誰かが言った



「こんにちは、スペルビ・スクアーロ。ああ、今は別の名前でしたっけ?」
「……?」
「僕がわかりませんか、クフフ」
「誰……?」
「僕ですか、そうですね。君の3人目の主だと一応主張しておきましょう。マフィアばかりに君の権利を主張されるなんておぞましい」
「ある……?」
「はい、貴方の精神は実を言うと僕が握っています。刷り込みより強く、愛より深く。
 今はちょっとした事情でできませんが、その気になれば貴方をその挟まれた苦しみから救ってあげられる存在です。クフフ」
「すくう……」
「ええ、きっと近い内に……」

 青年は男に微笑みかける。
 そして、いつの間にか傍らにいた少女にも。

「どんでん返しは多い方が楽しいですよね、凪」
「はい、骸様」
「クハハ、そんな心配そうな顔をしなくても凪、僕が動けるようになるのはそう遠い話ではありません。だから、いい子で生きて待っているんですよ。スクアーロも」

 呟いて、青年は男の瞼を閉じさせた。
 ゆるやかに、ゆるやかにその頬を撫でると、優しく甘く呟いた。


「ミルフィオーレなんて、生ぬるいくらいの地獄を、地獄を徹底的にマフィア共に見せてあげましょう」
(はい、骸様)

 そうして、男はまた、運命に翻弄されるのだ。





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