ザンスクになり損ねた。



「俺たちにとって一番輝いた時間は、会ってから半年までだった。
 理由は簡単なことだぜえ。祭りっていうのは、前の方がおもしろいんだからよ」

 その後のことも、後片付けも、考えなくてよかった、そんな瞬間が一番楽しかったね。

(今は……)


 お前が何も知らぬ猫ならばよかった。
 そうすれば私はお前を膝に乗せ、撫でることもできたのに。
 お前が何も知らぬ猫ならばよかった。
 そうすれば私はお前を素直に愛することができたのに。
 お前が何も知らぬ猫ならばよかった。
 そうすれば私はお前の前で涙を流し、抱きしめてやることができたのに。

 しかし、お前は猫でなく、私も猫でなかった。
 ゆえに私はお前を膝に乗せ撫でることも、素直に愛することも、涙を流し抱きしめてやることもできはしない。

(ボスとスクをイメージして、でも、猫じゃないんだ)


 さようなら、と貴方は言いましたね。
 それがどれだけ残酷な言葉か知らず。
 貴方は、あの子に自分は弱さになるからといいましたが、まさか、まさか。
 そんなことは一切ないのです。確かにあの子は貴方を得て弱くなりました。でも、それは矛盾のない強さのために必要な要素だったのです。部分だったのです。ただ強いだけの存在などどうやって存在しましょうか。そんな脆い張り詰めたものに何の価値がありましょうか。
 あの子は貴方という強さを得ることで弱くなれたのです。
 それなのに貴方はあの子を置いて、さようなら、などとよく言えたものです。
 ああ、これであの子はただ強いだけの存在になりさがりました。
 もう貴方が帰ってきたところでしょうがないでしょうね。なんと言ってもあの子は意地っ張りですから。そして鈍感なのですから。

(強いものは脆い、弱いものは柔らかい)


 赤い瞳の貴方から送られた鳳仙花。
 銀色の貴方から送られた黄水仙。
 ああ、ならば私はワスレナグサを抱きしめましょう

(花言葉がぴったりでした)


 恋は墜落死寸前です。
 愛は飛び降り自殺するでしょう。
 なんであなた方がそんなに高いプライドを持っているんですか。
 そんな高さから落ちたら即死なのに!

(ザン→スクのつもりだったのですが……)


 左手をつなぐのは嫌いだ。
 お前の体温がわからないから。
 お前の感触がわからないから。

 同時にそう思っても、決して右手は動かなかった。

(繋ぎたかったのに)


 彼は冷たい炎で焼かれてしまった。
 少年が、あまりにも普通にそう言ったので、私は少年が狂ったと確信してしまった。
 その通り、少年はすっかり狂ってしまったのだ。
 どれだけ時間が経っても、冷たい炎で焼かれた少年のように、あの日と同じままなのだから。
 しかし、なんとも残念なことに、冷たい炎から帰ってきた少年を見てすら、少年は狂ったままだった。

(戻ってきてください)


 夕日を見れば、いつも思う。
 あの夕日が二つあればといつも思う。
 そうすれば、この切ない記憶が、少しでも紛れると思えたから。

「……御曹司ぃ、はやく起きろよお」

(おねがいだから)


 やがて世界は終わるだろう。
 誰だって、いつかはそう、自分の死以外で世界の終末を見る。
 それは避けようが無く、いつまでも胸に突き刺さる。
 そして、彼もまた、その日終末を氷の虚像の前で見るのだ。

「ざ、」

 このとき、彼の世界は一度終わった

(世界は簡単に終わる)


 寝てんのかあ?

 遠くで声が聞こえた。

「ボス、おい、ボス、寝てんのかあ?」
「おい、呼び出しといてそりゃねえだろお」
「う゛お゛ぉい、どうせ徹夜とかしたんだろお。ゴーラのやつに寝かせろっつっといたのによお……」
「ボスさんよー」

 うっとおしい声。
 起すかと思えばただうろうろと動いている気配。
 出ていけと起き上がろうと思えば、すとんっと止まった。
 それが、思ったよりも近くだったからか、起き上がるタイミングを逸した。

「XANXUS……」

 すうっと、生身の指が額に触れる。

「寝てるときくらいは、もっと穏やかな顔しろお」

 眉間のしわを伸ばされる。
 そして、その指が離れても、気配が遠ざかることはなかった。
 完全に起きるタイミングを逃され、俺は瞼を閉じたままだった。

(目を開けることすら困難)


 結局、最後は背中しか見ません。
 だって、いつだって、彼は戦場で死ぬのですから。
 そう、貴方はいつもその背中しか見れないのです。

「んじゃまあ、行ってくるぜ、ボス」

 隣に立っていた頃は、横顔が見れたのに。

(今と昔)


 ああ、銀の月の孤独を知っているだろうか。 
 その長い髪のような透明な雫を誰か見ただろうか。
 銀の月の半分は今は凍り付いて冷たいのだ。
 私は触ったことがある。それは左半身でどれだけ熱い吐息でも触れ合う肌のぬくもりでもとかせやしない。
 彼の人よ、わかっているだろうか。
 銀の月の心は、貴方との蜜月と忠誠と勘違いと、そして一滴の恋でできていることを。

(キモチのワルイポエムだ)


 血の味のする口の中で、愛の言葉を噛み殺す。
 幸いなことにへこまされた顔は表情なんてわからねえし、目はさっきから左目が痛すぎて開かない。たぶん、痣になってやがるなっと確信。
 これで、愛してるなんて伝える方法はない。
 俺はあんまり安心したものだから、油断していた。

「スクアーロ」

 髪を捕まれて無理矢理持ち上げられた。
 見えないが、吐息を頬に感じる。
 軋む体は動けない。
 完全な不覚。
 あいつは間抜けに開いた俺の唇塞いで傷だらけの口の中を嘗め回しやがった。
 他人の唾液が染みてイタイ。
 ああ、ちくしょう、俺がいくら愛を囁けなくても、こいつに愛されてしまうのだと涙が出そうだった。

(愛のあるDV)




 言いようが無い。

「どこがすきかなんて言い訳はしません。
 どうせ一目ぼれなんです。感覚で、恋をして、本能で愛したのですから」

(すきは理屈や言葉ではない。人間は、まだ言語化することができない)


「ただただ生きてほしかったのでございます。
 生きていてくだされば他になにもいらなかった。
 そう、貴方が生あることこそ一番の救いだったのです。
 私の生などそこには微塵も考慮していなかった。
 だからこそ、私は無責任に言ったのです、生きろと」

(スク的理論?)


 人間と愛は背中あわせである。
 ほんとうにすぐ傍にあり、簡単に触れられるというのに、気づかなければ永遠に見つからない。

(後ろの正面だあれ?)


 俺は大海に落ちた一滴でよかった。
 お前の心に少しだけ波紋をつけて、そして消えていく。
 そんな存在でよかったんだ。

(小さな特別でありたかった)


 愛しい人、私を忘れないでください。
 私は覚えていますから。
 何度死んでも生まれても。
 私は貴方を愛していますから。
 だから、お願いします。
 殺してもいいけど、忘れないで。

(なんだこれ?)


 花を抱こう、白い花がいい。
 その両腕いっぱいの白い花。
 ああ、あの人に似た花だ。
 ああ、あの子に似た花だ。
 造花の方がいいだろうか。
 匂いがない花がいいだろう。
 そして、存在していない棺桶に敷き詰めて、今日はあの人と、あの子が死んだ日。
 そして、一匹の暗殺者が生まれた日。

 赤い花を抱こう。
 鉄の匂いがする花がいい。
 そうして、いつか死ぬ、一匹の暗殺者の存在しない棺桶に敷き詰めよう。

(剣帝の死闘後をイメージ)


「おれ、るっすがすきだ。すき」

 そういうと、彼はいつも笑っていさめた。

「すきって言葉は簡単に使ってはだめよ、スペルビだって、いつか」
 (本当に言いたいとき言えなくなってしまうわ)
 その時はわからなかった言葉。
 笑顔の意味。
 血まみれで、這い蹲って初めてわかる。


「ああ、ちくしょう、本当にその通りだ」


 こうなった今も、俺はまだ「好き」だと言えないでいる。

(傷ついたスクの自覚)


「最近、管理人やばいらしいじゃん」
「あー、頭がアレらしいなあ」
「お前もがんばらないと、サイトのっとられるよ? うしし」
「俺は俺の平穏のために別にのっとられてもいいって思えてきたぜえ……(白い悪魔たちを思い出す)」
「で、管理人このキャラ好きじゃん」
「話聞けよ」
「つまり、お前がズボン脱いでコートいっちょになれば人気回復じゃね?」
「そんな妙なプレイはぜってえしねえからな!!」
 (はっ! 白い悪魔たちの気配が!!)

(浮気持続中)




 ホストクラブヴァリアー

「ようこそ、スィニョリーナ、ホストクラブヴァリアーへ。
 私は総支配人のテュール、よろしく
 ちなみに、人気.3のスクアーロは私が指名しているから、指名しちゃだめだよ?」

(そんなパラレルがしたかった)


ホストクラブヴァリアーの日常

「なーなー、スクアーロー、今度デートしようぜー」
「うるせえ、しつけえんだよ、てめえはよお」
「客に向かってその態度なんだよ、ブーブー!」
「……ピンドン3本いれたら考えてやるぜえ」
「やった! いれる!!」
「モスカー、ピンドン入ったぞー! ドンペリコールだあ」
「なーなー、いついく?」
「考えたけど、やっぱりだめだあ、俺店あるし、昼間はねみぃ」
「ひど!!」

(続いてしまった)





 偽者の家族

 壊れたゴーラを見下ろした。
 雲戦で壊れたまま誰にも忘れられたゴーラを見下ろして、スクアーロはしばし思い出に浸る。
 世界がまだ、9代目と義父とルッスーリアだった頃。
 ある日その世界に義父が持ってきたのがゴーラだった。
 それは息子へのプレゼントではなかったが、その頃の子どもらしく、機械だとかロボだとかを好きだったスクアーロはそれはそれは喜んだもので、はじめの一月ほどはべったりくっついて離れなかったほどだ。
 感覚としてはペットに近かったようにも思うが、役割は兄のようだった。
 本来子どもの世話などの為に作られた訳ではないものは、義父の補佐というのが仕事のゴーラは、それでも、子どもが望めば言うことを聞いたし、遊び相手や護衛にもなっていた。
 それは当時の主である義父の命令であったが、スクアーロには嬉しかったように思う。
 自分が学校に通い始めた頃から、そしてXANXUSに出会いクーデターを起こすまでまったく会わなくなってしまったが、それ以降は、自分の知らないゴーラになっていたが。

「なあ、」

 車椅子から下りられない為ゴーラに手を伸ばすことはできない。
 ただ、ぽつりっと呟いた。

「なおるよなあ?」

(モスカのこと、忘れないでください)


「ボスー」
「………」
「ボスー」
「…………」
「う゛お゛ぉい、ザンザスー」
「……………………」
「……ザンザスー」
「………………………………」



「ザンザスさんとスクアーロさんなにやってるんですか?」
「なんかさー最近、他のキャラに構ってばっかでボスのことほっときっぱなしだったからボス拗ねてんだってー、うしし」
「助けないんですか?」
「何で王子が、つーか、王子も放っておかれてるんですけどー」
(御曹司も王子もかまってあげないと拗ねちゃう)


「欲しいもの?」
「おう、もうすぐ誕生日だろお、なんか好きなもん言えよ、やるから」
「好きなもの……ならなんでもいいの?」
「まあ、俺がやれるもんならあ、金とか」
「それでもいいけど、別のものが欲しいな」
「?」
「スクアーロ、僕、スクアーロが欲しい」
「はあ?」
「好きなものだったらなんでもいいんでしょ? ならスクアーロがほしい。
 僕の誕生日に休みをとって、ずーっと、その日だけは一緒にいてほしい」
「……そんなもんでいいのかあ?」
「あら、マーモンそれ、いい考えねー」
「うお! なんだあ、いきなり」
「私の今度の誕生日もそれにしてもらいましょうか、だって私もスクアーロ好きだもの」
「ちょっと、僕のアイディアだよ、マネするならアイディア料とるよ」
「あら、スクアーロとすごせるなら、お安いわ」
「……てめえらあ、恥ずかしいぞお」


「……」
「……」
「あっ、ボス、ベル、なにやってんだあ?」
「別に、王子は鮫なんていらないし!!」
「ドカスなんざ、ゴミ箱行きだゴミ箱」
「う゛お゛ぉい! いきなりなんで不機嫌なんだあ!?」

(素直になれないのはいつも同じコンビ)


「バカ鮫、お前さー、あの跳ね馬のやろうとどういう関係な訳?」
「はあ? んだあ、ベル、いきなりよお」
「妙に仲いいじゃん、お前ら、いくら同盟でも別ファミリーだろ、変じゃん」
「そうかあ?」
「変、もしかして、恋人同士だったとかだたったりして? うしし」
「おぞましいこと言うんじゃねえ!! あいつはただ同じ学校行ってた奴だよ!!」
「それにしては、仲良かったじゃん」
「……あ゛ー……まあ、あれだ、一応、友達だったからなあ……今は縁切手やったけどよお……」
「友達? バカ鮫に友達? 友達とかいたの!? まじで!?」
「いるに決まってんだろお。意味わかんねえなあ……別に、ディーノだけじゃねえぞお、後5、6人は連絡とってる奴がいるなあ……お前もいるだ「ばっバカ鮫のくせに! バカ鮫のくせに友達いるとか、意味わかんない! 死ね!!」
「う゛お゛ぉい!! なんだあ!?」
「ボスー! ボスー! バカ鮫に友達がいるってー!!」

(御曹司と王子には友達がいない……)


「るっす! るっす!!」
「あら、どうしたの?」
「あのな、あのな。けっこんっていちばんすきなひととするんだってな」
「そうよ?」
「だけどな、きゅーだいめはもうけっこんできないんだろ?」
「そうねー……あの人はもうしないでしょうね」
「だったら、にばんめにすきなるっすとおれ、けっこんするー」
「まあ、ありがとう……でも、それ、お父さんの前じゃ……言っちゃだめよ?」









「って、昔は言ってくれたのにひどいわ!!」
「忘れろお!!」(まじりっけなく本気のパンチ)

(若気の至り)


「スクアーロ」
「どうしたあ、マーモン?」
「ここ座って」
「?」

 彼が白いソファに座ると、その膝に赤ん坊が乗る。

「どうしたんだあ?」
「んー、なんでもー」

 っとつぶやいたと同時、その隣にいきなりどすっと王子様。

「ちょっと、バカ鮫、狭い、つめろよ」
「あ゛あ!? んだあ」
「王子が隣に座ってやってるんだからありがたく思ってよ」

 口げんかをしていると、王子様の反対側に男が座る。

「あらあらー、ソファでおしくらまんじゅう? 私もいれてほしいわ」
「ぐおおお!! てめえらあ!! 左右から俺を圧迫すんなあ!!」
「どうせなら、ボスも呼びましょ、ボスー」
「やめろおお!!」
「モスカも呼んでやろうぜ、うしし、押し花ならぬ押し鮫ができるじゃん」
「いっそ、レヴィも呼んだら?」
「んだあ、お前ら今日はなんでこんなに絡むんだあ!!」

 3人は顔を見合わせ、複雑な顔で声をそろえた。

「「「なんとなく」」」
 (君が最近どこかにいってしまったようで、さびしかったのです)

(このとき、ヴァリア以外のスクばっかり書いてました)


 ままん。

 その3文字はとても甘美で苦い味がした。
 噛み締めて飲み込むのも一苦労する3文字は吐き出すにもひどい苦痛が発生する。
 それでも搾り出してみれば、虚しく四散した。
 自分には最も縁が遠く意味のない言葉だった。
 そもそも、考える必要すらないはずなのに、どうしてこうも苦痛に耐えて吐き出してしまうのか。
 そう、いつものように虚しく四散するはずだったのに。

「あ゛マーモン、なんか言ったかあ?」


(変なの釣れちゃった!)

(大物を釣ったね)


 好きな人がいます。


 今日、スクアーロは死に掛けた。
 なにやってんの、バカじゃない。
 そう声をかけても反応なし。
 王子が光栄にもお声をかけてやってるのに、スクアーロは寝てる。
 ばかばかばかばーか、鮫。
 なにドジ踏んでるの、マヌケじゃない。とうとう脳まで鮫が回った?
 まさか、お前がそんなことで死ぬとかありえないし。
 あーあー……。
 よくわかんない機械がぴっぴとかうるさい、壊してやりたい。
 でも、マーモンに最初に釘刺されてるからしないけど。

「言っとくけど、俺、庇われたなんて思ってねーから」

 呟く。
 そしたら、思い出した。
 黒い背中。怒声。銃声。銀色がちらばった。俺の目の前で、ちらちらと、きらきらと。
 ゆっくり、倒れていくのを、見た。
 血が、じわりって地面を汚すまで見てた。

(意味、わかんない)

 心臓が、止まるかと思った。なんで止まりそうになったかはわからない。撃たれたのは、俺じゃないのに。
 喉になにかが引っかかってうまく声も出ない。
(す、あー……)
 銀色の瞳がすごく細い。
 なんだか、すごく無表情で、スクアーロは言った。

「俺は庇ってねえ」

 それから、スクアーロは起きない。
 俺がどんなに罵っても、からかっても。

「早く起きろよ、王子はお前にまだ嫌味言い切れてないんだから」


 好きな人がいます
  でも、一生気づく気ないけどね。

(死に掛けた鮫と、庇われた王子様)


 いつからか、名前を呼んでも笑うことがなくなった。
 それは、大人になったせいなのか、はたまた。

「スクアーロ」
 (スペルビ)

 銀の髪が尾を引いて振り返る。
 その姿は、幼少の頃に重なった。

「ルッスーリア」
 (ルッス!)

 呼び名が変わったせいなのか。

「るっす」
「ルッス」
「ルッスーリア」

 背を追いかけてくる小さな子どもは、いつか追い抜いて、自分が背を追いかけるようになってしまった。

「スクアーロ」

 いつか、この背を、追うとすらできなくなるのではないかと、そっと足を速めた。
 振り返る相手に安堵し、少しだけ溜息が出た。
(子供の成長が眩しい!)


「ごーら」

 拙い声が彼を呼ぶ。
 彼は声に反応し、立ち上がる。

「ごーら」

 その巨体に見合った速さで歩きながら、彼は探す。
 拙い声の主を探す。
 声の主はじっとしていないので、すばやく動けない彼はいつも探し当てるのが大変だった。
 それでも、探す。
 声が出せればきっと声の主を探すのにも、探し当ててもらうのも簡単だろう。
 しかし、残念ながら彼は声を出せないため、歩くしかなかった。
 近づいたり、遠のいたり。
 追いかけながら、確実に近づいた。

「あっ」

 そして、やっと見つける。

「ごーら!」

(子スクとゴーラはちょうなごむ)


 お互いの印象について、言葉を交える必要は無かった。
 ただ、目が合った瞬間、わかった。
 決して馴れ合えず決して交じり合えず決してわかりあえないものがあると。
 同じ物を見ていても、決して隣にな並べない、同じ場所に居ても、同じ場所へ向かっても、世界も道もまるっきり違うと。

 言葉も交えるそう思った。
 言葉の変わりに、拳で持って。


「もう、スクちゃんなんでいきなりレヴィちゃんに殴りかかったりしたの」
「はあ? あれはあいつが殴りかかってきたんだっつうの」
「うしし、俺は同時に殴りかかったように思ったけど、何、あいつ知り合い?」
「知らねー、初めて見たぞお。誰だあいつ」
「誰かも知らずに殴りかかるものじゃないわ……もう、レヴィちゃんはね」
「おう」
「あなたの同僚」


 再会の時も、拳で殴りあった。

(こいつとは、ぜってーなかよくなれねえ!)




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