両者、位置につきまして。


「ああ、しってる。あんたけんてーってやつだろ?すげえつよいんだろ? なに? びゃっくんころしにきたの? そんなのゆるさねえ、ころしてやる」

 にこっと、男は年齢とも台詞とも似合わぬ幼い無邪気な笑みを浮かべた。
 それを見て、彼は微笑んだ。美しい、何の感情もない微笑を。

「いいや、君を殺しにきたんだよ」
「?」

 一瞬、彼の笑みに首を傾げる。微かに、義手が施された左手が震え、痛みを感じたのだ。
 その意味を理解できず、男はとりあえず、(殺してから、考えよう)っと胸の中で呟いた。そう、わからないことは自分のボスか、後ろにいるびゃっくんに聞けばいい。納得して剣を構える。

「なるほど、そうなってもちゃんと身体にはしみこんでいるんだね」
「……?」

 彼は、ゆるやかな、いっそ優雅とも言える動きで剣を動かす。それはなぜかあっという間に、吸い込まれるように男へと打ち込まれた。
 ガキン。
 金属のぶつかり合う音。いつの間にか男の剣が彼の剣を受けた。無意識の動き。
 男はなぜ自分が彼の剣を受けれたかわからない。
 きょとんっと、不思議そうな澄んだ瞳と、濁った双眸がかち合う。

「うん、いい反応だ。それくらいじゃないと、つまらないからね」

 優しい、ぞっとするほど優しい声音。
 思わず、男は飛びのいて距離をとった。相手が、今まで殺してきたどんな敵とも、相手とも違う気がする。

(こわい?)

 そう、今の感情を定義する。
 ほとんど今の状態になってから初めての感情。

「でも、たのしい?」

 もう一度、首を傾げる。
 いつの間にか、左手の震えが止まらない。恐怖ではない。再戦の喜びに震えているのだ。

「さあ、おいで、私の息子」
「ちがうよ」
「いいや、私の子だよ。さあ、おいで、殺してあげよう」
「へんな、やつ」


 2回戦開始!!
 


 誰も待っていなかった2回戦。  
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