肌寒いはずの夜も、王の下で体を蹂躙される盗賊には熱かった。
 体はすでにどちらのものかかわからない体液で塗れ、王を埋め込まれた場所からはかき混ぜられあわ立った白が溢れている。
 もう、何度も快楽を刻まれた内部を抉られ突き上げられ、悲鳴は甘い喘ぎ声へ、拒絶していたはずの瞳は蕩けるように潤んでいた。浅ましく足を王の背に回し、自ら王に貪られるのを望んでいることすら気が付かない。
 汗にまみれた体に舌をはわされ、今日何度目かわからない絶頂を迎えた。連動するように中を締め付ければ、相手もきつそうに顔をゆがめると中に吐き出し、盗賊の体をくねらせる。

「ううああ、ひゃぁああ! おっおうさあ!!」

 ずるりと引き抜かれ、身震いする。
 お互い荒く肩で息をしながら、終ったと安堵するように大きく息を吐いた。
 熱に浮かされた瞳が王を見据え、呼吸をする為に開かれた唇からちろりと赤い舌が覗く。汗と口から零れる唾液を舐め上げる動きは妙に艶っぽい。
 ぞくりっと、王の背に痺れが走り、盗賊の足を強く握りなおすと引き寄せた。

「ぁひ、や! ま、」

 慌てた指が背に爪をたてるが、王はかまわず、再び勃ちあがったソレをすっかり王の形に馴染むそこに突き入れる。

「いううああああぁ!! 」

 何度も荒らされたソコは、きつい快楽とともに苦痛を与える。敏感な体はガクガクと意識を飛ばしそうになりながらも飲み込んだ。
 それは、身を裂くようなものとは違う、脳をかき混ぜられるような複雑なもので、たまらない。
 抑えることのできない声が突き上げられるたびに途切れては発せられる。

「まあ! まだ!! てえ、やぅ気かあ!!」

 うまく呂律が回らず溢れる唾液とともに吐き出せばぐいっと体位を返られ、足を震わせる。
 数えるのを途中でやめてしまったほどの回数をこなしたとは思えない激しさに

「あふぅあああ! んん!! この!! っ! へ、ん、たい!」

 ぴくぴく律動にあわせて引きつる足をなでられ内部を絞るように蠢かせた。
 枯れたかと思った涙がまた滲み、代わりに声がかすれていく。

「うぐぁ!! ひっひぁ! ぃゃ……」

 水が飲みたくてたまらず唇を開くが、入ってくるのは空気だけでよけい喉がかわいた。しかし、すぐに足を更に開かされ、唇が降りてくる。どろりと舌とともに注がれる唾液を飲み込み舌から貪るように吸い付いた。
 ぴちゃぴちゃとわざと音を立て交じり合っていく。
 止まることのない腰の動きに目を閉じた。
 目を閉じることでより鋭角になる感覚は王のソレの熱さや硬さ、動きを明確にする。少し膨らんだように感じるモノは、また白い欲望を吐き出すために脈打った。

「んぐ、んっ! んんん!!」

 ぐいっと、ある一点を強くぐりぐりと突かれ舌を噛みそうになりながら目を見開いた。
 いまだトロトロと先端から白い液を吐き出すそこがまた張り詰め、強い刺激の期待に無意識に腰が浮く。
 同じ場所への集中的な責め立ては盗賊の意識を溶かし、唇を外させた。
 喘ぐ喉から甘い声で盗賊は王を呼ぶ。
 その瞳は完全に正気の色を失い、指が王の髪に差し込まれぐしゃぐしゃと撫でた。
(飛んだか)
 王が虚ろな悦びに浸りきった瞳を見て判断した。

「バクラ」

 普段ならば絶対に呼ばない名で呼ぶ。
 その声に反応したのか、唇が笑みの形につりあがった。

「あいしてる」

 零すような言葉。

「あいしてる」

 二度目は、しっかりと呟きなおし、体勢を変えてぴったりと肌と肌を合わせた。

「お、」

 盗賊の体が跳ねる。
 必死に王の名を呼ぶ唇が、別の単語を紡ぎだす。

「おう、さ、ま、あいしてる」

 どうしようもなく、夢うつつな言葉。
 意識がはっきりしているはずの王ですら、これが現実なのかわからないような声だった。
 盗賊の指が髪から首に伸び、うっとりとなで上げる。



「なにが欲しい?」



 王は、まるで初めて盗賊に会ったときのように聞く。
 あの時と変わらぬ尊大さと、渇望を持って。
 だから、盗賊もまた、その時のように腕を広げ、囁いた。


「王サマ、あんたの首が欲しい。俺様がこの手で刎ねた新鮮な血の滴る首がほしい」


 あまりにも、ハッキリした言葉だった。
 これだけは確かだとでも言うようにゆるく王の首が絞められる。

「じゃあ、俺との遊戯に勝ったらやろう」

 王は笑って頷いた。
 ただただそれだけ。
 それだけの、意味のない会話。
 確かめなくても、それしかない。
 そう、王と盗賊の間には、この約束だけが、繋がりだった。





「だから、俺はまだお前に首はやらない」





「なんだこれ?」

 王は、寝ぼけ眼の盗賊の手に何かを握らせる。

「みてわからないのか?」

 盗賊の開いた手の中、そこには金と精巧で緻密な細工縁取られた赤い宝石がはまった指輪がある。
 素人でも一目で高価だとわかる美しさに盗賊はしばらく手で転がし、蝋燭の明かりに宝石を照らした。血のような赤が反射し、盗賊はなぜかぞくりぃと震えた。

「指輪だ」
「そりゃ、みてわかるだろ。なんでこんなもん俺様によこすんだって意味だよ」

 少し考えて、指にはめる。人差し指にはまったが、少しきつい。
 盗賊として王に貰ったことは気に入らないが、高価な指輪を返す気はない。ただ、理由を聞かないと気持ち悪かった。


「記念」


 気まぐれに目を細め、王はちいさくあくびをする。

「なんのだよ」
「今日はお前が俺のとろこに通い始めてちょうど100夜。お前が100敗した日だぜ」

 そして、にやっと人の悪い笑みを浮かべた。

「なっ……!! ぐっ……!」

 盗賊は怒鳴りそうになるのを抑える。

「数えてたのかよ……」
「お前は数えてなかったのか?」

 王の言葉は嘘ではない。屈辱的なことに、100敗本当にしてしまったのだ。そして、また盗賊も数えていた。
 この部屋に通い始めて、100夜目を。
 だからこそ、ここで何を言っても言い訳にしかならず、負け犬の遠吠えでしかない。思わず指輪をたたき返してやりたかったが、盗賊の性が宝を手放さなかった。

「俺の首から滴った血は見せてやれないが、血のように赤い宝石だ」

 大事にしろよ?
 王はそう呟いて目を閉じる。
 あまりにも無防備な姿に、今すぐ殺してやりたくなったが、衝動を抑えて、王とは逆に起き上がった。

「次こそ、てめえの首刎ねてやる」
「楽しみに……ふぅ……してるぜ」
「あくびしながら返事すんじゃねえ!!」

 よろよろと足をふらつかせながら、盗賊は王の部屋を出る。
 ふと、見上げた月は多少眩しいほど明るい月。
 そうっと、月に翳した指輪の宝石が鋭い赤さを光らせる。
 盗賊はそれをしばらくぼんやり見つめ、そして口元に運ぶ。冷たい質感は特に盗賊の胸を騒がせたりはしない。



 騒がせない、はずだった。



 100作品目、ありがとうございまーす!!

 まあ、色々ありましたが、これが100作品目です。
 なんとも、このサイトらしい100作品目になたっと思いますが、皆様どう思われたでしょうか?
 エロ&ラブー。
 そして、少し短めです。エロをちょっと濃厚にしようとして失敗した感がひしひし……。
 まあ、一番やりたかった100夜目&指輪をぷれぜんつができたので満足です。
 これからも、王バク及び、コノサイトをよろしくお願いします!
 3000年前は、久々というのは秘密。



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