腹に空いた穴をいとおしげに見る化け物を見ると、妙にうんざりしてくる。
せっかく、わずらわしい奴らから逃げ出したというのに、こいつは俺を表に引きずりだす為にやってきた。なんでここがわかったとか、そんな野暮なことは聞くまでもない。
何十年も前の約束を突きつけて、協力しろと脅しつけやがった。
たった一人、この世で唯一この化け物が愛する存在の為に、だ。
俺はうんざりして嫌がったが、人の言うことを聞く奴ではない。
「シャマル、じゃあ、行くぜ」
「待て、今治療したばっかだぞ、わかってんのかお前……」
「俺の息子を1秒だってあんな変態の手の中にいれてられっか……そもそも、ぐずぐすしてスペルビを殺されたらどうしやがる。あの子は俺のだ。俺が殺す」
「……熱烈なこって……」
「だから、手伝え。ただし、スペルビには指一本、息一つ触れんな。
手伝うことを、許してやる」
「……」
あまりにも傲慢な物言いに、溜息をつきながら、俺は用意を始める。
「せめて、2週間待て、そうすりゃお前なら動ける……不完全な状態でいきゃ、返り討ちだぞ」
「……3日」
「だめだ、2週間」
「5日」
「……10日」
「一週間、一週間で直す」
そりゃ無理だろ。そういいかけた言葉を飲み込む。
この化け物なら、ほんとにどうにかしそうだった。
Copyright(c) 2007 all rights reserved.