私、思うの。
 私もパパンと一緒でたまにすっごく、知らないことが、人の心がわかるの。
 だからね、そこで私たちは止まってしまう気がするんだ。
 他の人はね、ママンとかルッスとかベルとかマモとかレヴィとかみんなみーんな、知ろうとわかろうとがんばるのに、踏み込むのに、私たちはすぐ立ち止まっちゃうから知ってるけど、わからないの。
 満足しちゃうの。
 だからね、私たちはなんでも知ってて何もわからないんだって。
 パパンは、ママンがパパンのことすごく、すごくすきだって知ってるでしょ?
 あれ、パパンどうして逃げるの? 私が話してるから逃げちゃだめ!!
 私は知ってるもん。口にしなくても、見てれば、大好きだって、知ってるもの。ルッスが言ってたけど、ママンは私じゃなくてもわかるくらい、パパンのこと大好きなんだけど。
 でも、パパン、そこに満足してない?
 ママンがパパンをすきだってこと、離れないってこと、知ってて、安心してない?
 睨んでもだめ、私は怖くないもの。
 ねえ、安心してないなら、パパン、言って。
 ちゃんと、声に出して、私に教えて。
 パパンも、ママンのこと好きだよね? ねえ、パパン。
 誤魔化しちゃダメ。許してあげない。大事なことよ、パパン。


「……愛、してる」


 万感の、想いを込めた言葉だった。
 たった数文字で、少女の心が温かくなるような、そんな強いもの。
 少女は、輝くように笑った。思わず、彼も笑うほど、嬉しそうな愛しい笑顔。
 その銀の髪を撫でる。少女は、撫でられたのがよほど嬉しいのか小さく声をもらして笑う。

 なぜか、嫌な予感がする。

 赤い瞳が、しっかりと彼をとらえた。
 服の裾をぎゅっと掴む。 
 それだけならば、ひどく愛らしいというのに、なぜか彼は嫌な予感がしてたまらない。
 少女は、無邪気に口を開いた。
 


「じゃあ、次はママンの前で!!」



 私に言えたんだから、ママンにも言える!

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