スクアーロの作る料理は、意外と素朴でこう、温かい家庭料理っていうの?
そういうのが多い。
てっきりあの性格だから適当に肉とかだんだん切って焼いて塩コショウだけ振ってダイレクトに食べるとか想像してたけど違う。
ルッスーリアに習ったからって言われれば納得できるけど、かなり意外。
パスタとか、シチューとか、グラタンだとかそういう子供がすきそうなの? が得意なんだって。
笑っちゃうよね。
でも、笑えないことに、これが結構美味しかったりするからびっくりで、初めて食べた時は目が飛び出るかと思った。
王子だから高級な物には舌が肥えてるけど、庶民の料理には慣れてなかったからかもしれない。
でも、味のうるさい赤ん坊の癖に人一倍食べるマーモンが文句一つ言わず平らげるからやっぱりおいしいのかもしれない。
エプロン姿のスクアーロとかうげえっと思ってみたけど、目の前にしてみればそれほどでもない。
むしろ、似合うかなっと思ってたルッスーリアの方が気持ち悪い(まあ、ピンクのフリフリなんて男がつけても気持ち悪いだけだけど)し。
そんな二人が狭い台所でがちゃがちゃと音とたてて、でも滑らかに動いてる。
二人の息は結構ぴったりで、ぱっとスクアーロが茹でたパスタを差し出せば、ルッスーリアが作りたてのソースをかけた。
そして、別の手でフライパンを温めていたスクアーロに切った野菜を渡す。
くるくる回ってなんだか楽しい気分になってきたら、横でマーモンも楽しそうだった。
時折振り返って「笑ってねえで手伝え」とかスクアーロが睨んでくるけど、なんで王子が。
ねっとマーモンに同意を求めれば
「ベルが手伝いなんて出来るわけないよ」
っとむかつくことを言ってくる。
しかも、スクアーロも同意して料理に戻してるし。
ルッスーリアは顔は見えないけど肩を震わせててよけいむかついた。
ナイフでも投げてやろうかと思ったけど、なんだか料理ができたみたいで、机の上にいい匂いのパスタだとか、シチューだとか、とにかく色々並んだらどうでもよくなる。
マーモンはちゃっかり好物の皿なんか抱き込んじゃってスクアーロの誰もとらないよっという声にも決して皿を放さない。
俺がフォークを握ったら、ルッスーリアが
「だめよ、皆で席に座ってから」
っと飲み物を置いていく。
ちらっと台所を見れば後、火を通せばできあがりの料理がおいてあった。
たぶん、あれはボスのなんだろうな。
きっと、スクアーロができたてをもっていくんだ。
それで、ボスの機嫌が悪くても、よくても、その時だけはボスはスクアーロを殴ったり罵ったりせず素直に食べるんだ。
なんだか目に浮かぶ光景に妙な笑いがこぼれた。
だって、あの、ボスが、スクアーロの作ったパスタとか食べてるの想像したらすごく笑える。
「いただきます」
スクアーロが席についたと同時にルッスーリアが呟けば食事は開始。
マーモンが大口を開けて皿の上の物を吸い込んでいく。
ちゃんと噛んでるんだけど、その噛む速さが尋常じゃない。
スクアーロとルッスーリアが交互によく噛めって言ってるけど、あれでちゃんと一口30回噛んでるっていうから驚き。
まさに、マーモン(強欲)というよりアッペティート(食欲)だ。
俺がキレイにスープパスタを食べてたらもう次の皿に移ってた。
その中で、スクアーロがつっついてる皿の中身も気になるらしくて視線はそっちへ向かってる。
そしたら、スクアーロは当たり前みたいにそれをスプーンにのせて突きつけた。
ぱくりっとスプーンをくわえるマーモンの姿はいっそほほえましいけど、つきつけるのがスクアーロってとこが妙。
ルッスーリアはまあ、かわいいとか言ってフォークをつきつけるけど、マーモンは拒否した(まっ気持ちはわかるけど)
寂しそうなルッスーリアのフォークがスクアーロに向いたら、代わりにスクアーロがそれをぱくりっと食べて俺の食欲が激減する。
王子の前でなに見せるんだよっと言おうと思ったけど、口にスープパスタをつっこんだところだからやめといた。
だから、俺もマネしてマーモンにスープパスタをつきつけたらマーモンはちょっと考えてパクリと食いついた。
なんだか、野生動物が初めて手から餌を食べたような感動があったけど、口には出さなかった。
スクアーロは食事中喋るのは嫌いみたいだけど、ルッスーリアに話し掛けられては律儀に答えて顔をしかめてる。
俺はめんどくさいから食べるのに集中してるふりしてファークとスプーン使ってたら、ルッスーリアがあらって俺を見た。
「ベル、今日はよく食べるのね」
「へ?」
よく食べるってどういうことだろう。
俺が皿を見たら、皿の上にはスープだけで、パスタがなくなっていた。
うわ、いつの間にこんなに食べたんだろう。
確か、皆で分けるからとかなんとかルッスーリアが多めに盛った筈なのに。
「ベルってスープパスタ好きだったのね。また作ってあげるわ」
とか嬉しそうに言っちゃって別に好きでも嫌いでもないのに。
マーモンの食欲につられたのかもしれない。
そしたら、スクアーロが野菜も食えとかサラダ差し出してきてお前は母親かよって言ってやりたくなった。
まあ、スクアーロが母親だったら確実に自殺するけど。
でも、俺って平和主義だし?(誰だよ、今嘘って言ったの)めんどうなんでお情け程度にフォークを伸ばしてやった。
たぶん、カボチャをいれてあるのか黄色いサラダは妙に甘い。
サラダを食べてたら今度はルッスーリアがこれもおいしいわよっとか別の皿を俺に向けてきてそれもおなざりにフォークを動かした。
なんだか、妙にあっという間に机の上に並べられた皿はなくなってスクアーロは片付けに入ったけど、まだルッスーリアは食後のティータイムで動く様子がない。
「おい、片付けくらい手伝えよ」
「やだよ、だって俺王子だもん、うしし」
ぶつぶつ文句を言うスクアーロの背中を笑ってやった。
「ねえ、ベル」
「何?」
「おいしかった?」
いきなり、ルッスーリアがそう聞いてくる。
別に、悪くなかったと呟けば、ルッスーリアが妙に嬉しそうな顔をした。
にっこにこしちゃって、そうよねっと甘い声を出す。
「皆で食べると、おいしいでしょ?」
「…………」
「皆でわいわい食べるのと、一人で食べるのは、違うの」
「そう?」
「そうよ、だから、また食べましょう。今度はボスとレヴィも、ゴーラも、ちゃんと誘って」
「絶対こないよ、てか、ゴーラって食事とかすんの?」
「かもしれないけど、誘いましょう。別に、私たちが作らなくてもいいわ。外に食べに行ってもいいわ。
とにかく、幹部全員で、がいいわ」
「僕は、中華が食べたいな。量多いし」
「そうねー、中華はコラーゲンたっぷりだからお肌によさそうだし」
珍しくマーモンも乗り気だった。
だから、俺も、なんとなく素直に頷いておく。
台所で、スクアーロがおいといたパスタとかに火をいれる。
これからボスに持っていくのだろう。
もしかしたら、近い内、ヴァリアーの幹部全員でどこかに食べに行くかもしれない。
「でも、中華ってフカヒレとか出るじゃん、うしし、スクアーロだと共食いだね」
「う゛お゛ぉい!! どういう意味だあ!!」
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