久しぶり、っと女は言った。
 つい最近まで少女だった女は、にこりっと艶めいた笑いを浮かべる。
 それも一瞬のこと、すぐに無表情に男を見つめた。
 たった一つだけの瞳で、男を見つめる。
 見つめられる男は、目を伏せて問うた。

「骸は、どこいった」

 女は、無表情のまま、首をかしげる。
 なぜそんなことを聞くのかわからないとでもいうように。
 男は、もう一度問うた。
 それにも、同じような仕草で反応する。

「何を、言っているの?」

 女は、その腹に手をあてる。

「ここにいるじゃないの?」

 男は、顔をしかめた。
 舌打ち。
 迷うように口を開く。

「髑髏、てめえ、骸と……」
「まさか」

 最後まで言う前に女は言葉を打ち消した。
 そして、腹を何度か撫でると、たしなめるように男の言葉を否定する。

「兄と交わるなんて、いくら私でもしないわ。貴方は私がそんな女に見えるの?」
「………」
「ここにいるのは骸」

 少女は、何度もいとおしげにその腹部を撫で、笑って見せた。
 妖艶な、女の笑み。
 まるで、誘うように男を呼ぶ。
 男は、眩暈を覚えながら近づいて、どかりとすぐ前に座った。
 振り回されっぱなしだと、胸の内で呟く。
 ちらりと、男は女の腹部を見た。
 何の変哲もない、まだ膨らんでもいない腹。
 本当に、そこにいるのだろうか。
 一瞬そう思うが、すぐに否定した。
 女がそういうのなら、そうなのだ。
 女も、そして、その兄も、嘘吐きだからこそ、そうなのだ。
 嘘をつくだけの真実が、そこにはある。

「この子が生まれたら、スクアーロの子も生んであげる」
「はあ!?」






 女は、笑う。






「私はね、女の子でよかったと思うの」






 だって






「それで、スクアーロも骸も、女じゃなくてよかった」






 だって






「そうじゃないと、私は誰にも、どこにも繋がれないから」
「骸は誰とでも繋がれるけど」
「私は誰にも繋がれない」
「私は骸の変わりだけど」
「私は、私で終わりだから」
「私自身は、どこにも、行けない」
「私自身は、誰とも繋がれない」
「だから」

 腹に子を宿すことによって、やっと繋がれる。
 そう言って笑った。










「早く、骸生まれないかな?」


 もしも、骸と髑髏が双子で、骸は転生できるけど、髑髏はあの目を持ってないので転生もできず、骸のように確固たる意思をもってなにかできないのを少し気にしてたら……という妄想。
 微妙に自分のことを骸のスペアとか思ってそうです。
 だから、骸を通してでしか他とかかわれない、交われない、繋がらない。
 とりあえず、次の骸の父親はツナなのではないでしょうか。なんとなく。決めてません……。 
 ツナをボスと読んで従うのも、不安定だからだったらどうしようかと。
 

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