伊単語10題・音楽用語



1.a suo beneplacito(自由な表現で)


「大好きだよ」
「好きよ」
「バカだけど、嫌いじゃないかな、うしし」

 扉を開けた瞬間、にやにや笑う3人に同時に言われ、スクアーロは動きを止めた。
 一人以外はまっすぐな好意を向けてくる言葉に戸惑うが、どうせ新しい遊びでも思いついたのだろう。
 そう判断して口を開いた。

「だれがバカだあ!」
「うしし、お前のことに決まってるじゃんバカ鮫」
「あら、そこなの?」

 喧嘩腰になるスクアーロに、ルッスーリアはあらかさまに残念そうに呟いて見せた。
 どかどかと大またで3人に近づき、手近な椅子に座り込んだ。

「何がだよ」
「てっきり、好きに返事くれると思ったのに、つれない子ね」
「……きもちわりぃ事言ってんじゃねえよ」
「あら、スクアーロは私のこと嫌いなの? 昔はルッスとけっこ」
「おう!! 好きだ好きだ!!」

 言いかけたその口をばっと閉じさせ、スクアーロは叫ぶ。
 よっぽど言われては困ることなのだろう、冷や汗を超えた脂汗をだらだら流している。
 何、何ーっと続きを聞きたがるベルフェゴールを威嚇しながらスクアーロはぎっと睨み付けた。
 抑えられた手を引き剥がしながら、ルッスーリアは言わないわよっと笑う。

「スクアーロ」

 名前を呼ばれ、見た方向で、マーモンが手を伸ばす。
 その仕草にスクアーロは慣れた調子で抱き上げる。

「どした?」
「僕のことは?」
「はあ?」
「僕のことは好き?」
「んなの、決まってるだろ」

 笑う。

「嫌いな訳ねえだろ」

 すると、呼応したようにマーモンも笑った。

「あらあら」

 仲良しねえ……と笑えば、ベルフェゴールが首をつっこんだ。

「ねえ、ねえ、じゃあ、俺は?」
「はあ……? 決まってんだろ」

 笑ったのも一瞬、すぐに不機嫌そうに顔を歪めた。

「好きな訳ねえだろ」

 言葉と同時、ベルは笑ってナイフを投げた。
 数分後、部屋が戦場になったのは言うまでもない。







(同じ言葉でも口調と表情でまったく別の意味に)









2.calando(次第に消えゆく)


 次第に消えゆく意識の中で、彼は小さく「痛い」とだけ呟いた。
 それは初めて彼の見せる弱音だ。
 いつも孤高に絶対に立ち続ける彼が、微かにもらした本音。
 それは何よりも心を抉った。
 ああ、彼は人間であったのだと。
 人間だからこそ、傷つけば痛み、壊れば死ぬ。
 そんな当たり前の事実すら忘れていた。
 あまりにも、強かったから。
 当たり前すぎて。





「大丈夫よ」





 小さく、声をかけた。
 すでに意識はないだろうその頬を撫で、髪をかき上げる。
 じっとりと汗で濡れた髪。
 閉じられた両目はあまりにも弱弱しい。





「大丈夫よ、スクアーロ」





 握り締めた手は自分よりも小さく細い。
 まだ成長しきっていない華奢な体が、より頼りなく見えた。





「大丈夫」





 荒い呼吸が耳につく。
 大丈夫。
 その言葉はまるで自分に言い聞かせているだようだった。







(ルッスだって、不安になることもあります)










3.da prima(初めから)


 それは、初めから恋だったんです。
 忠誠だとか、義務だとか、愛着だとか、長く一緒にいたからほだされたとか。
 そんなくだらない理由で濁してるからわからなくなるんです。
 いいですが、少し考えれば、いえ、考えなくてもわかることなんですよ、こういうことだ。
 つまり、好きなんですよ。大好きなんですよ。愛してるんですよ。
 そんな、多くても5文字程度の想いになんで気づかないんですか?
 貴方を見ていると本当にもどかしくて、イライラするんです。
 俺はね。大切にされてきました。だから好きな人は大切にしたいと思うんですそれが当たり前だったんです。
 ちょっと恥ずかしいですが、好きなものは好きって、口にするようにするようになったんです。
 だって、後悔するから。
 好きなものを好きといえず失うのは、後悔しますから。
 だから、貴方も少しだけ認めればいいんです。
 好きだって。
 それだけなのに。
 睨まないでください。睨んでも怖くないですよ。
 いえ、やっぱり怖いですから殺意は引っ込めてください。
 本当に、本当に不器用な人だ。
 きっと、好きな人どころか好きな食べ物だとか、お気に入りの道具なんかにも貴方は気づかないんでしょう。
 周りにはばればれなのに。
 だから、すぐそうやって手をあげるのやめてください。
 避けれるとわかってても怖いんですから。
 そんなことで貴方を呼んだのかって?
 違いますよ。たまたまお仕事のついでに説教を。
 だから、まず口で何か言ってください。
 後、机を壊すのもやめてください。
 そうやって、貴方は色々な物を壊してきたんですね。
 彼も、壊さないよう気をつけて。
 だから、扉を壊すのをやめてください。
 修理費、請求させていただきますからね。







(ドン・ボンゴレとヴァリアーボスの攻防) 









4.wankend(躊躇って)


 ぬくもりがほしいと思う時、決まってその子供たちは一瞬躊躇うのだ。
 誰もが当たり前のように受けるぬくもりを受けたことのない子供たちは、躊躇う。
 与えられたことのないものが怖くて、伸ばした手を振り払われるのが怖くて、いつも裏切られてきた子供たちは躊躇って、躊躇って、諦めてしまう。
 本当に、小さな、微かなぬくもりが欲しいだけだというのに。
 子供たちには許されたことがないのだ。
 だから、躊躇う。
 伸ばした腕を止め、伺うように見上げて、怯える。
 ああ、もしも今、手を振り払われたら。
 そんなことばかりが頭を巡る。



 ぬくもりがほしい、だけなのに。
  


 怯えながらもほしいと思う。
 何度振り払われても、裏切られても。
 それでも、躊躇いはなくならない。
 震える手が引かれるより早く、彼は手を掴んだ。
 そのまま、子供たちの手を引き寄せて抱きしめた。

「寒いな」

 小さく、呟かれる言葉。
 
「一緒に寝るか?」

 子供は、体温が高いから温かいと。
 そう言って彼は抱きしめた。
 手を握り締め、なんでもないように。
 もう一度躊躇った手が、その手を握り返した。

「寒いな」

 繰り返される言葉に、肯定する為に唇を開いた。







(誰でもいいですが、初期は黒曜イメージでした)









5.imperioso(傲慢な)


 血まみれの人間以外、そこには存在しなかった。
 銀の髪も、白い肌も赤く染めた男は、視線を巡らせる。
 その先には、黒髪の男が背をむけ立っていた。

「終わったかあ?」

 銀髪の男はその背を見つめながら聞く。
 黒髪の男は答えない。
 ただ、その髪の毛の先から血を滴らせ、立っていた。
 表情は見えずとも、絶対的に、孤高を持って、ただそこに立っている。
 その背を見ながら、銀髪の男は思う。

(似てる)

「どう見ても、僕ら以外に立ってる奴はいないみたいだけど」

 振り返った瞳の色は黒。
 男というには、少し若い顔には、返り血でまだらに染まっていた。

「ずいぶん、しおらしい顔だな。
 殺しが初めてって訳じゃねえだろ」
「君、うるさいよ」 

 黒髪の男がトンファーを構える。
 味方同士だというのに、流れるのは剣呑な空気。

「それとも、何か? あの犬野郎に会えないのが寂しいのかあ?」
「かみ殺すよ」

 からかうように口にすれば、言葉とは裏腹になぜか殺気が萎えた。
 表情に、じんわりと、何かが混じる。
 それは、この場にも返り血にも似合わない、温かいものだ。
 黒髪の男は、自分の表情に気づいたのだろう、苦笑した。
 そして、小さく、そうかもねっと認める。

(けど、似てねえな)  

「そういう君は、君のご主人様に会いたくないの?」

 銀髪の男は、答えず苦笑した。







(傲慢、だった人たち。「似たもの」に近いです。ボスと雲雀の違いは、雲雀の方がしがらみとかないので素直なこと)











6.caldamente(熱をもち)


 じくじくと痛む傷が熱を持つ。
 じわりっと溢れる血が玉のように膨れ、その内破裂した。
 広がっていく赤は少量。
 拭い取るよりも舐めとった方が早いだろう。
 そう判断して口に含めば、苦い鉄の味が広がった。
 唇から離しても、まだ赤い血を流し、熱さを持っている。
 意外と深いことに気づき、止血の為に適当な布で傷口を圧迫した。

「何、バカ鮫、怪我したの?」

 いつの間にか、近くにきらきらと太陽の光に輝く青年が立っていた。
 特別驚きはしなかったが、じっと傷口を見つめる青年に、顔をしかめる。

「うわ、血、出てるじゃん」

 無遠慮に血のうっすらにじんでいる手を覗き込み、楽しそうに聞いてくる。

「痛い、スクアーロ?」

 そう聞いてくる声には、純粋な好奇心が浮かんでいる。
 この青年は、血が出る怪我をした時の感覚を知らない。
 打撲や火傷等の血の出ない怪我の痛みは知っていても、切り傷や擦り傷等、少量の血であっても意識を保てず狂う青年は、その痛みを得られない。
 痛みを知らなければ臆することはないだろう。しかし、痛みを知らなければ簡単に無謀になる。
 それが、よいことなのか、悪いことなのかはわからない。

「痛い?」
「別に」

 そう呟いて圧迫していた布をそのまま包帯代わりに巻く。
 これくらいならば放っておいてもすぐに直るだろう。
 口うるさい同僚に見つかれば騒がれるだろうが、たいしたことはない。

「てゆうか、一応ヴァリアーのくせに怪我って本当にバカなんじゃない? うしし」
「うるせえ」

 言い捨てて追い払うように手を振れば、珍しく少しだけ神妙な顔で青年は問うた。
 
「刺されたらさ、やっぱ痛い?」
「はあ?」
「刺されてさ、血がどくどく出て止まらなかった、痛い?」

 血の痛みを知らない子供は、不思議そうに。

「痛いっつーか」

 記憶を辿る。
 切られたことも、刺されたことも、ついでに言えば殴られたことも山ほどあった。

「熱いな」

 そう答えると、青年は、興味が失せたようにふーんっと呟いた。








(ベルは血が出てる瞬間の痛みはないと思います。だって、記憶飛んでましたし)









7.tace(休止)


「ゴーラ」

 彼の最初の主である白髪の男の声が響く。

「ゴーラ」

 本来ならば、主の声は絶対であり、それが一音でも響いた瞬間、彼は動くべきだった。
 しかし、彼は動けない。
 今すぐ主の元へと行くべきだとわかっているのに。
 動くなという命令と、動くべきだという二つの命令がぶつかり合い、混乱する。
 主の近づいてくる足音。
 それでも、動けない。
 そして、ついに主が彼のいる部屋の扉へと到達した。

「ゴーラ」

 主の目線の先に、彼は居た。
 表情のない彼から感情は読み取れないが、主は彼が困っていると瞬時に正しく理解する。
 そして、同時に、笑った。

「おやおや、これは困ったね」

 彼の肩の上、零れ落ちるのは白に近い銀の髪。
 主の息子たる少年がしがみついたまま寝ていた。
 どこか困ったようにも聞こえる小さな電子音を、彼があげる。

「君がすぐに出てこないから何かと思えば、これは大変だ」

 主は、息子が何を勘違いしたか、巨大な彼をアスレチックのようにして上ったり乗ったりして遊んでいるのを知っていた。
 そして、彼はそれに「息子を可愛がって欲しい」という主の願いに沿って許している。
 恐らく、その途中、疲れて寝てしまったのだろう。

「御曹司の前では兄ぶっているけれど、やっぱりまだ子供だね」

 楽しそうに息子に近づくと、優しくその頭を撫でた。
 穏やかな寝息をたてながら、ぎゅっとしがみつくその手に、主は微かな愛おしさと殺気のごとく膨れ上がる嫉妬心を覚える。
 しかし、それすら飲みこんで、主は笑った。

「仕事を頼もうかと思ったんだけど、こちらの方が重要だろう起きるまで休んでいてもいいよ」





 でもね





「俺よりスペルビ懐かせたらぶっ壊すぞ」







(お義父さん容赦なし。)









8.lamentoso(悲哀をもち)


「極東の国にさ、俺より10代目に相応しい人がいるんだって」

 茶色の髪とアーモンドのような色の瞳を持つ少年は、怯えるように目の前の男の表情をうかがった。
 長い銀の髪と同じ色の瞳を持つ男は、その少年より格段に高い背を持って少年を見下ろしている。
 その瞳は、続きを促すように鋭い。
 少年は、震えた。

「でさ、俺、こんなでしょ? 一応ヴァリアーのボスのくせに殺しもできないし、威厳もないし……だからさ、そっちの人を10代目候補に、って声があるんだ」

 ねえ。

「スクアーロ。
 もしも、そっちの人がさ、10代目候補になったら、そっちいく?」

 だって、俺情けないし、弱いし、臆病者だし、ドジだし、チビだし、頭悪いし、何もできないし、マフィアにちっともむいてないじゃん。
 だから、いいんだ。
 むしろ、10代目候補から外された方が、嬉しいんだ。ほっとするんだ。
 今まで、ルッスーリアとか、ベルとか、マーモンとかが色々面倒見てくれたけどさ。
 俺はだめだめな、ダメツナだから。
 いいんだよ。
 もしも、そっちの人の方がいいって思ったら俺はいいんだ。

「あのなあ」

 あきれた様な声。
 頭痛でもするかのようにこめかみを抑え、男は答える。

「お前が俺のことどう思ってどうしてほしいかなんて俺にはさっぱりわかんねんぞ。
 でも、これだけは覚えとけ」

 俺が、一緒に育ったのはお前だ。俺と一緒に育ったのはお前だ。俺が忠誠を誓った相手はお前だ。俺とここまできたのはお前だ。俺が認めたのはお前だ。俺を兄のようだと言ってのも、俺が、弟みてえに思ってるのも、お前だけだ。
 どんなになまっちろくたってたって、どんなにあまったれだって、どんなに何もできなくたって、お前だろうが。
 俺を、俺たちをみくびってんのか? あなどってんのかあ?
 ルッスーリアだろうが、ベルだろうが、マーモンだろうが、そんな、ただダメな奴についてきた覚えも、つれてきた覚えもねえ。 
 勿論、俺もだ。

「てめえが逃げてるんじゃねえ」

 情けないとか思うなら、むくいてみやがれ!!
 そう怒鳴った男に、少年は、泣きそうに瞳を潤ませた。

「ん、じゃあ、決めた」

 少年は、顔を恐怖と決意で歪める。

「俺、10代目になる。だから日本に行こう、その、俺より10代目にふさわしい人倒し――10代目にふさわしくなるからて」





 笑って、少年は、男に光るリングを渡した。
 半分だけの、不恰好なリング。





「受け取って、くれる?」 

 とびっきりの悲哀を込めた声に、男は、こめかみをもう一度抑えてリングを奪い取った。







(もしも、ツナとザンザスが逆だったら、年齢はそのまんまです。きっと、スクはツナみたいなタイプを甘やかして甘やかしてダメにするんだろうなあ……)











9.garbatamente(優雅に)


 指先までしなやかに。
 それだけを言われたとスクアーロはゆるやかにターンして見せた。
 まるで、くるくると回るオルゴール人形のようだとマーモンはそれを見ながら思う。
 リードするのは、なぜか慎重の格段に低いベルフェゴールで、スクアーロは少し踊りにくそうに、それでも美しくステップを踏む。
 王族と名乗るだけあり、ベルフェゴールのリードもステップも姿勢も、普段の子供っぽさのない華麗なものだ。
 広い部屋の真ん中で、美しく美しく髪すら舞う。
 ぱらぱらと、ひるがえる銀の髪。さらさらと揺れる金の髪。

「おい、ベル、踊りにくいからお前が女のパートやれえ」
「やだよ、だって俺王子だもん」

 そんな何回目かのやり取りを繰り返し、それでも、ステップは止まない。
 マーモンは、そこでふっと思った。

「なんで踊ってるの?」

 マーモンが任務からの帰りにこの部屋に寄った時、すでに二人は踊っていた。
 いつから踊ってるのかはわからないが、二人は息を乱した様子もなく、汗も流さず踊り続けている。
 通常のダンスであればかかっているはずの音楽すらなく、しかもアンバランスだというのに乱れることのないテンポは、普通なら滑稽に見せる光景をまるでドラマのワンシーンのように見せていた。
 その、優雅とすらいえる動きに見入ってしまい、うっかり聞くのを忘れていた。

「あー、なんでだあ?」
「何、忘れたのバカ鮫」
「バカじゃねえ!! って、おう、こいつがよお、俺にステップ一つ踏めねえんだろってバカにしやがるから、じゃあ見せてやるよってことだった」
「すごくキレイに踊ってるのはわかるけど、それなら普通スクアーロが男役じゃないの?」
「こいつが女役やんねえんだよ!!」
「王子がなんで女役なんか」

 うししと笑いながらベルフェゴールが勝手なステップをとりいれた。
 それに一瞬だけ動きを崩すが、すぐにスクアーロは動きについていく。

「それよりもさ、なんでバカ鮫が女役なんてできるのさ」
「あ゛ー、ルッスーリアにたたきこまれた」

 ああ、っと二人が同時に納得した。
 スクアーロは苦い顔をして今度はいきなり男役の足運びでベルフェゴールをリードする。
 
「ほとんど一通り、役に立ちそうなことは全部覚えさせられたからなあ」

 それを崩すようにでたらめにベルフェゴールが腕を引っ張った。
 リードでもなんでもない動きにスクアーロは舌打ち一つで足運びを変える。

「てめ、なにしやがる」
「うしし」
「それでさ、二人はいつまで踊るの?」

 目で喧嘩のようにも思えるダンスを追いながら、マーモンが聞く。
 その声に、二人はぎくりとした顔をした。
 実際、踊り続けながら二人は止まる機会が見つからないらしく、口を閉じる。
 それでも、足も手も止まらない。
 体に刻まれたリズムがそれを許さないのだ。 
 それでも、いつか止まらなければいけない。
 わかっていても、お互い自分から止まるのはなぜか躊躇われる。

「あっもしかしてマーモンも踊りたいとか」

 ぱっと顔を輝かせたベルフェゴールがターンの途中だったスクアーロの手を離し、放り出す。
 そして、マーモンの手を掴むと、身長差のせいでダンスにもならず、ただ振り回すかのようにぐるぐると回り始めた。
 スクアーロも薄々予想していたのだろう、振り回されることなく少し離れた場所でそれを見ている。
 妙に微笑ましいとも言えるその光景。
 その中で、マーモンが悲鳴をあげた。

「ベル!! ベル早い!! 目が回る!! わー!!」

 





(踊るベルとスクアーロは妙な迫力と優雅さがありそうです)









10.maestoso(威風堂々)


 じゃきり。

 銀色の刃が銀色の髪を切る。

 じゃきり。

 適当に切られた髪が床に散らばる。

 じゃきり。

 さらりと落ちていく髪は美しかったが、やはりその髪は持ち主についていてこそ、より美しい。

 じゃきり。

 それでも、無慈悲な冷たい刃は持ち主と髪を別つ。

 じゃきり。

「これが、けじめだ」

 じゃきり。
 髪の持ち主は笑う。
 笑って、そこに立っていた。
 長い髪はそこには存在しない。
 そこには、過去と同じ髪の長さで、同じ顔をした現在の彼がいる。
 何一つ、揺らぐことのない、濁ることのない彼は、威風堂々と立っていた。







(再登場時スクアーロ希望。髪は長いのも好きですが、短いのもいいと思います)





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