「あのね、ベル、あの女の人、ママンのこといじめたの! 私にあっちいけっていったり、パパンに近づいて体くっつけたりしたの!
ママンをいじめる人は許せないよね? パパンにくっついていいのは、ママンとレプレだけだよね?」
青年は、少女を見ていた。
対する青年は、頷く。
「でしょ、だからね、この女の人は悪い人なの!」
怒ったように頬を膨らませる様は、それはそれは愛らしかった。
「でもね、ベル、聞いて! 私いいこと思いついたの!!」
少女が笑う。
白い、まるで兎のような柔らかな少女だった。
「あのね、ママンとパパンが結婚するお手伝いにね、とってもいいこと!」
無邪気に青年に走りより、見上げる。
青年も、少女に笑いかけた。
そして、その髪をくしゃくしゃ撫でる。
「あのね、パパンとママンを邪魔する人がみんないなくなったらいいと思ったの!!」
だからね、レプレ、あの女の人にバイバイしたの。
ルッスは人を傷つけちゃだめっていってたけど、悪い人だからいいよね?
真っ赤な瞳。
くりくりといつも美しい瞳は、今日は濁りきって、美しい銀色は血にまみれていた。
けれど、青年は少しも驚かない。少しも躊躇わない。
どころか楽しそうに笑うだけ。
「うしし、レプレは、頭よくなったじゃん」
「えへへ、そうかな?」
「でも、まだお片づけすんでないし」
「え、お片づけ?」
「レプレ、顔と服、血だらけ。しかも匂いもすごいから鮫にだって気づかれちゃう」
「あっそっか!!」
「ま、後は王子やっとくから、レプレはお風呂はいっときなよ」
「うん!」
跳ねるように少女が走る。
その背中を見送って、溜息。
見下ろした先には、血まみれの体。よく見ると、ぴくっと、一瞬だけ動いた。
「ったく、レプレはまだまだ爪が甘い……けど、まあ、俺たちのお姫様が汚れたら困るし、いっか」
ナイフを取り出す。
「オカマとむっつりに、後片付けいっとこ」