彼は、過去に自分の絶対の主と誓った相手に刃を向けた。
その瞳は悲しみと絶望、軽蔑に塗れて濁っている。それを、主はただ静かに見ていた。
「なんでだあ……」
この世の悲哀を一心に詰め込んだ声が問う。
「なんでだあ、ボス――XANXUS!!」
「……最初っから、こういうことだ。カス」
「俺を……ルッスを、ベルを、マーモンを、レヴィを騙してやがったのかあ!!」
「騙すなんて軽く使うんじゃねえ、てめえらが勝手に勘違いしてただけだ」
嘘だっと、彼の顔が歪む。
夢なら覚めてほしいと脳が理解を拒否する。
どうして、なぜっと、心が悲鳴を上げて血を流した。それでも、目の前の現実は代わりはしない。
「あんた、自分がなにしたかわかってんのかあ……」
「ボンゴレを裏切るなんざ、たいしたことじゃねえだろ」
「違う!! あんたがボンゴレを裏切るなんてどうでもいい。むしろ、裏切っただけなら俺だって喜んで裏切ってやるう!!
そんなことで俺があんたに刃を向けるわきゃねえだろお!!」
「……ドカス。あのガキに毒されて甘くなったのか、ただ、殺しただけだろ、
マーモンを」
「!!」
はっきりと、呟かれた言葉。
ぐらりっと、眩暈がする。
今でも思い出すのは、血の匂い。子どもの体から滴り落ちる、血。
ずっと、受け入れたくなかった事実。知りたくなかった出来事。ああ、どうせなら……どうせなら、
「俺は……」
目を、閉じる。
今や自分の主ではなくなった男を見ないために。
「誰にも屈しない、足を折らないあんたに、忠誠を誓ったんだぜえ……誇り高く、気高い王者。玉座に座るのにあんたほどふさわしい男はいない」
そう、思っていたのに。
「なんでミルフィオーレなんかに……!!」
奥歯が砕けそうなほど、歯を食いしばった。
いつもの黒いコートの上、似合わない白いコートを肩にかけて元、主は彼の同僚から奪ったソレを握り締め、立っている。
「どうせなら……」
血を吐くような思いで、彼は呟いた。
「どうせなら、最後まで騙して、殺してくれりゃあよかったのに……意味、わかんねえ……」
「究極権力」
ぽつりっと、元、主は呟いた。
意味がわからず目を見開く彼に、告げる。
「俺はそれを手に入れる。それのためなら、邪魔はかっけすだけだ」
それ以上は、言葉はいらなかった。
元、主は銃を構え、彼は剣を構える。
(ああ、でも、まだ、俺は、あんたのこと)
同時にお互いが地を蹴って、憤怒の炎と、傲慢の雨はぶつかった。
本誌にて、白蘭が究極権力とか言ってたので思わずやってしまった……。
ボスはミルフィ服ぶっちゃけ似合わないと思う。