※いつものごとく、捏造がヤバイ。
オリジナルのキャラがセリフだけ出てます。
バクラが歌歌ったり、楽器弾いたりしてます。
管理人キモチワルイ。
(いつか、貴方は、結ばれない恋をするでしょうね。だって、貴方はそういう顔をしているわ。
どういう顔かって?
私みたいな顔ってことよ。
だから、この歌を教えてあげる。いつか、歌うといいわ)
いつものように王が勝ち、盗賊が負けた。
勝って機嫌の良い王は、負けて機嫌の悪い盗賊をいつものように寝台に引きずり込み、押し倒す。
決まった手順のように盗賊は抵抗するものの、すぐに押さえ込まれた。
そうして、いつも通りに王の指が盗賊の肌を撫で始めた時、ふっと、盗賊の視線が珍しく部屋の隅に向く。
王は盗賊の注意が自分以外に向いたことに不機嫌そうに眉根を寄せたが、同じように視線を動かした。
そこには、この部屋では見慣れない、楽器が置いてある。
丸みを帯びた造詣に、5本の弦、ウードと呼ばれる、現代で言えばギターに似たそれを、盗賊王は見ていた。
「あれ、どうしたんだ?」
「家臣に貰った」
盗賊のつい漏らしたという言葉に、王は不機嫌さを隠すことなく答えた。
けれど、別段盗賊はその不機嫌さを気にした様子もなく、見つめている。
その華美とはいえぬが、精緻な細工はそれだけで芸術作品のように美しい。
だが、それだけで、これほど盗賊が見つめる理由はない。
少し異様な雰囲気に、王は不機嫌を忘れて問いかけた。
「どうした?」
「あんた、あれ、弾けんのか?」
的外れの答えに、王は少し驚く。
「まあ、一応な」
それがどうした?
っと聞いてみても、特別な反応は返ってこなかった。
無理矢理こちらに引き戻してもよかったが、なんとなくその瞳の色が気になり、聞き返す。
「お前は、弾けるのか?」
「わりぃかよ」
意外な答えに、王は二度目の驚きを覚えた。
なんとなく、盗賊のその容姿から、楽器どころか、音楽をたしなむようにすら思えなかったのだ。
せいぜい、歌を歌うくらいだろう。勝手にそう思っていたが、違うようだった。
驚いた顔のまま見ていると少し拗ねたように盗賊は目を伏せる。
「そりゃ、王様のように、上品な音色は出せませんがね」
だが、おもしろいとは思った。
この盗賊が楽器を弾くところが見てみたいと。
どんな歌を弾き、どんな音色を奏でるのか、それはうまいのか、ひどく興味が湧いた。
それに、盗賊の瞳に浮かぶ感情が、気になったのだ。
王は少し体を離すと問う。
「弾いてみるか?」
今度は、盗賊が驚く番だった。
いったい王が何を言っているかわからないという表情に、王はなんでもないかのように笑って見せた。
「いや、弾いてみろ」
「命令かよ」
「弾かないなら、今すぐ犯す」
「……」
「弾くなら、今夜はそれで許してやるぜ?」
少し考えながら、盗賊はずるりと体を王の下から抜き、楽器に近づいた。
恐る恐る手にとり、王の体にはちょうどよいが、盗賊には少し小さいウードの弦を幾度か弾くと、ベットの縁に座る。
そして、首だけで振り返ると、芝居じみた声で聞いた。
「王様、今宵はどのような曲を御所望でしょう?」
「任せる」
「では、私めの知ってる曲で」
ゆったりと寝転がったまま答えれば、楽器に視線を向け、ゆるやかに弾き始める。
最初はあまりのたどたどしさに大丈夫かと思ったが、すぐに響きは確かなものへと変わっていった。
宮廷の楽師にはさすがに敵わないものの、酒場で歌姫とともに出ればそれなりの人気が出るだろうという調べは、意外と王の耳を喜ばせる。
しばらく試し弾きのような旋律が流れ、手が止まった。
拍子をとるように幾度か手と足が揺れ、今度は、歌が響く。
後に残るような、甘い音色。
王からは見えぬ盗賊の唇が小さく開き、言葉が紡がれる。
そして、それは、意外なことに、甘い甘い、恋歌であった。
今日3度目の驚きに、王は口を開いたが、何も言えず閉じる。
盗賊の声は、思ったよりも高く、歌い慣れているのか、意外なことに恋歌にしっくりと馴染んでいた。
歌詞は身を売る女が、身分の高い男に恋をしたというもので、それが妙に盗賊のイメージと合わず、王は妙な違和感を覚えずにいられない。
だが、歌を止めるほどではなく、ただ黙って聞いていた。
歌が佳境に入るほどに、どこか歌に寂しげな、悲しさが交じり合う。
そして、女が男に睦言を囁く途中、歌は急にぴたりと止まった。
「続きは?」
王が問えば、ごろんっと後ろにひっくり返る。
「忘れた」
「嘘だろ」
盗賊は答えない。
楽器を抱えたまま、天井を見ていた。
どこか、懐かしむような表情に見え、王は気に入らない。
「誰に、教えてもらったんだ。その歌は」
ずるりと体を引き摺って盗賊の顔を無理矢理覗き込む。
盗賊は、苦い顔をして目をそらした。
「関係ねえだろ」
「ある。俺が気になる」
じっと、真っ直ぐ見つめる瞳に、盗賊は居心地悪げに弦を弾く。
意味のない音が響き、唇が開いた。
「……昔、世話してもらった人だよ……。
コレ弾くのがうまくてよ……なんでかこの歌が好きで、バカみてえに歌ってたから、覚えちまった。
まっコレがいくらか小遣い稼ぎになったし、色々役にもたったし……世話になった奴の中じゃ、いい奴の部類に入る」
「死んだのか?」
あまりの直球の言いように、盗賊はますます顔を歪めた。
「死んだ」
歌に混じる寂しさの正体はそれかと、王は一人で納得する。
つまるところ、盗賊にとってその歌は、恋歌というよりも鎮魂歌なのだ。
この盗賊に、あんな甘ったるい恋歌を歌わせるほどの、存在がいた。
それだけで、王はひどく苛立ってたまらない。
誤魔化すように盗賊の額に唇を落とした。
「なにすんだよ」
「続きは?」
「……」
「弾かない気なら、抱いてほしいってとるぜ?」
誰かのために盗賊が歌うのは気に入らなかったが、王は意外と盗賊の歌を気に入っているようで、催促する。
盗賊は大きくあからさまな溜息をつくと、王を見上げた。
「一晩中歌えってか?」
「さあ?」
盗賊の髪をいじりながら、王は言う。
「子守唄でも、歌ってさしあげましょうか」
「それもいいが、今は」
続きを。
盗賊は、王に頭をぶつけないように起き上がると、楽器を抱えなおす。
そして、また幾度か弦を弾くと、続きを歌いだした。
女が、男に愛の言葉を囁きながら、拒絶する。
自分の身分の違いを、決して、結ばれぬ運命を嘆いて。
王は歌う盗賊の背に抱きつく。
歌をやめようとする盗賊の手を押さえることで続けるように促しながら、首筋に顔を埋める。
ゆるりっと、盗賊の髪を撫で、肌を撫でる。
それは、いつもの愛撫ではなく、妙に優しいものだった。
まるで、誰かを慰めるような、そんな不思議な心地よさがある。
ゆったりとした音色に王が目を閉じれば、するりと睡魔が頬撫で、意識を遠くした。
歌は続く。
その声は小さく、部屋に止まらねば消えるほどの、微かなもの。
男は、女を連れ出そうと説得するが、それでも、女は拒絶した。
その長い歌の最後を聞く前に、王はずるりと体を落とし、寝台へと沈む。
それを背で感じた盗賊は手を止め、唇を閉じる。
「寝たのか?」
声をかけるが、反応は返ってこない。
やれやれと盗賊は楽器を適当に下ろすと、立ち上がった。
懐かしい歌を王の前で歌ってしまったと、少し恥じる。
(バクラ)
いつか、呼ばれた響きは、美しかった。
その声でこの歌を歌えば、そして、楽器を弾けば誰もがうっとりとするような音を奏でた人。
それほど長い間ではなかったが、行き場のない盗賊の面倒を見ていた彼女は、この歌ばかりを歌っていた。
(バクラ、この歌わね)
彼女から教わったことは少ない。
その少ない中のいくつかは、この歌と、楽器の弾き方、そして歌の意味。
(結ばれぬ相手に誓うため歌よ)
ふと、盗賊は王を見下ろして、歌の続きを紡ぎかけた。
だが、途中で気づいて思いとどまる。
寝た相手に聞かせることなどないと。
盗賊は、そっと部屋を去る。
歌の名残すらそこにはなく、王の寝息だけが響いた。
お互いに、いつかの彼女の鎮魂の為に、歌が歌われたと信じながら。
盗賊王は、楽器が弾けて歌がうまいよっという捏造をしたいがための話。
あるいは、盗賊王の心境の変化とか、過去を捏造したいがための話です。
私だけが楽しい仕組みです、すみません……。
人口甘味料をぶちこんだ感じだと思ってください。
でも、声優さんはテラ歌がうまいので、いいですよね、いいですよね!(よくねえ)
実は、最初は管理人のポエミーな歌詞があったんですが、よく見るとすごい恥ずかしくて消しました。
文章が変なところは、歌詞があったのに、消したところです。うわあい(涙)
このオリジナルキャラは今回だけの使いきりです。
ちょっと詳しい設定を入れると、歌と楽器のうまい娼婦です。過去に身分の高い人に恋して結ばれなかったけど、心はその人に捧げたまま、恋歌を歌います。
まあ、死に掛けたバクラを拾って、それなりに生きていく知恵と、手に職のような歌と楽器と、後、踊りなんかも実は教えたとかそういう設定です。
順調に、盗賊は王様にほだされ中。
愛が深まれば深まるほど、憎しみは増し、悲劇は溢れるように整っていくのでした。
次は、エロを……!!