした。
目を開かなくてもいいほど何度も抱きしめた盗賊の体を巧みに撫でながら、やんわりと耳を噛む。
ぴくっと反応をしたのを確認すると、次は噛んだ部分を舌先で愛撫した。耳の裏を何度も往復し、時折軽く噛みつけば、耳と体が再び熱くなっていくのを素肌で感じる。
「や、ぇ、ぁ、やめ……」
激しく抵抗しようとする盗賊の胸の突起を強く潰せば、押し殺せなかった声が漏れた。
そのまま弄り続ければ、すっかり王に快楽の味を覚えさせられた体は素直に反応を返す。
特に、密着した状態では、隠しようがない。
耳と胸の突起をいじられているだけで盗賊は体の力が抜けていくのを覚えた。
「もう、やめろっつ、ってんだ、ぁ、ろ! 俺は、かえる、ぅ、ああっ……」
なんとか王を引き剥がそうと体勢を変えようとするが、なぜか上手くいかず、翻弄される。
唾液でべとべとになった耳が、冷たさを感じた。
気づけば、王の下はうなじを通り、肩へと降りている。
王は、うっすらと目を開いた。
決して、女のように丸みも柔らかさもないがっしりとした肩は、しかし無駄なく引き締められ、今は汗でしっとりと湿っているせいか妙に艶かしい。
「バクラ」
首元で聞こえる囁きに、盗賊は首をすくめる。
王にこういったとき名を呼ばれるのは苦手だった。
何故か、首筋に鳥肌がたち、ぞわぞわしてたまらないのだ。
「もう一回……」
「断る!! ん、ぁあ!」
うっとりするような甘い声で囁くが、盗賊はきっぱりと拒絶する。
だが、手はとまることなく胸の突起をこね、引っ張り、好き勝手に弄ぶ。
そこに肩への愛撫が始まれば、盗賊は口を開くたびに喘ぎ声を漏らした。
「今日は中に出してないから、それほど急がなくてもいいだろ?」
「そうそう、ん、何度も中に出、ぁ、されてたまるか!! てか、手、やめぇ、ひっ!」
「ほら、もうお前も途中でやめられたら辛いだろ?」
「つらくな……はぁ……から、だ、べとべとで……気持ちわる、ぃ……んぅ……」
「そんなこと、気にならなくなる」
指が、胸の突起から離れ下へと降りていく。
そして、突起を弄られている間中持ち上がっていた中心に触れ、少し強く握った。
ふるりと、盗賊の体が震える。
完全に勃起しているソコを握ったままこすり上げられれば、目尻に涙が浮かんだ。
「ひゃああ!」
「勃ってるな……もう、胸でも完全に感じるようになったな」
背で感じる笑みに、盗賊は必死で首を振った。
絶対に認めたくないと唇を噛む。
王はそんな盗賊に苦笑し、そろそろ認めないものかと思案した。
だが、盗賊のそういう意地っ張りなところが嫌いではない王はわざと片手で胸の突起を刺激しながら、中心を触る手を緩めた。
「ひゃぁ……ん?」
途端に声に不満そうなものが混じった。
それを隠すようにまた唇を閉じるが、胸の突起に爪をたてられ、すぐに開くことになる。
指先で転がすように揉めばぎゅっと、盗賊は目を閉じた。
「む、むねやめ……いたぁ……」
「感じてるくせに」
「ちが、ぁ、ちがう……」
「ほら、さっきから胸をいじったらこっちも反応してるぜ……それに、こっちも……」
ぴたりっと、中心から下に指がズレる。
ひくっと、ソコが蠢いた。
指がくるという予測に、体が強張る。
けれど、指は表面にあてられただけで動かない。
先ほど散々王によって荒らされた場所はまだ感触も生々しく、柔らかい。
だが、王の指は入る様子もなく、胸の突起を更につままれる。
「んぁ……ぅ……?」
「ほら、こっちも、こうやって胸をいじると」
「ぁ、」
「ひくついて気持ちよさそうだぜ?」
「あっ……ちがう、つって、んん!! ぁ、ろぉ……」
「自分で触ってみれば、わかるぜ?」
すうっと、王はシーツを握っていた手をとって無理矢理後ろへ導いた。
王には見えない顔が、怯えに歪む。
「ほら」
指を後ろにあてられ、身を硬くした。
そこがどうなっているかなど混乱しすぎてわからないが、とにかく怖い。
だが、指が動けば体は素直に感じ、快楽の熱が押し寄せる。
目を見開けば、溜まった涙が零れて落ちた。
「い、いや……」
「ほら、わかるだろ?」
「わ、あるか、ぁあ!!」
「なら、いれてみれば、もっとわかるぜ……」
ぬるりと、王の指が入ってきた。
王のもので広げられたそこは、きつく締めつけるものの、指をたやすく飲み込む。
思わず逃げる体を追いかけて一本入れた指を入口に盗賊の指も一緒に入れた。
王の指とは違う自分のごつごつとした太い指の感触と、自分で自分を締めつける感覚に激しい拒否感を覚える。
「いっや、ぁぐ、いやだあ……」
「ほら、わかるだろ?」
「やめ、きぃ、もちわるい……」
「そうか? ここはお前の指も嬉しそうに締め付けてるぜ」
「やめ、ろぉ、やだ、ひぎっ……やめ、やだ……っ!!」
「そんなに嫌か?」
激しく、首を縦に振る。
それで引くかと思えば、王は更に指をねじこんだ。
「ぃ、あああああぁっ!!」
そのまま、ぐりぐりと内壁を抉り、耳元で囁いた。
「なら、「王様の指でしてほしいです」って言ってみろ」
「!」
言えるかっと、歯をくいしばる。
しかし、更に深く指を突き入れられ、中をかき混ぜられれば理性も誇りも崩れていく。
自分の指が自分の中にある事実を、受け入れたくない。解放されたい。
「言わないなら、別に俺はいいんだぜ?」
「………っ」
「お前も、このままじゃ辛いだろ?」
胸の突起をいじっていた手が、前に伸びる。
勃ち上がったままの中心をすっと、上から下へとなぞった。
無防備なそこは素直に快楽を背筋に伝える。
「ひぁん!」
「バクラ……」
何度も、弱くなぞりながら、中を広げていく。
「お、」
盗賊の口が、喘ぎ以外で開いた。
躊躇うようなか細い声が、小さく王の耳に届く。
「おうさ、まの……ゆび、で……」
「指で?」
「して、し……す」
「聞こえない」
「してほしい……」
ぐっと、喉を詰まらせる。
涙をぐいっと拭い、こうなればもうヤケだと叫んだ。
「王様の指でしてほしいです!!」
「色気がない」
けど、まあいいぜっと、王は盗賊の指を解放する。
自分の指の感触がなくなり、代わりに馴染んだ王の指だけが奥まで突き上げた。
「ふぁん!ぁふ、ひっ! ひゃっ! あ!」
ぐにぐにと中を指を回してかき混ぜながら、盗賊の太ももに勃ちあがった自身を押し付ける。
すっかり硬くなったモノをあてられ、体温が上がっていくのを盗賊は覚えた。
少しづつ、指が中を移動し、盗賊の最も感じる一点を突いた。
きゅうっといっそう強く締まったと同時に、王が握っている前が絶頂の予感を覚えた。
前はゆるくしか刺激されていないのに、後ろで感じて達そうとしている事実に、盗賊は血の気を引くのを覚える。
「やっやめ……うぐ……ぁ、ぃぁ……っ」
その声に応えるように指が抜かれた。同時に、前を握っていた手もはなされる。
もう少しで達しそうだというのに刺激の遠のいた体に切なさが走った。
それを押し殺すようにシーツを握る手に力を込める。
手が、つっと、腰を伝った。ゆっくりと腰を揉み、下へ降りる。
その手が、尻を撫で、広げた。
「っ!!」
そして、とうとう太ももに当たっていたモノが、あてがわれる。
熱い、どくどくと脈打つ楔。
無意識に逃げる体を抑えられ、先端が押し入る。
「ひゃ、ぁ、うぁ……ぃた、ぁあああああああああ!!」
もがきながらも、熱が集まっていくのを理解した。
痛みも嫌悪感もなにもかも、熱い本流に流されていく。
視界が一瞬真っ白に染まり、焼ききれたかのように揺れた。
「うああ、ぁ、ひゃが、う、ふっ、っ!!」
突き上げられるたびに、唇から途切れた喘ぎ声が飛び出す。
その声も次第に甘みを帯び、飲み込まれていく。
ついに、その言葉も、王を呼ぶ名へと変わっていった。
前をほとんどいじられていないというのに、絶頂の予感に震える。
直前で止められた体は貪欲に快楽をかき集め、貪った。
「おうさま、おうさ、おうさま、おう、さま、お、うさ……ああああぁぁぁぁ!!」
盗賊が目を開けると、そこには王はいなかった。
空っぽのベットの中で、なんとか起き上がり、体のだるさにまた突っ伏す。
体中はベトベトで、せっかく一回目は中にだされなかったというのに、二回目は出されてしまいドロドロ。
けれど、疲労と痛みに起き上がるどころか瞼を開けていることすらつらなかった。
なにもかも嫌になり、寝台に顔を埋める。
すうっと、呼吸すると、性の匂の中に、王の匂いを感じた。日向と、香が混じるその匂いは盗賊の心を落ち着かせた。
シーツを体に巻きつけ、もう一度、浅く呼吸する。
「って」
吸い込んでから、慌てて飛び起きる。
体の疲労も苦痛も振り切って、頭を激しく振った。
「なっなんで落ち着くんだよ!! おかしいだろ!! 違う!!
ちっちくしょう!! 違うからな!!」
ばんばんっと寝台をたたきつけ、褐色の肌のせいでわかりにくいが耳まで真っ赤にした盗賊は勢いよく立ち上がった。
ふらつく足を無理矢理動かし、足早に部屋を後にする。
途中で、一度振り返った。
「違うからな!!」
空っぽの部屋に、そんな声だけが響いた。
新年一発目エロ!!
ほだされほだされな盗賊でした!!
すっかりもう王様に調教されちゃって……かわいそうに……。
っと、言いつつ楽しく書きました。
すみません。
今年も、エロをよろしくお願いします。