口の中をまさぐられるのは気持ちのいいことじゃなかった。
 だから、思わず歯を立ててみれば、嬉しそうに笑われる。
 被虐趣味かと言ってやりたかったが、口の中に指があるせいでうまく声が出ずに顎に唾液が伝った。
 上顎の裏や頬の内側を撫でられると妙な感覚が背筋に走る。
 その上、舌の奥の方にまで手を突っ込み、ざらりとやるものだから、呼吸のフリして強く噛んでやった。
 痛みに一瞬歪んだ顔とか、王様の血の味が口の中に広がって、妙な気分だったから舌を絡めてやる。
 ああ、ちくしょう、なんだかむかつくくらい嬉しそうだ。
 しばらくそうやって口の中を堪能したかと思うと口からやっと引き抜かれた。

「俺の血のお味はどうだった」
「まじい」

 舌を突き出してやると、ざらりと撫でられた。
 本当に趣味の悪い王様は、そのまま自分の口の中に持っていく。

「その割には、熱心に舐めてたぜ?」
「俺様、中に王様の血入れる気ないから」

 呟いて、自分の状況にぞくりと震えた。
 すっかり指に集中していたものの、すでに一度出したばかりだというのに張り詰めた中心や腹、足はすっかり晒しだされ意思とは逆に王様に触れられるのを待っている。
 指を舐めらされた理由も、十分理解していた。
 これからを考えると、腹の下の方が、恐怖に引きつる。あの感覚は何度されても慣れない。
 思わず眉をしかめると、王様は考えを読んだのか腹を撫で、たっぷりと唾液に塗れた指をみせびらかすように目先で揺らす。
 睨み付けると指がすっと引かれ下へと降りていく。
 見たくなくて目をそらす。
 待つという時間は苦痛だった。それが短いものでも長いものでも。
 どくどくと早まった心臓が無駄に頭に血を送り込む。
 指が触れられ、目を閉じた。何度も繰り返された痛みと気持ち悪さが内臓を強張らせた。
 それでも、呼吸を忘れない。唾液に咳き込みそうになりながらも、整えた。
 指が、ゆっくりと侵入する感覚に、背骨を直接撫でられるような錯覚と痛み、整えた呼吸が乱れるのを覚える。首を振り、どうにか逃がそうとするが、うまくいかなかった。
 中を探られ、かき回される。気持ち悪さだけのはずが、自分の中心は萎えることなく先走りを溢れさせ、羞恥と屈辱だけがいつまでもどろどろと心にわだかまる。
 もう嫌だと思わず口から漏れる。その声は掠れて乱れ、聞けたものではなかった。
 馴染んだ指が一点を突き上げ、びりびりとなにかが走る。
 快楽というには強すぎる刺激に何度も身を捩って逃げようとするが二本目の指が入ったところで、口から悲鳴が漏れた。
 脳の奥が追い詰められ、体温が上がる、思わず噛んだ腕から血の味がした。
 王様と変わらない味のはずなのに、なにか違うと感じる。
 鼻からうまく呼吸ができず、声が止まらない。
 涙で滲んだ視界の中で、王様の顔が近づいてきた。
 頬を舐められどうしようもない疼きが襲う。やめろっと手で払おうとするが、うまくできなかった。
 3本目の指すら飲み込んだ瞬間、我慢できずに達した。
 自分の腹を自分のもので汚すのは情けなくてしかたがない。
 王様は上手く見えないけど、笑っているのだけはすぐにわかった。
 頭の芯が熱くて何も考えられなくなっていく。恐らく今頭の中を覗き込めば下半身同様ぐちゃぐちゃなのだろう。
 一度、唇を奪われ、それから指が抜かれる。もう今日何度目かわからない震え、もううまく判断すらできない。
 声を殺すはずの腕が王様の首に絡んで肌同士の密着を増やす。
 弛緩した足が小刻みに痙攣するのがわかった。
 考えなくてもわかっている体は無意識に足を開きあてがわれた瞬間息を吐く。

 衝撃。

 閉じられない口から聞き苦しい声が飛び出した。
 そのまま内臓まで飛び出しかねない激痛、足掻く手が予定調和のように王の背を抉る。
 生々しい動きで自分の内部が王様を締め付けた。
 それは、拒絶の動きのはずなのに、王様は気にせず腰を進めてくる。
 これほど激痛と気持ち悪さを感じているのに萎えない自分の自身が恨めしい。
 その動きの一つ一つを感じて肌があわ立った。痛い、苦しい、気持ち悪いというのに。
 けれど、指先にぬるりと汗以外の液体を感じた瞬間、頭が冷静になっていくのを感じた。
 指先の赤を見て、それを口に運ぶ。
 中に入り込もうと必死の王様は自分の肩口でなにが行われているかわからないだろう。何度味わってみても自分の血との明らかな違いがわからない。それなのに違うと思えるのはなぜか。
 すっかり王様の足の付け根とと自分の付け根が引っ付きあった頃、そこは自分とは独立した生き物のように蠢き馴染んでいく。
 声を殺すくらいの理性を取り戻して唇をかみ締めるとその唇を舐められる。
 無駄に舐めるのが好きな王様は頬だとか額だとか耳だとか、抵抗されない今だとばかりに舐めたり軽く唇を落としてきた。首を少し捻って拒絶してみるが、捻った耳を噛まれる。
 そこで、内部が抉られた。
 津波のような感覚が思考を再び持っていく。
 自分の声も王様の声も遠くなり、ただなにもかもがどうでもよくなっていた。
 王様の荒い呼吸と、律動が奥に響く。

「バクラ……」

 呼ばれたことのないはずの名前で呼ばれた気がした。



 起きると、そろそろ夜が明ける。
 眠る王様を見下ろして、過ぎる殺意を抑えた。
 まだ、殺さない。殺してなど、やるものか。
 脱ぎ散らかされた自分の服を拾い上げ、まとう。
 多少汚れているがこれくらいかまわないと軽く払って一度だけ、王様を振返る。

「なんで、名前なんて……」

 それ以上は口にしなかった。
 なんとなく、有耶無耶にした方がいい。



 王バクのエロい人は玉砕されました。
 くっキャラ視点でエロって結構難しいです。王様視点にしてスケベ心満載にすればよかったと後悔。
 今回のテーマは口の中をまさぐる&血で興奮するです。実は、3でやったのの裏返しみたいな思いをこめていたのですが、玉砕。
 パソ読みの方はわかると思いますが、窓の上の青いところに書いてあるセリフと王様のセリフが口調を変えただけという。
 とりあえず、凝ると失敗するので、次はただエロくいきます(黙れ!!)



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